政府・与党は、2025年度の税制改正において、企業年金のない会社員のiDeCo(個人型確定拠出年金)の掛け金限度額を現行の月額23,000円から62,000円に引き上げる方針を固めました。この改正は、2025年12月から適用される予定です。
この改正により、企業年金に加入していない会社員は、より多くの資金をiDeCoに拠出することが可能となり、老後資金の準備が一層進めやすくなります。ただし、企業型確定拠出年金(企業型DC)や確定給付企業年金(DB)などの他の年金制度に加入している場合、掛け金の上限額は異なりますので、ご自身の加入状況を確認の上、適切な掛け金を設定することが重要です。
また、iDeCoの掛け金は全額が所得控除の対象となり、節税効果も期待できます。今回の改正により、掛け金の上限が引き上げられることで、さらに大きな節税効果が得られる可能性があります。詳細な手続きや条件については、今後の政府からの正式な発表を待つ必要がありますので、最新の情報を確認するようにしてください。
現行制度との比較(サラーリーマンの場合)
- 現行制度(2024年12月時点): 企業年金のない会社員のiDeCo掛け金限度額は月額23,000円です。
- 改正後(2025年12月以降): 掛け金限度額が月額62,000円に引き上げられます。
メリット
- 老後資金の充実: 掛け金限度額の増加により、iDeCoを通じてより多くの資金を積み立てることが可能となり、老後資金の充実が期待できます。
- 節税効果の向上: iDeCoの掛け金は全額が所得控除の対象となるため、掛け金を増額することで所得税および住民税の負担軽減効果が高まります。
例: 月額62,000円を拠出した場合、年間で744,000円の所得控除となります。仮に所得税率が20%、住民税率が10%の場合、年間で約223,200円の税負担軽減が期待できます。 - 運用益の非課税: iDeCoで得られる運用益は非課税となるため、投資信託などで運用した際の利益に対して課税されず、資産形成が効率的に行えます。
デメリット
- 資金の流動性制限: iDeCoの資産は原則として60歳まで引き出すことができないため、急な資金需要に対応できない可能性があります。
- 手数料負担: iDeCoの加入・運用には口座管理手数料などが発生します。これらの手数料は金融機関によって異なるため、事前に確認することが重要です。
- 投資リスク: iDeCoは自己責任で運用を行うため、運用成績によっては元本割れのリスクがあります。投資商品の選択や市場動向に注意を払う必要があります。
運用期間中の戦略と注意点
運用戦略
- リスク許容度の評価: 自身の年齢、収入、資産状況、投資経験などを踏まえ、どの程度のリスクを許容できるかを明確にします。
- 資産配分(アセットアロケーション)の設定: リスク許容度に基づき、国内外の株式、債券、定期預金など、複数の資産クラスに分散投資を行います。これにより、特定の資産の価格変動リスクを軽減できます。
- 定期的なポートフォリオの見直し: 市場環境や自身のライフステージの変化に応じて、資産配分を定期的にチェックし、必要に応じてリバランス(資産配分の調整)を行います。
- 長期的視点での運用: iDeCoは長期運用が前提の制度です。短期的な市場変動に一喜一憂せず、長期的な視点で資産形成を進めることが重要です。
注意点
- 元本割れのリスク: 投資信託などのリスク資産を選択した場合、運用結果によっては元本割れの可能性があります。リスクとリターンのバランスを考慮した商品選びが求められます。
- 手数料の確認: iDeCoの運用には、加入時手数料、口座管理手数料、運用商品の信託報酬などがかかります。これらの手数料は金融機関や商品によって異なるため、事前に確認し、コストを抑える工夫が必要です。
- 受取時の税制: iDeCoの給付金は、受取方法(一時金または年金)によって適用される税制が異なります。一時金として受け取る場合は「退職所得控除」、年金形式で受け取る場合は「公的年金等控除」が適用されます。受取時期や方法によって税負担が変わるため、事前に計画を立てることが重要です。
- 他の退職金との調整: 退職金とiDeCoの一時金を同じ年に受け取ると、退職所得控除の適用範囲が重複し、控除額が減少する可能性があります。受取時期をずらすなどの調整が必要です。
- 制度変更への対応: iDeCoの制度は法改正などにより変更される可能性があります。最新の情報を常に確認し、柔軟に対応できるようにしておきましょう。
出口戦略
iDeCo(個人型確定拠出年金)の受け取り方やタイミングは、税負担や老後の資金計画に大きな影響を及ぼします。
iDeCoの受け取り方法
iDeCoの資産は、60歳以降に以下の方法で受け取ることができます。
- 一時金として一括受取: 全額をまとめて受け取る方法で、「退職所得」として扱われ、退職所得控除が適用されます。
- 年金形式で分割受取: 一定期間にわたり分割して受け取る方法で、「雑所得」として扱われ、公的年金等控除が適用されます。
- 一時金と年金の併用: 一部を一時金、残りを年金形式で受け取る方法です。
税制上のポイント
- 退職所得控除: 一時金として受け取る場合、勤続年数に応じた退職所得控除が適用され、税負担が軽減されます。
- 公的年金等控除: 年金形式で受け取る場合、年齢や受取額に応じた公的年金等控除が適用されます。
出口戦略の考え方
- 受取時期の調整: 退職金とiDeCoの一時金を同じ年に受け取ると、退職所得控除の適用範囲が重複し、控除額が減少する可能性があります。受取時期をずらすことで、控除を最大限に活用できます。
- 受取方法の選択: 一時金と年金形式の併用により、税負担を分散させることが可能です。例えば、退職所得控除の範囲内で一時金を受け取り、残りを年金形式で受け取ることで、各種控除を効果的に活用できます。
- 資産運用の見直し: 受取開始前にリスクの低い資産へシフトすることで、受取時の市場変動リスクを軽減できます。
注意点
- 手数料: iDeCoの運用には手数料がかかるため、受取方法や期間を考慮してコストを最小限に抑える工夫が必要です。
- 税制改正の影響: 税制は変更される可能性があるため、最新の情報を確認し、適切な戦略を立てることが重要です。
iDeCoの出口戦略は個々の状況によって最適解が異なります。専門家に相談しながら、自身のライフプランに合った受取方法を検討することをおすすめします。
シニア層の戦略は?
