はじめに|「債券は安全資産」という常識が揺らいでいる
2024年後半から2025年にかけて、日本の金融環境は大きな転換点を迎えています。
日銀はマイナス金利を解除し、さらに0.25%刻みでの利上げが視野に入り、市場では政策金利1%台も現実的なシナリオとして意識され始めました。
こうした中で、投資家の間では次のような疑問が増えています。
- 日本国債は、もう安全資産ではないのか?
- 利回りの高い米国債ETFに切り替えた方が良いのでは?
- 為替リスクをどう考えればいいのか?
本記事では、
「日本国債」と「米国債ETF」を対立軸で考えるのではなく、どう“組み合わせるか”
という視点から、利上げ時代における最適な債券戦略を整理します。
第1章|まず理解したい:日本国債と米国債ETFは「別の資産」
最初に強調しておきたいのは、
日本国債と米国債ETFは、同じ“債券”でも役割がまったく違うという点です。
日本国債の本質
- 円建て
- 為替リスクなし
- デフォルトリスク極小
- 利回りは低めだが安定
👉 目的:資産防衛・生活基盤の安定
米国債ETFの本質
- ドル建て(為替リスクあり)
- 利回りが高い
- 金利低下時の価格上昇が大きい
- ETFゆえ日々価格変動
👉 目的:リターン補完・分散投資
つまり、
どちらが優れているか
ではなく
どこに配置すべきか
が判断軸になります。
第2章|なぜ今「債券の組み合わせ」が重要なのか
① 株式市場はすでに高バリュエーション
米国株・日本株ともにPERは過去平均を上回る水準にあり、
「今後も右肩上がり」と楽観するのは危険な局面です。
② 現金はインフレに弱い
金利が上がっても、インフレ率がそれ以上であれば、
現金の実質価値は目減りします。
③ 債券は「守り」から「戦略資産」へ
金利がゼロ近辺だった時代、債券は“持つ意味が薄い資産”でした。
しかし今は違います。
- 利回りが復活
- 金利サイクルが明確
- 再投資戦略が機能する
👉 債券は考えて持つ資産に戻ってきたのです。
第3章|債券全体の最適配分|まずは「量」を決める
結論:債券は資産全体の20〜30%
これは年齢やリスク許容度にもよりますが、
利上げ途中の現在は、30%を上限とするのが無難です。
- 株:成長エンジン
- 債券:安定装置
- 現金:機動力
この3点がバランスよく機能します。
第4章|日本国債 vs 米国債ETF|黄金比は「6〜7:3〜4」
債券100%の内訳として、推奨する比率は以下です。
- 日本国債:60〜70%
- 米国債ETF:30〜40%
なぜ日本国債が多めなのか
① 為替リスクを遮断できる
老後資金や生活防衛資金にとって、
為替変動は“不要なストレス”です。
② 日銀利上げは「再投資チャンス」
金利上昇 → 価格下落
しかしこれは、次はより高い利回りで買えることを意味します。
③ 精神的安定が段違い
相場急変時に、日本国債はほぼ動きません。
これは、株を安値で投げないための“心のクッション”になります。
第5章|日本国債の年限別・最適構成
推奨モデル(日本国債内)
- 5年以下:30%
- 7〜10年:40%
- 20年:20%
- 余力:10%(追加投資用)
ポイント
- 主軸は7〜10年
- 20年は「固定収入目的」で少量
- 一括購入は避け、分割で
第6章|米国債ETFの正しい使い方
米国債ETFの役割
- 利回りの底上げ
- 世界景気後退時の保険
- 株との逆相関効果
ETF内の推奨配分
- 米10年中心(中期):50%
- 米20年超(長期):30%
- 為替ヘッジあり:20%
なぜ分けるのか
- 長期債は利下げ局面で爆発力があるが、値動きが大きい
- ヘッジありは円高時のクッション
👉 「全部20年」「全部ヘッジなし」は避ける
第7章|完成形ポートフォリオ例
例:資産3,000万円・債券30%の場合
- 債券:900万円
- 日本国債:540〜630万円
- 米国債ETF:270〜360万円
- 日本国債:540〜630万円
日本国債内訳
- 5年:150万円
- 10年:200万円
- 20年:100万円
- 余力:50万円
米国債ETF内訳
- 中期:150万円
- 長期:90万円
- ヘッジ:60万円
第8章|想定シナリオ別・どれが効くか
- 株式下落 → 米国債ETFが上昇
- 円高進行 → 日本国債・ヘッジETFが効く
- インフレ継続 → 短中期債の再投資が有利
- 景気後退 → 長期米国債がリターン源に
👉 1つ外しても、必ずどれかが効く設計
おわりに|「当てに行かない」ことが最大のリスク管理
利上げ局面の債券投資で大切なのは、
- 完璧なタイミングを狙わない
- 一点集中しない
- 余白を残す
という姿勢です。
孫子の兵法にある通り、
「勝ちやすきに勝つ」
――いまは大胆に賭ける場面ではなく、
負けにくい配置を作る局面です。
日本国債と米国債ETFを正しく組み合わせることで、
資産は“増やす”だけでなく、“守りながら前に進む”ことができます。






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