- はじめに|「相続」は“ある日突然”やってくる
- 第1章|贈与税とは?──「あげた」ではなく「もらった人」が払う税
- 第2章|年間110万円までは非課税!——“基礎控除”の活用
- 第3章|贈与税の計算方法をマスターしよう
- 第4章|非課税特例を使いこなす(住宅・教育・結婚資金)
- 第5章|相続時精算課税制度——2,500万円まで非課税だが要注意
- 第6章|相続税の基本を押さえよう
- 第7章|モデルケースで見る「贈与+相続」節税シミュレーション
- 第8章|夫婦間贈与の活用(居住用不動産の2,000万円控除)
- 第9章|贈与と相続の違いを理解しよう
- 第10章|節税成功のための5つの鉄則
- 第11章|名義預金・名義株に注意!
- 第12章|節税と家族の幸福を両立させる発想
- 第13章|相続と贈与を一体で考える“総合設計”
- 第14章|専門家と相談すべきタイミング
- 第15章|まとめ——“お金を残す”から“想いをつなぐ”へ
- 🎯おわりに|“お金”ではなく“想い”を遺す相続へ
はじめに|「相続」は“ある日突然”やってくる
人生の中で避けて通れないのが「相続」と「贈与」。
親から子へ、または孫へ。家族の財産をどのように受け継ぐか——それは“家族の絆”と“税金の知識”が試される場面でもあります。
特に日本では高齢化が進み、「生前贈与」や「相続対策」を考える家庭が急増しています。
しかし実際には、「贈与税ってなに?」「相続税とどう違うの?」「110万円ってよく聞くけど本当?」と疑問だらけの方も多いはず。
そこで本記事では、贈与税と相続税の仕組みから、節税の具体的手法までを、やさしく丁寧に解説します。
読了後には「自分の家族ならどう設計すればいいか」が明確に見えるはずです。
第1章|贈与税とは?──「あげた」ではなく「もらった人」が払う税
まずは基本中の基本、「贈与税」から見ていきましょう。
贈与税とは、個人から個人へ財産を無償で譲り渡したときに、その**もらった人(受贈者)**が支払う税金です。
- 贈与をした人(親など)は課税されません
- 贈与を受けた人(子や孫)が納税義務を負います
対象になる財産は、現金・預金・不動産・株式・車・貴金属など、経済的価値のあるもの全て。
そのため、「名義預金」や「名義株」なども実質的に贈与とみなされることがあります。
第2章|年間110万円までは非課税!——“基礎控除”の活用
贈与税には誰でも使える年間110万円の基礎控除があります。
これは、「1月1日~12月31日の1年間で受け取った合計額」に対して適用されます。
つまり——
親から100万円、祖父母から10万円を受け取っても合計110万円以内なら申告不要・非課税です。
この制度を活用すれば、コツコツと“合法的に財産移転”が可能です。
💡 例えば、毎年110万円を10年間贈与すれば、
1,100万円を非課税で次世代に移せることになります。
第3章|贈与税の計算方法をマスターしよう
贈与税の基本式はシンプルです。
贈与税 =(年間の贈与額 − 110万円)× 税率 − 控除額
税率は累進制で、金額が大きいほど高くなります。
🔹一般贈与(親族以外など)
| 課税価格(110万円超) | 税率 | 控除額 |
| 200万円以下 | 10% | 0円 |
| 300万円以下 | 15% | 10万円 |
| 400万円以下 | 20% | 25万円 |
| 600万円以下 | 30% | 65万円 |
| 1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
| 1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
| 3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
| 4,500万円以下 | 55% | 400万円 |
🔹特例贈与(親・祖父母→20歳以上の子・孫)
| 課税価格 | 税率 | 控除額 |
| 200万円以下 | 10% | 0円 |
| 400万円以下 | 15% | 10万円 |
| 600万円以下 | 20% | 30万円 |
| 1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
| 1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
| 3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
| 4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
第4章|非課税特例を使いこなす(住宅・教育・結婚資金)
ここからが節税の本番です。贈与税には「目的別非課税制度」が複数あります。
🏡① 住宅取得資金の非課税制度
親や祖父母から住宅購入・リフォーム費用としてもらう資金は、
最大1,000万円(省エネ住宅は1,500万円)まで非課税になります。
※期限や住宅の条件あり(登記・耐震基準など要確認)
🎓② 教育資金の一括贈与
30歳未満の子や孫に対し、
