はじめに:ゴールは「ぶれない買い増し」
外部要因(地合い悪化・指数の入れ替え・金利ショックなど)で株価が下がると、配当利回りは上がることが多いですよね。ここで焦らず、あらかじめ決めたルールで淡々と買い増せるかどうかが勝負どころ。
本記事では、そのルール作りの柱となる2つの道具をやさしく説明します。
- ATR(エー・ティー・アール):その銘柄がどれくらい荒れやすいかを見る物差し
- 利回りバンド:その銘柄の**“いつもの利回り”から見て今どれだけお得か**を見る物差し
まずは結論の超シンプル版(3行ルール)
- ATR法:基準価格から 2×/3×/4× ATR% 下がったら ①②③段で買う
- 利回り法:5年中央値利回り×1.2/1.4/1.6 に相当する価格で ①②③段で買う
- 配分:下に厚く (例)30% / 30% / 40%、1銘柄は時価の7〜10%上限
1. ATRってなに?(風の強さの例え)
ATRは「最近どれくらい値が動いているか」をざっくり示す指標です。
例えるなら**“風の強さ”。風(ボラティリティ)が弱い日は、ちょっとの下げでも買い場になりやすい。風が強い日は、もう少し深い位置まで待ったほうが合理的。
この“風の強さに合わせて待ち位置を変える”**のがATR法です。
ATR法の標準ルール
- 基準価格(アンカー):自分の平均取得単価(または現在株価)
- 買うきっかけ:基準からATR%の2倍 / 3倍 / 4倍 下がったら①②③段
- 資金配分:30% / 30% / 40%(深いほど厚く)
かんたん数例
- いまの株価:1,000円
- ATR%(最近の荒れ度):1.8% とします
- 買い水準
- 第1段:1,000 × (1 − 0.036) ≒ 964円
- 第2段:1,000 × (1 − 0.054) ≒ 946円
- 第3段:1,000 × (1 − 0.072) ≒ 928円
- 第1段:1,000 × (1 − 0.036) ≒ 964円
ワンポイント:急落が続くと「風」はさらに強くなります。ATR%はときどき更新しましょう。
2. 利回りバンドってなに?(家賃の例え)
利回りバンドは、過去のその銘柄の**“いつもの利回り”(5年の中央値=MED)を基準に、今がどれだけお得かを見る考え方です。
例えるなら“この部屋の家賃は普段いくらか”**。普段10万円の部屋が8万円で出てきたら、お得ですよね。株も同じで、普段の利回りより高い=割安になった可能性です。
利回り法の標準ルール(やさしく)
- 基準:5年の利回り中央値(MED)
- 買うきっかけ:
- MEDに対して +20%(×1.2) / +40%(×1.4) / +60%(×1.6) の利回り水準=①②③段
- MEDに対して +20%(×1.2) / +40%(×1.4) / +60%(×1.6) の利回り水準=①②③段
- 価格の求め方:指値=予想配当(1株) ÷ 目標利回り
かんたん数例
- 予想配当:60円/株
- 5年中央値(MED):3.0%
- 目標利回りと価格
- 3.6%(+20%) → 60 ÷ 0.036 = 1,667円
- 4.2%(+40%) → 1,429円
- 4.8%(+60%) → 1,250円
- 3.6%(+20%) → 60 ÷ 0.036 = 1,667円
- 資金配分:25% / 35% / 40%(こちらも下に厚く)
注意:この方法は配当が維持されることが前提です。記念配など一時的な配当は除外して考えるのがコツ。
3. どっちを使う?(カンタン指針)
- 値動きが荒い銘柄(資源・商社・金融など)→ ATR法が相性◎
- 配当方針が堅く安定(通信・公益・インフラなど)→ 利回り法が相性◎
- 併用もOK:
- 例)**「ATR条件」かつ「利回り+20%以上」**を同時に満たしたら、第2段を厚めに(20% / 30% / 50%など)
- 例)**「ATR条件」かつ「利回り+20%以上」**を同時に満たしたら、第2段を厚めに(20% / 30% / 50%など)
4. 買い増し前のチェック(ここが最重要)
外からのショックに見えても、中身が崩れていたら買い増しは中止です。以下に当てはまるなら、まず様子見。
- 減配・無配の示唆、DOEや配当性向の悪化
- 利益予想の大幅下方修正(目安10%以上)
- 営業キャッシュフローの悪化が続く
- 財務の急悪化(有利子負債の重さ、利払い余力の低下)
- 重大な不祥事・ガバナンス問題
5. 指値・配分・上限の“型”(そのまま使えます)
- ATR法:2×/3×/4× ATR%、30% / 30% / 40%
- 利回り法:MED×1.2/1.4/1.6、25% / 35% / 40%
- 1銘柄の上限:ポートフォリオ時価の**7〜10%**まで
- 買い増し総枠:初期投資に対して**100〜150%**まで
- 打ち止めの目安:-35% まで落ちたら、“中身”を再チェックしてから継続可否を判断
6. いつ実行する?(地合いフィルター)
成功率を上げるなら地合いも見ましょう。
- 市場が悲観に傾きすぎ(騰落レシオが弱い、主要指数が長期線より大きく下)なら、少し厚めに
- **出来高が増えた“下ヒゲ”**のローソク足が出たら、反転の初期サインになりやすいです

7. ミスを減らすコツ(あるある回避)
- ATRを放置:急落後は荒れ度が変わります。ときどき更新
- 特殊配当を混ぜる:一時的な配当は外す(普段の姿に合わせる)
- セクター偏り:金融・商社・資源に寄りすぎはNG。業種分散
- 感情で注文:指値は先に決める。発注は機械的に
- キャッシュ不足:常に**現金10〜20%**は温存
8. かんたんシミュレーション(感触だけ)
- 初期:1,000円×100株(配当60円、MED=3.0%、ATR%=1.8%)
- ATR法(30/30/40):964円/946円/928円に分けて買い下がる
- 結果:平均取得単価は自然と下がる → 戻りや配当で回復しやすい体質に
ポイント:「下に厚く」が基本。戻ったら一部利確という選択肢も持てます。
9. よくある質問(FAQ)
Q. 固定の下落率(-10%、-20%…)で十分ですか?
A. 可能ですが、銘柄の荒れ度を無視します。ATRに連動させると無駄撃ちが減りやすいです。
Q. MEDは5年?3年?
A. 基本は5年。直近に事業転換などがある銘柄は3年も併用して、外れ値はのぞくとよいです。
Q. 減配リスクはどう見抜く?
A. DOE・配当性向・営業CF・会社計画を4点チェック。大きな下方修正は黄色信号です。
Q. 国債利回りとの比較は必要?
A. はい。自分の基準(例:国債+2%ポイント以上)を決めておくとブレません。
Q. 何段に分けるのが良い?
A. 3段が運用しやすいです。超高ボラは4段も可。ただし総額と上限の管理を厳格に。
10. まとめ(心の置きどころ)
- **距離はATR(荒れ度)**で、**割安は利回り(中央値)**で見る
- 3段の指値と配分を先に決め、上限と中止ルールで守る
- 地合いを見て、出来高や下ヒゲもヒントに
- 最後は**“感情を排した継続”**が勝つ習慣です
“Be fearful when others are greedy and greedy when others are fearful.”「他人が貪欲なときは恐れ、他人が恐れているときは貪欲であれ」 — ウォーレン・バフェット
「勢いは鋭く取り、守りは厚く敷く。」— 孫子
暴落がいつ起こるか?いつ起こるか?恐れている方も多いと思いますが年末に向けコツコツ資産を増やせるよう日々勉強していきましょう!😊


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