iDeCo(個人型確定拠出年金)は、老後の資産形成に適した制度ですが、受け取る際の方法によって税金が変わるため、慎重なプランニングが必要です。今回は、時価評価額1,500万円、評価損益700万円、勤続年数20年または21年で退職金がない場合における、税負担を最小限に抑える受け取り方法について解説します。(20年とそれ以上では控除額の考え方が異なる為。)
iDeCoについては前回の投稿も別途ご参考にしてください!
iDeCoの受け取り方の選択肢
iDeCoの受け取り方は、以下の3つの方法から選べます。
- 一時金として一括受け取り
- 年金形式で分割して受け取り
- 一時金と年金の併用(ハイブリッド受け取り)
各方法ごとに、勤続年数20年と21年のケースについて具体的に税額を比較してみましょう。
1. 一時金として受け取る場合の税金計算
iDeCoを一時金として受け取る場合は、「退職所得控除」を適用できます。控除額は勤続年数によって変動し、控除後の課税対象額の半分が課税所得となります。
勤続年数20年の場合
- 退職所得控除額:20年 × 40万円 = 800万円
- 課税対象額:1,500万円 – 800万円 = 700万円
- 課税所得:700万円 ÷ 2 = 350万円
概算税額
- 所得税:350万円 × 5% = 17万5,000円
- 住民税:350万円 × 10% = 35万円
- 合計税額:約52万5,000円
勤続年数21年の場合
- 退職所得控除額:20年 × 40万円 + 1年 × 70万円 = 870万円
- 課税対象額:1,500万円 – 870万円 = 630万円
- 課税所得:630万円 ÷ 2 = 315万円
概算税額
- 所得税:315万円 × 5% = 15万7,500円
- 住民税:315万円 × 10% = 31万5,000円
- 合計税額:約47万2,500円
2. 年金として受け取る場合の税金計算
年金として受け取る場合は、「公的年金等控除」が適用されます。65歳未満の場合は、年間の受取額から60万円が控除されます。
年間受取額を1,500万円の10年分割とする場合
- 年間受取額:1,500万円 ÷ 10年 = 150万円
- 課税対象額:150万円 – 60万円 = 90万円
概算税額(年間)
- 所得税:90万円 × 5% = 4万5,000円
- 住民税:90万円 × 10% = 9万円
- 合計税額:約13万5,000円
総税額(10年間)
- 13万5,000円 × 10年 = 約135万円
3. 一時金と年金の併用(ハイブリッド受け取り)での税金計算
一時金と年金を組み合わせることで、控除を最大限に活用しつつ税負担を抑える方法です。
勤続年数20年の場合
- 一時金受取額:退職所得控除800万円以内で受け取る
- 税負担なし
- 年金受取額:残り700万円を10年で分割受取
- 年間受取額:700万円 ÷ 10年 = 70万円
- 課税対象額:70万円 – 60万円 = 10万円
概算税額(年間)
- 所得税:10万円 × 5% = 5,000円
- 住民税:10万円 × 10% = 1万円
- 合計税額:約1万5,000円
総税額(10年間)
- 1万5,000円 × 10年 = 約15万円
勤続年数21年の場合
- 一時金受取額:退職所得控除870万円以内で受け取る
- 税負担なし
- 年金受取額:残り630万円を10年で分割受取
- 年間受取額:630万円 ÷ 10年 = 63万円
- 課税対象額:63万円 – 60万円 = 3万円
概算税額(年間)
- 所得税:3万円 × 5% = 1,500円
- 住民税:3万円 × 10% = 3,000円
- 合計税額:約4,500円
総税額(10年間)
- 4,500円 × 10年 = 約4万5,000円
まとめ:最適な受け取り方法は「ハイブリッド受け取り」
上記の比較から、一時金と年金の併用(ハイブリッド受け取り)が最も税負担を抑えられることが分かります。勤続年数に応じて退職所得控除額を一時金部分で活用し、残額を年金として分割受け取りすることで、税額が最も低く抑えられます。ただし、年金部分を10年、15年と年月をかけて受け取る時間はあまりないと考える方が妥当です。(寿命との兼ね合いがあるので難しい)
iDeCoは税制に対してNISAと同様に優れた制度ですが最後の受け取り方の考え方が難しく、お勤め先の退職金制度や時期によってやり方で税金のかかり方が異なります。自らのライフ生活をとライフスケジュールをしっかり考えてうえで受け取り方を考えてみましょう!
コメント