2025年2月の決算発表を受け、好決算企業は自社株買いや増配を積極的に実施しています。今回は、高配当株+連続増配銘柄、さらに「累進配当」を導入・継続している企業に焦点を当て、その「増配の力」が資産形成にどのように寄与するのかを解説します。
1. 高配当銘柄とは?
配当利回りは、年間配当金を現在の株価で割った割合で表され、投資額に対する配当収入の効率を示す指標です。一般的に、配当利回りが3%以上の銘柄が高配当株と見なされます。ただし、単に数字が高いだけでは不十分です。
- 重要ポイント:業績悪化などで株価が下落し、結果的に利回りが高く見えるケースもあるため、企業の業績、財務状況、将来性も併せて判断する必要があります。
2. 増配率で見る企業の成長力
増配率は、前年に比べて配当金がどの程度増加したかを示す指標です。投資家にとって、増配を継続している企業は将来の配当金の成長が期待できるため重要な評価要素となります。
増配率の計算方法
- 基本計算式
増配率(%)=((今年の配当金 − 前年の配当金) ÷ 前年の配当金) × 100
例:前年100円、今年110円の場合 → ((110−100)/100)×100 = 10% - 複数年の平均増配率
年平均成長率(CAGR)=((最終年度の配当金 ÷ 初年度の配当金)^(1÷年数) − 1) × 100
例:5年前80円、今年120円の場合 → CAGR ≒ 8.37%
これにより、企業がどれだけ継続的に配当金を増やしているかが分かり、長期的な資産形成の根拠となります。
3. DOE(株主資本配当率)の視点
**DOE(株主資本配当率)**は、企業が稼いだ利益のうち、どれだけを株主資本に対して配当として還元しているかを示す指標です。
- 計算方法:
DOE(%)=(年間配当総額 ÷ 株主資本)× 100
または、DOE = 配当性向 × ROE(自己資本利益率) - 意義:
DOEは、純利益の変動に左右されにくいため、安定した株主還元政策の評価に役立ちます。業種別に見ると、全業種の中央値は約2.2%が目安とされています。
4. 高増配銘柄の実例と注目ポイント
高増配銘柄とは、業績好調を背景に継続的な増配を実現している企業のことです。以下は、直近の好決算と増配実績を持つ高増配銘柄の一例です。
例:増配実績で注目の銘柄
- パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(7532)
- 連続増配21年、直近3年で年平均23.3%増配
- 予想配当性向:23.4%
- アルフレッサ ホールディングス(2784)
- 連続増配20年、年平均約9.7%の増配
- 予想配当利回り:3.05%、配当性向:41.4%
- ロート製薬(4527)
- 連続増配20年、年平均約24.4%増配
- 予想配当利回り:1.30%、配当性向:23.3%
- 栗田工業(6370)
- 連続増配20年、年平均約8.3%増配
- 予想配当利回り:1.78%、配当性向:29.9%
- 高速(7504)
- 連続増配20年、年平均約7.3%増配
- 予想配当利回り:2.4%
これらの企業は、長期間にわたる増配実績から、今後も堅実な株主還元が期待できる点で投資家から高い注目を集めています。
5. シミュレーション:高増配銘柄の5年後の資産形成
【シナリオ】
配当利回り年利3.7%の高増配銘柄が株価50万で増配率年15%の銘柄を5年保有した場合の金額はいくらですか。ただし株価も年間3%値上がりするとします、また配当金は再投資するとします。
条件を整理すると、
- 初期株価:500,000円
- 初年度の配当利回り:3.7% → 初年度1株あたり配当金=500,000円×0.037=18,500円
- 毎年、配当金は前年度比10%増(=増配率10%)
- 株価は毎年3%上昇
- 配当金はその都度、当年の終値で再投資する
- 保有期間:5年間
【シミュレーション(年末にまとめて再投資する場合)】
年1:
- 株価 S₁ = 500,000×1.03 = 515,000円
- 配当金 D₁ = 18,500円
- 追加取得株数 = 18,500 ÷ 515,000 ≈ 0.03592
- 総株数 = 1 + 0.03592 = 1.03592
- 年末評価額 = 1.03592×515,000 ≈ 533,500円
年2:
- 株価 S₂ = 515,000×1.03 = 530,450円
- 年初配当額は前年より10%増:D₂(1株あたり) = 18,500×1.10 = 20,350円
- 受取配当金 = 1.03592×20,350 ≈ 21,080円
- 追加取得株数 = 21,080 ÷ 530,450 ≈ 0.03975
- 総株数 = 1.03592 + 0.03975 ≈ 1.07567
- 年末評価額 = 1.07567×530,450 ≈ 570,660円
年3:
- 株価 S₃ = 530,450×1.03 ≈ 546,364円
- D₃ = 20,350×1.10 = 22,385円
- 受取配当金 = 1.07567×22,385 ≈ 24,085円
- 追加取得株数 = 24,085 ÷ 546,364 ≈ 0.04404
- 総株数 = 1.07567 + 0.04404 ≈ 1.11971
- 年末評価額 = 1.11971×546,364 ≈ 611,950円
年4:
- 株価 S₄ = 546,364×1.03 ≈ 562,754円
- D₄ = 22,385×1.10 = 24,623.5円
- 受取配当金 = 1.11971×24,623.5 ≈ 27,572円
- 追加取得株数 = 27,572 ÷ 562,754 ≈ 0.04904
- 総株数 = 1.11971 + 0.04904 ≈ 1.16875
- 年末評価額 = 1.16875×562,754 ≈ 657,500円
年5:
- 株価 S₅ = 562,754×1.03 ≈ 579,637円
- D₅ = 24,623.5×1.10 = 27,085.85円
- 受取配当金 = 1.16875×27,085.85 ≈ 31,647円
- 追加取得株数 = 31,647 ÷ 579,637 ≈ 0.05460
- 総株数 = 1.16875 + 0.05460 ≈ 1.22335
- 年末評価額 = 1.22335×579,637 ≈ 709,237円
【結果】
5年間で、再投資を考慮した最終的なポートフォリオ評価額は、約709,000円となります。
※このシミュレーションは、配当が年末にまとめて再投資され、株価・配当額がそれぞれ毎年一定率で上昇する前提での概算です。高増配と株価の堅実な上昇が複利効果を生み、初期投資額を大きく上回る資産形成につながる点がポイントです。
まとめ
2025年2月決算後の好決算企業は、自社株買いや増配を通じて株主還元を強化しています。高配当銘柄、連続増配銘柄、さらには累進配当を掲げる企業に注目することで、長期的な資産形成に大きな影響を与えます。
投資家の皆様は、配当利回り、増配率、そしてDOEなどの指標を総合的に判断し、企業の業績・財務状況・将来性を見極めることが重要です。
このブログでは、好決算後の株主還元戦略と連続増配・累進配当の実力を分析し、資産形成に直結する投資判断の一助となる情報をお届けさせていただきました。



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