1. 世界の債券ファンドへの資金流入
2024年、世界の債券ファンドへ流入した資金は過去最高の6,170億ドルに達し、これまで最高だった2021年の5,000億ドルを上回りました。この勢いは2025年初頭も続いており、とくに中国本土の投資家が香港のミューチュアルファンドを通じて海外債券に積極的に投資しています。
資金流入が拡大している主な理由
- 高い利回りの確保
中央銀行が金利を下げるなか、債券の利回りは数十年ぶりの高水準にあり、投資家は今のうちに有利な利回りを固定したいと考えています。 - 市場の不確実性への対応
2025年の米国新政権による関税引き上げなど、地政学リスクが高まっているため、安全資産とされる債券への投資が増えています。 - 多様化とリスク管理
株式市場の変動が大きくなるなか、ポートフォリオを分散させてリスクを抑えるために、債券ファンドが再注目されています。
2. 世界債券ファンドとは
世界中の政府債や社債、新興国債券などに分散投資するファンドで、特定の国や地域の経済状況に左右されにくいポートフォリオをめざします。リスクを抑えつつ、安定的なリターンを期待する投資家に適しています。
SBI・iシェアーズ・全世界債券インデックス・ファンド
- 米国ブラックロック社のETFであるAGG(米国総合債券)に60%、IAGG(米国以外のグローバル債券)に40%投資するファンドです。
- 全世界の債券市場へ低コストで分散投資が可能で、特定の国や地域に偏らないポートフォリオを組めます。
- 株式と組み合わせることで、ポートフォリオ全体のリスクを抑え、安定的なリターンをねらえます。
3. バークシャー・ハサウェイの債券運用
ウォーレン・バフェット氏が率いるバークシャー・ハサウェイは、2024年9月末時点で手元資金が過去最高の3,252億ドル(約50兆円)に達しました。
- 多くは米国財務省短期証券(Tビル)などの短期債で運用されています。
- 長期債券にはあまり投資しておらず、2024年中頃時点で債券保有額は160億ドルにとどまります。
(出典:Barron’s) - 総資産に占める債券比率は約2.7%で、バフェット氏は魅力を感じていない長期債よりも、株式と短期現金資産を優先しています。
4. パッシブ運用ETF(上場投資信託)について
パッシブ運用とは
特定の市場指数(インデックス)に連動する運用手法です。市場全体の平均リターンをめざすため、コストを低く抑えられます。
ETF(上場投資信託)とは
証券取引所に上場しており、株式と同じようにリアルタイムで売買できます。多くのETFはパッシブ運用を採用しており、分散投資が手軽に行えるのが魅力です。
主な特徴
- 低コスト:市場分析や個別銘柄選定の手間が少ない
- 透明性:投資対象やインデックスが公開されている
- 分散投資:インデックスが複数銘柄で構成されるためリスク分散が容易
- 流動性:リアルタイム取引が可能
アクティブ運用は市場平均を上回るリターンを狙う一方で、コストが高くなる傾向があります。パッシブ運用ETFは、低コストで市場全体の成長をとりこむ手段として人気です。
5. 社債投資のメリット・デメリット
メリット
- 定期利息収入:あらかじめ決められた利率により、安定した利息を受け取れる
- 元本返済:満期には投資額が返ってくるため、収益予測が立てやすい
- 比較的高い利回り:国債や預金より利率が高い場合が多い
デメリット
- 信用リスク:発行企業が倒産すれば元本や利息が支払われない可能性がある
- 流動性リスク:株式ほど売買が活発ではなく、必要なときにすぐ売れない場合がある
- 金利変動リスク:市場金利が上がると、既存の低利率社債の価値は下がってしまう
6. 人気の世界債券ファンド
- eMAXIS Slim 先進国債券インデックス
- 運用会社: 三菱UFJ国際投信
- 信託報酬: 年率0.154%
- リターン(1年): +12.21%
- 先進国の公社債に分散投資する低コストのインデックスファンド
- PIMCO・世界インカム戦略ファンド Aコース
- 運用会社: 野村アセットマネジメント
- 信託報酬: 年率1.848%
- リターン(1年): +4.46%
- 世界各国のさまざまな債券や派生商品を利用するアクティブファンド
- グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)
- 運用会社: 三菱UFJ国際投信
- 信託報酬: 年率1.375%
- リターン(1年): +9.30%
- 主に先進国のソブリン債へ投資し、安定収益を狙うアクティブファンド
投資を考える際は、目論見書や各ファンドのリスク・費用などをしっかり確認し、自分の目的やリスク許容度に合わせて選択してください。

7. 金利と債券価格の関係
金利が上がると債券価格は下がり、金利が下がると債券価格は上がります。
- 金利上昇時:新発債券の利率が高くなるため、既存の債券は魅力が薄れ、価格が下落
- 金利低下時:既存の高金利債券が注目され、価格が上昇
※ミューチュアルファンド:
多数の投資家から資金を集め、その資金を専門の運用会社が株式や債券など多様な資産に分散投資する金融商品です。投資家はファンドの持分を購入することで、間接的にこれらの資産に投資することができます。
主な特徴:
- オープンエンド型: ミューチュアルファンドはオープンエンド型の投資信託であり、投資家はいつでもファンドの持分を購入または解約することができます。
- 分散投資: 集めた資金を多様な資産に投資することで、リスクを分散し、安定したリターンを目指します。
- 専門的な運用: 運用は専門のファンドマネージャーが行い、投資家は自身で個別の銘柄選択をする必要がありません。
※デュレーション(Duration)
債券の価格が金利変動でどのくらい動くかを示す指標です。
- デュレーションが長いほど:金利が1%上がったときの値下がり幅が大きくなる
- マコーレー・デュレーション:将来受け取る利子や元本の現在価値を加重平均して算出
- 修正デュレーション:マコーレー・デュレーションを元に、金利変動に対する価格の変化率を求める指標
投資家はデュレーションを利用して、ポートフォリオの金利リスクを管理します。

日本でも始まった“金利のある世界”
日本では、2024年3月に日本銀行が約8年間続いたマイナス金利政策を解除し、17年ぶりに利上げを実施しました。
これにより、長らく低金利が続いていた日本経済は「金利のある世界」へと移行しています。
金利上昇の背景:
この政策転換の背景には、賃金上昇を伴う物価の上昇基調が挙げられます。コロナ禍からの経済再開に伴う需要の急速な回復や、地政学的リスクの高まりによるエネルギー価格の上昇、円安による輸入物価の上昇などが要因となり、日本でも物価が急激に上昇しました。これらの状況を受け、日銀は金融政策の正常化を進める必要性を感じ、利上げに踏み切りました。
生活への影響:
金利上昇は、個人や企業の生活や経済活動にさまざまな影響を及ぼします。例えば、住宅ローンの金利が上昇すると、借入れの返済負担が増加します。また、企業にとっては借入コストの増加が利益圧迫要因となる可能性があります。一方で、預金金利の上昇は、預金者にとって利息収入の増加につながります。
このように、日本は長期間の低金利時代を経て、「金利のある世界」へと移行しています。金利上昇が私たちの生活や経済にどのような影響を及ぼすのかを理解し、適切な対応を考えることが重要です。
日本は長らく低金利でしたが、昨年からインフレ傾向により、わずかながら金利がつき始めています。インフレ局面での株式投資はもちろん、リスク分散の観点から米国債だけでなく世界債券にも目を向ける時期に来ているでしょう。


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