みなさん投資をしていく過程でナンピン買いや塩漬けという言葉をよく聞くと思います。今回は少々長くなりますがお付き合いください。
- 第1章|ナンピン買いとは何か?──基本からおさらい
- 第2章|買い下がりのメリットとリスク
- 第3章|買い上がりの戦略と注意点
- 第4章|孫子に学ぶ「撤退」の美学:塩漬けと戦わない投資
- 第5章|ナンピン前に必ずチェック!ファンダメンタル指標の完全解説
- 第6章|“危ない高配当株”の見分け方と注意すべき兆候
- 第7章|信用倍率(需給分析)の活用術:買い下がり戦略の“見えない壁”を読む
- 第8章|ファンダ × 需給で“買い下がり向き”優良株を探す方法
- 第9章|注目のナンピン候補3銘柄【2025年版】
- 第10章|まとめ&戦略的ナンピンの極意──「感情」ではなく「ルール」で買い下がれ!
- 🎯ナンピン失敗を防ぐ「マイルール集」
- 👤提案:「あなたに合ったナンピン戦略」を選ぼう
- 📝最後に:ナンピンは「リスク」ではなく「選択肢」
第1章|ナンピン買いとは何か?──基本からおさらい
投資をしていると、思わぬタイミングで株価が下がり始めることがあります。
「もっと早く売っておけばよかった」「今からでも損切りするべきか?」──そんな時に多くの投資家が一度は考えるのが、「ナンピン買い」です。
✅ナンピン買いの定義
ナンピン(難平)買いとは、保有中の銘柄が値下がりした際に、同じ銘柄を追加で買い増す手法です。
平均取得単価を引き下げ、株価が少し戻るだけでも利益が出やすくする効果が狙いです。
例)
100株を1,000円で買い → 900円に下落 → さらに100株購入
⇒ 平均取得単価は「(1000+900)÷2 = 950円」に。
✅ナンピンは「敗者の戦略」なのか?
ナンピンは「負けを取り戻すための手段」としてネガティブに捉えられることもありますが、戦略的に使えばむしろ成功するための武器になり得ます。
大事なのは、**「理由があって株価が下がっているのか」「一時的な下落なのか」**を冷静に見極める力です。

第2章|買い下がりのメリットとリスク
ナンピンの王道が「買い下がり(アベレージダウン)」です。
価格が下がるごとに段階的に買い増し、平均取得単価を下げていく方法です。
✅買い下がりのメリット
ポイント | 説明 |
平均取得単価を下げられる | 価格が下がったときに買い増すことで、全体の取得価格を下げる効果がある。 |
小さなリバウンドでも利益が出る | 株価が少し戻っただけで損益がプラスになる可能性が高まる。 |
割安株を拾えるチャンス | 一時的に売られた優良株を安値で拾える「バーゲンハンティング」が可能。 |
たとえば、高配当株が市場の調整などで10%下落したタイミングは、利回りが上昇するチャンスでもあります。
📈「買い下がり」は、冷静な銘柄分析とメンタルの強さがモノを言う世界です!
❌買い下がりのデメリット
ポイント | 説明 |
下落トレンドが続くと損失が拡大 | 「落ちるナイフを掴む」ような展開になるリスクがある。 |
資金の拘束リスク | 何度も買い増していくうちに資金を使い切り、他の投資チャンスを逃すことに。 |
メンタルの負担が大きい | 含み損が積み重なると、冷静な判断ができなくなる危険性がある。 |
多くの投資家が陥るのが「もう少し下がったら買おう」の心理ループ。
このまま下がり続けたら……と考えると、損切りも買い増しもできない塩漬け状態になりかねません。
第3章|買い上がりの戦略と注意点
買い上がり(アベレージアップ)は、株価が上昇している時にさらに買い増す戦略です。
いわゆる「勝ち馬に乗る」投資であり、強気相場での活用に向いています。
✅買い上がりのメリット
ポイント | 説明 |
上昇トレンドに乗れる | 成長企業やテーマ株が上昇基調にあるとき、利益を最大化しやすい。 |
損切りもしやすい | 含み益があることで、調整がきても精神的余裕を持って判断できる。 |
成功している銘柄に集中投資できる | 「実力のある銘柄に資金を厚くする」のは合理的な戦略。 |
特に上昇トレンドが継続しているS&P500やNASDAQ構成銘柄などでは、買い上がりは有効です。
❌買い上がりのデメリット
ポイント | 説明 |
平均取得単価が上がる | 高値掴みになりやすく、天井付近で買ってしまうリスクがある。 |
天井が読みにくい | 「もう高いのでは?」という不安の中で買うには覚悟が必要。 |
ポジションが膨らみ過ぎる | 過信して買い過ぎると、下落時の損失も拡大しやすい。 |
買い上がりは、トレンドが継続する前提での戦略です。
そのため、業績・市場テーマの強さなどを常にチェックしておく必要があります。


