― 簿価利回りと時価利回り、どちらで判断すべきか ―
今回は、高配当株投資を続けている方であれば必ず一度は直面するテーマ、
「株価が大きく上昇し、簿価利回りは高いが、時価利回りは低くなったとき、売るべきか・持ち続けるべきか」
について、実際の銘柄(三菱商事・TOYO TIRE・ENEOS)を用いながら、
初心者の方にも分かるよう、かつ実践的に整理していきます。
1. 高配当株投資が順調なときほど悩みは深くなる
高配当株投資は、
- 配当金という目に見える成果がある
- 株価の上下に一喜一憂しにくい
- 老後のキャッシュフロー設計と相性が良い
という点で、非常に優れた投資スタイルです。
しかし、長く続けていると必ず出てくる悩みがあります。
それが、
「配当利回り(簿価)は高いが、株価が上がって時価利回りは下がってしまった」
という状態です。
これは投資が成功しているからこそ起こる悩みであり、
同時に、次の一手で将来のリターンが大きく変わる分岐点でもあります。
2. 配当利回りには2種類ある
まずは基本の整理です。
① 配当利回り(簿価)とは
- 自分が購入した価格(取得単価)に対する配当利回り
- 「自分の投資がどれだけうまくいったか」を示す指標
例:
- 取得価格1,000円
- 年間配当50円
→ 簿価利回り5%
これは過去の判断の成果を示しています。
② 配当利回り(時価)とは
- 現在の株価に対する配当利回り
- 「いま新規で買う人にとっての魅力」を示す指標
例:
- 現在株価2,000円
- 年間配当50円
→ 時価利回り2.5%
これは現在と将来の投資判断に使う数字です。
3. 売却判断で見るべきはどちらか?
結論から言うと、
売却・入替の判断は「配当利回り(時価)」を基準にすべきです。
理由はシンプルで、
- 株を売った瞬間、簿価は意味を持たなくなる
- 売却後は「今の資金をどこに置くか」の判断になる
からです。
簿価利回りは、
- 心理的な満足
- 成功体験の確認
としては重要ですが、
将来の最適解を保証するものではありません。
4. 判断を誤らせる「簿価利回りの罠」
高配当株投資家が陥りやすい思考があります。
「簿価で5%あるから売る必要はない」
この考え方自体は自然ですが、
次の視点が抜け落ちやすいのです。
- 今この株を新規で買うだろうか?
- 同じ資金で、より高い配当・安定性は得られないか?
ここを考えないまま保有を続けると、
- 配当効率の低下
- ポートフォリオの硬直化
につながります。
5. 実例①:三菱商事(8058)
- 簿価利回り:4.48%
- 時価利回り:2.8%
一見すると「利回りが下がって魅力が薄れた」ように見えますが、
結論は必ずしも売却ではありません。
三菱商事の評価ポイント
- 累進配当を明確に掲げている
- 自社株買いを含めた総還元が高水準
- 資源・非資源の分散
- 配当の絶対額が増え続ける構造
この銘柄は、
「高配当株」+「配当成長株」
という性格を持っています。
判断
- 基本は保有継続
- 時価利回りが2.5%を割る、もしくは商社セクター過熱時には一部利確
6. 実例②:TOYO TIRE(5105)
- 簿価利回り:4.04%
- 時価利回り:2.94%
こちらは三菱商事とは性格が大きく異なります。
注意点
- 景気敏感・市況循環型
- 累進配当ではない
- 業績と配当の振れ幅が大きい
株価上昇の背景は、
- 円安
- 市況回復
の影響が大きく、
配当の持続性は限定的です。
判断
- 半分利確、もしくは全入替候補
- 簿価利回りに引きずられないことが重要
7. 実例③:ENEOS(5020)
- 簿価利回り:3.72%
- 時価利回り:2.9%
ENEOSは典型的な市況依存型高配当株です。
特徴
- 原油価格・精製マージンに左右される
- 配当は安定的だが、増配の確度は低い
- 累進配当ではない
判断
- 30〜50%の部分利確が現実的
- コア高配当からは一段格下げ
8. 判断の分かれ道・チェックリスト
売却・保有の判断に迷ったら、以下を確認します。
- 時価利回りは3%を割っていないか
- 今、新規で買いたいと思えるか
- 累進配当・DOE方針はあるか
- 配当の絶対額は今後も増えそうか
- 他に明確な乗り換え先はあるか
2つ以上「NO」があれば、入替検討のサインです。
9. 全部売らない、全部残さないという選択
高配当株投資では、
- 全売却
- 完全放置
の二択ではなく、
「一部利確」という選択
が非常に有効です。
- 心理的負担が小さい
- キャッシュフローを維持できる
- 次の配当源を育てられる
10. まとめ
- 簿価利回りは「過去の成果」
- 時価利回りは「未来の判断軸」
- 売却判断は必ず時価ベース
- 配当の“成長性”を見極める
高配当株投資の成功は、
「買い」よりも「持ち方・入替え方」で決まる
と言っても過言ではありません。
簿価利回りに感謝しつつ、
次の10年を見据えた判断を積み重ねていきましょう。
これが、高配当株投資の判断の分かれ道です。基本的には長期キープですが😉





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