60歳以上の方が新たに加入する際の戦略
加入条件
2022年5月の法改正により、iDeCoの加入可能年齢が65歳未満まで拡大されました。しかし、60歳以上で新たにiDeCoに加入するためには、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。
- 国民年金の任意加入者であること: 60歳以上65歳未満で、老齢基礎年金の受給資格を満たしていない、または満額受給を目指すために国民年金に任意加入している方。
- 厚生年金の被保険者であること: 60歳以上65歳未満で、会社員や公務員として厚生年金に加入している方。
これらの条件を満たさない場合、60歳以上でのiDeCo新規加入はできません。
運用期間と受給開始年齢
iDeCoの老齢給付金は、原則として60歳から受け取れますが、受給開始年齢は加入期間に応じて異なります。60歳以上で新たに加入した場合、加入期間が短いため、受給開始年齢が繰り下がることがあります。具体的には、加入期間が5年以上10年未満の場合、受給開始年齢は61歳から64歳となります。
メリット
- 税制優遇: 掛金は全額が所得控除の対象となり、所得税や住民税の負担軽減が期待できます。
- 運用益の非課税: 運用中に得られる利益は非課税となり、効率的な資産形成が可能です。
デメリット
- 資金拘束: iDeCoの資産は原則として受給開始年齢まで引き出せないため、資金の流動性が制限されます。
- 手数料負担: 加入時や運用中に手数料が発生します。これらは金融機関によって異なるため、事前の確認が必要です。
戦略と注意点
- 加入前の確認: 自身がiDeCoに加入できる条件を満たしているか確認しましょう。特に、国民年金の任意加入期間や厚生年金の加入状況を確認することが重要です。
- 受給開始年齢の計画: 加入期間に応じて受給開始年齢が変動するため、資金が必要となる時期を考慮して計画を立てましょう。
- 資産運用の見直し: 受給開始が近い場合、リスクの低い運用商品を選択することで、元本割れのリスクを軽減できます。
- 手数料の比較: 金融機関によって手数料が異なるため、複数の機関を比較し、コストを抑える工夫が必要です。
60歳以降も継続するメリット
1. 節税効果の持続
iDeCoの掛金は全額が所得控除の対象となり、所得税や住民税の負担軽減につながります。60歳以降も掛金を拠出し続けることで、この節税効果を継続的に享受できます。
2. 運用益の非課税
iDeCoで得られる運用益は非課税となります。60歳以降も運用を続けることで、資産の増加が期待でき、効率的な資産形成が可能です。
3. 退職所得控除額の増加
iDeCoの一時金受取時には退職所得控除が適用されます。掛金拠出期間が長くなるほど、退職所得控除額が増加するため、60歳以降も拠出を続けることで、将来の税負担を軽減できます。
4. 老後資金のさらなる充実
60歳以降もiDeCoを継続することで、老後資金をより多く積み立てることが可能となり、安心した生活設計ができます。
iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金拠出可能年齢は、2022年5月の法改正により65歳未満まで引き上げられました。さらに、政府は2024年11月に、掛金拠出可能年齢を70歳まで引き上げる方針を示しています。この改正案は、2025年の通常国会に提出される予定です。
ただし、現時点(2024年12月11日)では、掛金の拠出可能年齢は65歳未満となっています。今後の法改正により、70歳まで拠出可能となる見込みですが、詳細は政府の正式な発表を待つ必要があります。
また、iDeCoの受給開始年齢は原則60歳からで、受給開始の上限年齢は75歳とされています。掛金の拠出可能年齢が引き上げられた場合でも、受給開始年齢の上限は現行の75歳が維持される見通しです。
まとめ
2025年度の税制改正により、企業年金のない会社員はiDeCoの掛け金限度額が大幅に引き上げられ、老後資金の積み立てや節税効果の向上が期待できます。しかし、資金の流動性制限や手数料、投資リスクなどのデメリットも存在するため、これらを踏まえて適切な資産運用を検討することが重要です。
iDeCoは拠出者が節税出来るメリットが多い仕組みとなりますが出口戦略を上手く立て最大の節税効果を受けることが出来ればと思います!
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