第4章|孫子に学ぶ「撤退」の美学:塩漬けと戦わない投資
孫子曰く:「兵は拙速を聞くも、久留の利を聞かず。」
この言葉は、戦いにおいて「素早く勝負をつけた戦術は語られるが、長期戦で利益を得た例はほとんど聞かない」という教訓です。
投資でもまったく同じ。
✅「塩漬け」は時間も資産も奪う
ナンピンは戦略次第で武器になりますが、撤退ライン(損切りライン)を決めずに買い増し続けると資産も時間も失われます。
特に、以下のような状態は「投資ではなく投機」に近づきます。
- 業績が悪化しているのに「戻るはず」と期待して買い続ける
- 配当利回りだけを見て、赤字企業に手を出す
- 信用倍率が高すぎて、需給の反動でさらに下落
✅機動力ある投資とは
孫子の教えにならえば、常に「最悪のシナリオ」を想定した上で、撤退ラインと買い増しタイミングを明確にしておくことが重要です。
「損切り=負け」ではなく、撤退は戦略です。

第5章|ナンピン前に必ずチェック!ファンダメンタル指標の完全解説
ナンピンを成功させるためには、「なぜ株価が下がっているのか?」の分析が欠かせません。
以下に、特に重要なファンダメンタル指標を一覧でまとめました👇
指標名 | 内容 | ナンピン時のチェックポイント |
配当利回り | 配当 ÷ 株価 | 4%以上が目安。ただし急騰時は“罠”もある。 |
配当性向 | 配当 ÷ 純利益 | 50〜70%が安心ゾーン。80%超えは減配注意。 |
EPS(1株利益) | 利益の伸び | 安定 or 増加傾向ならOK。減少傾向はNG。 |
売上・利益推移 | 企業の地力 | 一時的下落か、長期の衰退かを判断。 |
ROE/ROA | 収益効率 | ROE10%以上あれば強い。 |
自己資本比率 | 財務安定性 | 40%以上で健全。20%以下は危険信号。 |
有利子負債比率 | 借金依存度 | 100%以下が望ましい。 |
営業キャッシュフロー | 実際の資金流入 | 安定して黒字かどうかが重要。 |
✅特に重視すべき3指標
① 配当性向
表面利回りが高くても、利益の大半を配当に回していると減配リスクが高くなります。
80%以上の配当性向は「無理して払っている」可能性大。
② 営業キャッシュフロー(C/F)
利益が黒字でも、営業キャッシュフローがマイナスなら要注意です。
実際にお金が回っていない会社は、配当の継続も不安定。
③ EPSの推移
毎年のEPSが成長していればOK。
逆にEPSが減っているのに増配している会社は、帳尻合わせの可能性があります。
第6章|“危ない高配当株”の見分け方と注意すべき兆候
高配当株はナンピン戦略に適しているように見えますが、「配当利回りが高い=優良株」とは限りません。
中には、投資家を惹きつける“罠の高配当”も存在します。
❌こんな高配当株は要注意
- 配当利回り6%以上だが、配当性向が100%超え
- 営業CFが赤字
- EPSが3期連続で下落
- 自己資本比率20%未満
- ROEが5%未満
これらの条件に1つでも当てはまれば、高配当の見せかけだけで実態が追いついていない可能性があります。
⚠ いくら利回りが高くても、「利益なき配当」はいずれ破綻します。
第7章|信用倍率(需給分析)の活用術:買い下がり戦略の“見えない壁”を読む
ナンピンを行う際、企業の中身(ファンダメンタル)だけでなく、市場の動き=需給を読むことも極めて重要です。
そこで登場するのが「信用倍率」。
✅信用倍率とは?
信用倍率 = 信用買残 ÷ 信用売残
- 信用買残:将来売られる予定の株数
- 信用売残:将来買い戻される予定の株数
📊信用倍率からわかる市場の空気
信用倍率 | 状態 | 投資家心理 |
1倍未満 | 空売り多め | 弱気・将来的な買戻しで上昇期待あり |
1〜3倍 | 安定 | 中立〜穏やかな期待感 |
5倍超 | 買い残多すぎ | 強気すぎる・反動に注意 |
✅「信用倍率が高い=買いが殺到」だが…
- 一見強気に見えるが、高値で買っている投資家が多い状態
- 株価が下がると、投げ売りが連鎖しやすい=急落リスク
第8章|ファンダ × 需給で“買い下がり向き”優良株を探す方法
「良い企業なのに売られ過ぎている」──そんな銘柄は、まさに買い下がりの絶好チャンスです!
✅チェックポイントまとめ
指標 | 条件 | 理由 |
配当利回り | 4%以上 | 高配当戦略に合致 |
配当性向 | 70%以下 | 減配リスクが低い |
ROE | 10%以上 | 収益力が高い |
営業CF | 3期連続黒字 | 資金繰りの安心感 |
EPS成長 | 右肩上がり or 安定 | 利益の質が高い |
自己資本比率 | 40%以上 | 倒産リスクが低い |
信用倍率 | 1〜3倍 or 1倍未満 | 過熱感なし・買戻し圧力あり |
この7条件に合致する銘柄は、“一時的な押し目”であり、反発しやすい構造が備わっています。

