インカム投資家にとって「減配リスクの少ない高配当銘柄」は心強い味方。最近では“累進配当”と“DOE(株主資本配当率)”の導入を同時に表明する企業が増えています。本記事ではその仕組みやメリット、今期導入した注目10社について解説します。
累進配当とDOE(株主資本配当率)
❶ 累進配当(Progressive dividend)
- 「原則として減配せず、業績が多少悪化しても配当は維持または増配する」ことを約束する配当方針。
- 景気後退や株価下落局面でも配当インカムが毀損しにくいため、高配当株投資家にとっては“下値クッション”になる。
- 企業側は長期の資本調達コストを下げやすく、安定株主を呼び込める利点がある。
❷ DOE(Dividend on Equity = 株主資本配当率)
DOE=年間配当総額÷期首株主資本×100%
配当性向(純利益基準)と違い、株主資本をベースにするため一時的な赤字でも指標が暴れにくい。
- ROEと連動しやすく、自己資本効率を意識した還元姿勢を示せる。
- 東京証券取引所が2023年以降求めている「資本コストや株価を意識した経営」への回答として導入例が急増。
- 例:双日は「DOE4.5%以上」を掲げ、当期純利益による資本積み上げが続く限り累進増配する方針
- 例:双日は「DOE4.5%以上」を掲げ、当期純利益による資本積み上げが続く限り累進増配する方針
株価調整局面で累進配当+DOE銘柄が狙い目になる理由
下落時のメリット | 説明 |
配当利回りが急上昇 | 株価が下がっても配当水準は維持されるため、利回りが相対的に拡大。 |
減配リスクが相対的に低い | DOEを下限に置くことで「配当余力の範囲で増配or据え置き」の規律が働く。 |
PBR是正との相乗効果 | 東証のPBR1倍要請で自社株買いが増えると、DOEベースの還元余力も押し上げられる。 |

今期(2024年度決算期・2025年度決算期)に 累進配当とDOE指標を同時に宣言 した主要10社
# | 企業名(コード) | DOE目標 | 備考 |
1 | 三菱重工業 (7011) | 4%以上 | 新中計で累進配当採用、還元枠2,800億円 Reuters Japan |
2 | キリンホールディングス (2503) | 5%以上 | 2025 年12月期からDOE+累進配当へ転換 IR Pocket |
3 | 双日 (2768) | 4.5%以上 | 中計2026の柱として累進DOE方針を明記 Sojitz |
4 | ニッコンホールディングス (9072) | 4%以上 | 従来の累進配当を維持しつつDOE導入 PublicNow Docs |
5 | 大平洋金属 (5541) | 4%以上 | 配当性向目安をDOE4%に置き換え累進を継続 Yahoo!ファイナンス |
6 | 日華化学 (4463) | 3%目安 | 中間配当からDOE+累進配当へ移行 Yahoo!ファイナンス |
7 | アドソル日進 (3837) | 6%以上 | 「累進かつ連続増配」を掲げDOEを新設 IRStreet |
8 | コンドーテック (7438) | 4%以上 | 14期連続増配、DOEで累進を担保 コンドーテック株式会社 |
9 | 東鉄工業 (1835) | 3%以上 | 中計「アクションプラン2029」でDOE×累進配当を明示 東鉄工業株式会社 |
10 | PR TIMES (3922) | 2%以上 | 初配当でDOE基準&累進配当を同時表明 プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES |
チェックポイント
- 目標DOEが高いほど増配余力が大きく、自己資本増とともに配当水準も段階的に引き上げられる傾向があります。
- 累進配当は一度宣言すると減配ハードルが高くなるため、財務基盤(自己資本比率・営業CF)を必ず確認しましょう。
使い分けのヒント
投資家の狙い | フィットする銘柄タイプ |
高利回りを早期に取りたい | DOE水準が高く、すでに利回り4%超の双日・ニッコンHDなど |
長期の配当成長を重視 | ROE改善余地が大きいPR TIMES・アドソル日進など中型グロース寄り |
ディフェンシブ+インフレ耐性 | キリンHD(日用品)、日華化学(化学)など |

10社の「連続増配年数」と「減配なし(非減配)年数」
*「期」は決算期(年度)ベース。
連続増配年数=前年より1円以上増配を継続した年数、連続非減配年数=前年以下に配当を下げていない年数を示します。サイト間で集計方法が異なる場合は、最も保守的な(実績ベースの)数値を採用しました。
使い方のヒント
- 利回り×配当ストリークのバランス
- “配当維持力”を重視するなら、コンドーテック・東鉄工業・キリンなど非減配20年以上クラスが心強い。
- “配当成長加速”を狙うなら、アドソル日進・双日のようにストリークが伸び盛りの銘柄も選択肢。
- “配当維持力”を重視するなら、コンドーテック・東鉄工業・キリンなど非減配20年以上クラスが心強い。
- 復配・DOE導入組の注意点
- 大平洋金属は景気循環で配当ゼロになることもある典型的な「復配銘柄」。高利回りだが、資源価格次第で再び無配リスクがある点は要チェック。
- PR TIMESは初配当フェーズ。累進配当宣言後はEPS成長との両睨みが必須。
- 大平洋金属は景気循環で配当ゼロになることもある典型的な「復配銘柄」。高利回りだが、資源価格次第で再び無配リスクがある点は要チェック。
- ポートフォリオ例
- 安定配当コア:キリン + コンドーテック
- 成長補完:アドソル日進 + 双日
- リスクスパイス:大平洋金属(資源サイクル)、PR TIMES(高成長SaaS)
- 安定配当コア:キリン + コンドーテック
ワンポイント
連続増配年数は“株主還元姿勢”のシグナルですが、将来も続く保証ではありません。DOE目標・フリーCF・自己資本比率などと合わせて総合判断するのが高配当戦略のコツです。
まとめ:DOEと累進配当の合わせ技で盤石な配当戦略を
- 累進配当=「減配しない安心感」
- DOE=「資本効率と連動した安定配当」
特に株価調整局面では利回りが相対的に魅力的になり、将来的なバリュエーション是正の起点になり得ます。ポートフォリオ全体のバランスを取りながら、分散投資と成長性を見極めていきましょう。



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