65歳で定年退職を迎えた夫と、まだ働いている56歳の妻。子供たちはすでに独立し、これからの生活をどうするか検討中というケースは多いのではないでしょうか。今回は、夫が妻の扶養に入る場合とマイクロ法人を立ち上げる場合、どちらがより税金や社会保険料を抑えられるかについて考えてみました。
ケーススタディ
前提条件:
夫65歳定年退職 収入:老齢年金年200万円 株式配当年120万円。戸建て保有、子供は3人ですが成人して独立。妻56歳 会社員年収200万円。
1. 妻の扶養に入る場合(上記前提の場合はそもそも扶養にはいれませんね!)
65歳の夫が妻の扶養に入ることを検討すると、税金や社会保険料の負担が抑えられる可能性があります。具体的には、以下の点が影響します。
- 健康保険の扶養に入る:妻が勤務している企業の健康保険に夫を扶養として入れることが可能であれば、夫は社会保険料の支払いを免れることができます。ただし、扶養の年収条件として、年間収入が130万円未満であることが必要です。この場合、夫の年金収入200万円と配当収入120万円があるため、扶養には入ることが難しいでしょう。
- 税金の影響:妻の税金面では、夫を扶養に入れた場合、配偶者控除の適用が可能ですが、夫の収入が基準を超えているため、控除の恩恵を得るのは難しいと考えられます。
2. 夫がマイクロ法人を立ち上げる場合
夫がマイクロ法人(小規模な法人)を設立し、自らをその法人の役員として収入を得る場合のメリットについて検討します。
- 法人化のメリット:
- 所得分散と節税:法人を設立することで、法人の利益を役員報酬として分散することができ、所得税や住民税の負担を減らせる可能性があります。例えば、役員報酬を適度な金額に調整することで、税率を抑える効果があります。
- 社会保険の負担軽減:法人の役員として働く場合、役員報酬の額に基づいて社会保険料が決定されます。報酬を低く設定することで社会保険料を抑えることが可能です。また、法人として経費を計上できるため、手元に残る金額を増やすことができる場合があります。
- 法人設立と維持費用:法人設立には登記費用や顧問税理士費用などがかかるため、節税効果がこれらのコストを上回るかを慎重に見積もる必要があります。年間でおおよそ20万円から30万円程度の維持費用がかかることが一般的です。
金額の比較
- マイクロ法人の場合:役員報酬を例えば年間100万円に設定した場合、社会保険料はその報酬額に基づいて計算され、年間約20万円程度に抑えることが可能です。また、経費を適切に活用することで節税効果が得られます。一方で法人維持費用が年間20〜30万円ほどかかることを考慮すると、全体での節約効果は限定的かもしれませんが、収入に対する柔軟な対応が可能となります。
追加条件の確認
- 配当所得の課税状況:配当所得が総合課税か申告分離課税かによって税額に影響が出ます。申告分離課税の場合、所得税と住民税の税率はそれぞれ異なります。
- 社会保険の適用条件:妻の勤務先の健康保険組合の扶養認定基準や、法人設立時の夫の役員報酬額をどの程度に設定するかが重要なポイントとなります。
マイクロ法人の特徴
- 設立の容易さ: 法人の設立には、登記が必要ですが、個人で行うことも可能です。法人設立には約20万円程度の費用がかかりますが、手続き自体は比較的簡単です。
- 小規模経営: マイクロ法人は、通常、代表取締役1人や少人数で運営されます。従業員を雇わずに、オーナー自身が役員となり、役員報酬を受け取る形が一般的です。
- 経費としての支出管理: 法人の場合、個人では経費として認められない支出も、事業活動に関連するものであれば経費計上できます。例えば、オフィス家賃や通信費、交通費などが法人名義で経費として扱われます。
- 所得分散による節税効果: 法人化することで、個人所得として課税される収入を法人の所得として分散できます。法人税は個人所得税に比べて税率が低い場合があるため、これを活用することで節税が可能です。
- 役員報酬の設定: マイクロ法人では、代表者が自ら役員報酬を設定できます。この報酬は法人の経費となり、個人の所得としても課税対象となりますが、所得税の累進課税に比べ、法人化することでトータルの税負担が軽減される可能性があります。
- 資産管理: 資産管理法人として、株式や不動産を保有し、その運用益を法人の売上として計上することで、個人の所得税を抑える方法があります。
マイクロ法人を利用する理由
- 定年退職後の節税対策: 退職後に年金や投資収益がある場合、マイクロ法人を通じてこれらの収入を法人の売上として管理することで、税負担の軽減が期待できます。特に役員報酬をうまく設定することで、個人として受け取る所得をコントロールすることが可能です。
- 配当所得の管理: 株式配当を法人の売上として計上することで、法人税として課税される金額を抑えつつ、役員報酬として適切な額を個人で受け取る形が効果的です。これにより、累進課税による個人所得税の高負担を回避できます。
- 年金とのバランス: 年金受給額が増えると所得税率も上がる可能性がありますが、マイクロ法人化して収入を分散することで、全体的な税率を下げることができます。
マイクロ法人設立の留意点
- 社会保険加入の義務: 法人化すると、役員は社会保険に加入する必要があります。これは個人事業主にはない負担で、保険料が増える点には注意が必要です。
- コストと管理: 法人の設立には初期費用がかかり、また法人税の申告や会計管理のために一定の知識や時間が必要です。場合によっては、税理士などの専門家に依頼する必要が出てくることもあります。
- 法人維持の手間: 法人は毎年決算や税務申告が必要で、これらの手続きが負担になることもあります。また、法人維持には一定の運営コストが発生します。
定年後の配当所得などをうまく活用して、マイクロ法人を通じた節税や資産管理を行うスキームは、シニア層にとって有効な手段です。具体的なスキームの構築には、税理士などの専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。
定年後に老齢年金収入と配当収入、または副業などで少しでも稼ぎたい方が多いと思います。そんな方々にとって老後にかかる税金や社会保障料を少しでも軽減できればと考えています。少しでも知識をみにつけ豊かな老後をおくりましょう!
第2章へつづく・・・・・・
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