最大1,500万円まで非課税(学校・塾などへの支払い限定)。
金融機関の専用口座を通じて管理します。
💍③ 結婚・子育て資金の非課税
結婚式費用や出産・育児費用などに使う場合、
最大1,000万円(結婚資金は上限300万円)まで非課税。
領収書提出が条件です。
第5章|相続時精算課税制度——2,500万円まで非課税だが要注意
もう一つの有力な制度が「相続時精算課税制度」。
これは、60歳以上の親・祖父母が20歳以上の子・孫に財産を渡す場合、
最大2,500万円まで非課税にできる仕組みです。
ただしポイントは——
相続時に「その贈与分も相続財産に合算」され、
将来の相続税で精算されること。
したがって、
- 将来相続税が発生しない家庭 → 不利になりやすい
- 将来大きな財産を残す家庭 → 有利になるケースあり
相続時精算課税は、「早めに資産を子へ移し、運用成長分を次世代に渡す」戦略として有効です。
第6章|相続税の基本を押さえよう
相続税とは、亡くなった人の財産を相続した際に課税される税金です。
課税対象は、現金・不動産・株式・車・保険金など、ほぼ全資産が含まれます。
💡相続税の基礎控除
基礎控除 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
例)相続人が妻+子2人=3人の場合
➡ 基礎控除額は 3,000万円+600万円×3=4,800万円
これを超えた分が「課税対象」となります。
📊相続税の速算表
| 課税価格 | 税率 | 控除額 |
| 1,000万円以下 | 10% | 0円 |
| 3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
| 5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
| 1億円以下 | 30% | 700万円 |
| 2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
| 3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
| 6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
| 6億円超 | 55% | 7,200万円 |
第7章|モデルケースで見る「贈与+相続」節税シミュレーション
ここでは実際の数字で見てみましょう。
🧾前提条件
| 項目 | 内容 |
| 贈与者 | 65歳の父 |
| 受贈者 | 子2人(35歳・32歳) |
| 総資産 | 1億円 |
| 相続人 | 妻+子2人=3人 |
💰① 贈与をしない場合
相続財産:1億円
基礎控除:4,800万円
課税対象:5,200万円
相続税(税率30%・控除700万円)
👉 相続税 約860万円
💸② 毎年110万円贈与を15年間継続
子2人へ各110万円 × 2人 × 15年 = 3,300万円を非課税で贈与。
➡ 相続財産は 1億円 − 3,300万円 = 6,700万円
基礎控除後:6,700−4,800=1,900万円
相続税20% − 控除200万円
👉 相続税 約180万円
💬 贈与なしの860万円 → 180万円へ!
約680万円の節税効果✨
🏡③ 住宅資金贈与(長男)
住宅資金として1,000万円を非課税贈与。
合計で4,300万円を生前贈与に。
➡ 相続財産は1億円→5,700万円
相続税約180万円(ほぼ同額)
👩🎓④ 相続時精算課税(長女)
長女に教育資金500万円を贈与し、相続時精算課税を適用。
将来相続時に加算されるが、現時点で贈与税ゼロ。
子の運用成長分は相続対象外=実質的に資産移転成功。
第8章|夫婦間贈与の活用(居住用不動産の2,000万円控除)
婚姻20年以上の夫婦間で、居住用不動産またはその購入資金を贈与する場合、
最高2,000万円まで非課税になる制度もあります。
💡 例えば、夫名義の自宅を妻名義へ半分贈与すれば、
将来の相続時に妻の取り分が増え、相続税が軽減されます。
第9章|贈与と相続の違いを理解しよう
| 比較項目 | 贈与 | 相続 |
| 発生時期 | 生前に自由に実行 | 死亡時に自動発生 |
| 納税者 | もらった人 | もらった人(相続人) |
| 税率 | 高め(最高55%) | 少し低め(最高55%) |
| 控除 | 年110万円・各特例 | 3,000万円+600万円×相続人 |
| 節税の自由度 | 高い | 限定的 |
| 注意点 | 証拠書類の保存 | 分割・遺言の有無 |
第10章|節税成功のための5つの鉄則
1️⃣ 毎年110万円ずつコツコツ贈与
→ 継続的に贈与契約書を作成し、通帳も分ける。
2️⃣ 住宅・教育・結婚資金の非課税制度を活用
→ 一括移転で大幅節税。
3️⃣ 配偶者控除で2,000万円非課税
→ 夫婦間の財産分散にも有効。
4️⃣ 相続時精算課税を戦略的に活用
→ 将来の運用成長分を子世代へ移転。
5️⃣ 「名義預金」リスクを避ける
→ 実際に管理・使用できる状態を証明する。
第11章|名義預金・名義株に注意!
