2025年2月1日にドナルド・トランプ米大統領は、大統領令によりメキシコ・カナダからの輸入品に25%、中国からの輸入品に10%の追加関税措置を発表しました。しかし、その後、トランプ大統領は2月3日のSNS投稿で、メキシコとカナダに対する追加関税の適用開始を延期し、適用開始時期は3月にずらすと発表しました。一方で、中国向けの追加関税は当初の予定通り、2月4日から実施される見込みです。
また、2月10日に発表された1962年通商拡大法232条に基づく大統領布告では、鉄鋼およびアルミニウム製品に対し、全ての貿易相手国から一律25%の追加関税が導入され、従来設けられていた除外制度が廃止されることになりました。これらの措置は2025年3月12日に発効予定です。
トランプ大統領自身は、1月31日の記者会見で「一時的、短期的な混乱は避けられない」と述べており、今回の政策が米国内の物価上昇、サプライチェーンの混乱、そして世界的な貿易摩擦へと波及するリスクをはらんでいることは明らかです。特に、日本企業にとっては輸出入やサプライチェーンへの影響が懸念され、政府も状況を注視して対策を講じる動きを見せています。
さらに、2025年2月18日にはトランプ大統領が輸入自動車に対して25%の関税を課す方針を示しました。詳細は4月2日に発表される予定ですが、米国市場に完成車を輸出している日本やメキシコの自動車メーカーにとっては大きな打撃となる可能性があります。日本自動車産業の海外依存度が高い現状では、関税引き上げによるコスト増加が深刻なリスクとして認識されています。これを受け、日本政府は武藤容治経済産業大臣の訪米を調整し、現地当局との協議を通じた対策模索に乗り出しています。

投資家が取るべき戦略と具体的な対策
今回の関税措置やその後の貿易摩擦は、為替市場や国際市場における急激な変動を招くリスクがあるため、個人投資家も中級者として柔軟かつ戦略的な対応が求められます。以下に、実践的な対策をいくつか紹介します。
1. 資産分散と為替ヘッジの活用
- 資産分散投資
複数の資産クラス(国内外株式、債券、金、不動産など)に投資することで、一部市場の急変リスクを軽減できます。 - 為替ヘッジ付きETF・投資信託
円建てだけでなく、外貨建て資産への投資も重要です。為替変動リスクを抑えるために、ヘッジ機能が付いたETFや投資信託を利用することで、円高・円安の影響を最小限にできます。
2. 金融デリバティブの利用
- FX取引・為替オプション
中級者であれば、FX取引や為替オプションを活用して、自身のポートフォリオの為替リスクを部分的にヘッジする方法も検討できます。ただし、これらは高度なリスク管理が必要となるため、慎重な判断が求められます。
3. 安全資産へのシフト
- ゴールド、国債、低リスク債券への投資
市場の不安定局面では、インフレヘッジやリスク分散としてゴールドETFや国債、短期債券といった安全資産へのシフトが有効です。
4. 定期的な情報収集と戦略の見直し
- 市場動向と政策の監視
経済指標や政策の変化は、相場に大きな影響を与えます。ReutersやBloombergなどの信頼できるニュースソースを定期的にチェックし、必要に応じてポートフォリオのリバランスを行うことが重要です。 - 専門家のアドバイス
独自の判断が難しい場合は、金融アドバイザーや投資コンサルタントの意見を取り入れることも有効です。
5. リスク管理の徹底
- 投資額とレバレッジの管理
資産全体に対する過度なリスク投資を避け、投資額の適切な分散とレバレッジの抑制を心がけることで、急激な市場変動に対して耐性を持たせることができます。
6. 具体的な金融商品の活用例
個人投資家が関税による影響(為替変動や貿易摩擦リスク)を軽減するために、以下のような具体的なETFや金融商品を活用する方法が考えられます。
- 国内株・為替ヘッジ型ETF
例:「NEXT FUNDS 日経225為替ヘッジ型上場投信」(銘柄コード:2510)
→ 日本株市場の値動きに連動しながら、円変動リスクを抑制できるため、関税政策変更による輸出企業の影響を一定程度ヘッジできます。 - 外国株・為替ヘッジ型ETF
例:「NEXT FUNDS 外国株式・MSCI-KOKUSAI指数(為替ヘッジあり)連動型上場投信」(銘柄コード:2514)
→ 国際的な株式市場に分散投資でき、為替ヘッジにより円換算リスクを低減。関税摩擦の影響が広域に及ぶ場合でもリスク分散の効果が期待されます。 - 米国株・為替ヘッジ型ETF
例:「iシェアーズ S&P 500 米国株 ETF(為替ヘッジあり)」(銘柄コード:2521)
→ 米国株式市場へ分散投資しつつ、為替ヘッジでドル円変動のリスクを抑える商品。米国市場の動向と為替の変動が個人資産に与える影響を緩和します。 - 安全資産としてのゴールドETF
例:「NEXT FUNDS 金価格連動型上場投信」(銘柄コード:1328)
→ ゴールドは一般的にインフレヘッジとして機能するため、関税政策の影響で市場のボラティリティが高まった際のリスク分散・資産保全手段として有効です。 - 外国債券・為替ヘッジ型ETF
例:「NEXT FUNDS 外国債券・FTSE世界国債インデックス(除く日本・為替ヘッジあり)連動型上場投信」(銘柄コード:2512)
→ 債券市場への投資は株式市場の下落リスクを緩和する効果が期待でき、為替ヘッジにより外貨建て債券の為替変動リスクを低減できます。
さらに、個人投資家が直接FX市場で「ドル円先物」や「為替オプション」などを利用してヘッジを行うことも可能ですが、これらは高度な知識とリスク管理が必要となるため、ETFなどの分散投資商品と組み合わせて利用するのが望ましいです。
これらの銘柄は、各証券会社や情報提供サイト(例:JPX、楽天証券、BlackRockのサイト)で最新の情報や取引条件を確認の上、個々の投資目的やリスク許容度に合わせて選択することが大切です。
まとめ
今回の新たな米国関税政策は、米国内外の市場に多大な影響を及ぼす可能性があるため、投資中級者としてはポートフォリオの分散、為替ヘッジ、リスク管理を強化することが不可欠です。資産運用においては、金融デリバティブの利用や安全資産へのシフトといった具体策を組み合わせ、定期的な情報収集と戦略の見直しを行うことで、不測の市場変動にも柔軟に対応できる体制を整えましょう。これにより、短期的な混乱を乗り越え、長期的な資産保全と成長を実現することが期待されます。



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