生前贈与をしたつもりでも、
実際には「通帳や印鑑を親が管理していた」場合、税務署は「名義だけで実質贈与ではない」と判断します。
💬 つまり、
- 通帳・印鑑は受贈者本人が管理する
- 贈与契約書を毎年残す
- 贈与の目的・使途を明確にしておく
この3点が“生前贈与の証拠”になります。
第12章|節税と家族の幸福を両立させる発想
贈与や相続は、単なる「税金対策」ではありません。
大切なのは、家族の幸せと次世代の成長を支えるための資産移転です。
ウォーレン・バフェットの有名な言葉に、
「子供には“何でもできるほどのお金”ではなく、“何かをできるだけのお金”を残せ」
とあります。
この考え方こそ、贈与と相続を成功させる鍵です。
お金は“残す”ものではなく、“生かす”もの。
贈与は、子や孫の人生を支える**「教育」と「チャンス」への投資**なのです。
第13章|相続と贈与を一体で考える“総合設計”
🌸おすすめの実践プラン(例)
| 年齢 | 対応策 | 税制利用 |
| 65歳 | 毎年110万円贈与スタート | 基礎控除 |
| 68歳 | 住宅資金贈与(長男) | 非課税枠1,000万円 |
| 70歳 | 教育資金贈与(孫) | 非課税枠1,500万円 |
| 72歳 | 配偶者へ不動産贈与 | 2,000万円非課税 |
| 80歳 | 相続発生 | 資産半減・税負担軽減 |
💬 生前15年間で約4,500万円を非課税で移転し、
相続税を約700万円節税可能。
結果として、“家族全体の資産効率”が大幅に向上します。
第14章|専門家と相談すべきタイミング
税制改正(特に贈与関連)は頻繁に行われるため、
毎年税理士やFP(ファイナンシャルプランナー)に確認するのがおすすめです。
特にチェックすべきは以下の3点:
- 相続時精算課税制度の見直し(改正中)
- 教育・結婚資金特例の期限
- 不動産贈与時の評価方法(路線価の変更)
第15章|まとめ——“お金を残す”から“想いをつなぐ”へ
| ポイント | 内容 |
| 贈与税 | 年110万円までは非課税。目的別特例を活用しよう |
| 相続税 | 3,000万円+600万円×相続人の控除あり |
| 相続時精算課税 | 2,500万円非課税だが慎重に選択 |
| 非課税制度 | 住宅・教育・結婚資金・配偶者控除など豊富 |
| 実践法 | 毎年コツコツ+記録を残す |
| ゴール | 家族が安心して資産を受け継ぐ仕組みを作る |
🎯おわりに|“お金”ではなく“想い”を遺す相続へ
贈与も相続も、最終的な目的は「家族の幸福」です。
税金を減らすことは大切ですが、
それ以上に「争いを避け、家族の未来を支える」設計が重要です。
人生経験と知恵を持つ方こそ、
今のうちから少しずつ“次の世代へ橋を架ける準備”を始めましょう。
💬
「贈与とは、“今”の安心と“未来”の信頼をつなぐ架け橋。」
家族の笑顔を守る最良の贈り物は、“知識と行動”です。😊






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