第9章|注目のナンピン候補3銘柄【2025年版】
ここでは、信用倍率とファンダを総合的に分析して選んだ“買い下がり向き”銘柄を3つ紹介します!25年7月現在
① クレハ(4023)
指標 | 内容 |
配当利回り | 約6.8% |
PBR | 約0.57倍(割安) |
配当性向 | 約82.5%(やや高め) |
信用倍率 | 約1.3倍前後(過熱感なし) |
🟢【評価】:高利回り&割安+需給バランスも◎。配当性向は少し高いが、営業CFも黒字で安心感あり。
② 新家工業(7305)
指標 | 内容 |
配当利回り | 約6.4% |
PBR | 約0.72倍 |
配当性向 | 約68% |
信用倍率 | 約1.5倍(安定的) |
🟢【評価】:製造系で景気敏感だが、利益水準・財務健全性・需給どれも好バランス。
③ 青山商事(8219)
指標 | 内容 |
配当利回り | 約6.1% |
PBR | 約0.59倍 |
配当性向 | 約69% |
信用倍率 | 約1.1倍(非常に落ち着いている) |
🟢【評価】:株主優待あり、配当水準も高く、需給良好。小売再編の流れでも一定の立ち位置を確保。
✅3銘柄比較まとめ
銘柄名 | 配当利回り | PBR | 配当性向 | 信用倍率 | 総合評価 |
クレハ | 6.8% | 0.57 | 82.5% | 約1.3倍 | ◎(やや攻め) |
新家工業 | 6.4% | 0.72 | 68% | 約1.5倍 | ◎(守備型) |
青山商事 | 6.1% | 0.59 | 69% | 約1.1倍 | ◎(安定型) |
次回(最終章)では、以下をまとめます!
- 全体のまとめ&戦略的ナンピンの鉄則
- ナンピン失敗を防ぐマイルール集
- 読者への提案「あなたに合ったナンピンは?」
第10章|まとめ&戦略的ナンピンの極意──「感情」ではなく「ルール」で買い下がれ!
ここまで、ナンピン買いの基本から実践まで一貫して解説してきました。
最後に、この記事の要点をまとめながら、**“戦略としてのナンピン”をどのように使いこなせば良いのか?**を考えていきましょう。
✅ナンピン戦略の比較表(総まとめ)
特徴 | 買い下がり | 買い上がり |
平均取得単価 | 下がる | 上がる |
精神的余裕 | 少ない | 比較的ある |
利益化まで | 反発時に早期化 | トレンド継続で伸ばせる |
主なリスク | 落ちるナイフ・塩漬け | 高値掴み・過信での損失 |
適した相場 | 一時的下落局面 | 上昇トレンド中 |
向いている銘柄 | 高配当・安定収益株 | 成長・テーマ株 |
📘ナンピンを「投資の武器」にする3原則
1. 感情で動かない!必ず“買い増しルール”を持つ
- 「○%下落ごとに買う」「この水準まで落ちたら撤退」など、事前のルール化が大切
- 感情で動くと、塩漬け&過剰投資になりがち
2. ファンダ+需給の両軸でチェック
- 配当性向・営業C/F・EPSなどの財務指標
- 信用倍率・売残の推移などの需給指標
→ 両方が整ったときこそ“勝てるナンピン”
3. 適切な銘柄選定がすべて
- そもそも“ナンピンに値する企業か?”を見極める
- 成長性・財務健全性・需給の余裕が揃ってこそ


🎯ナンピン失敗を防ぐ「マイルール集」
シーン | ルール例 |
購入判断時 | 必ずファンダ6項目をスクリーニング通過していること |
買い下がり | 株価が10%下落ごとに1回まで。3段階まで |
撤退ライン | 株価が決算で業績悪化 or 財務が崩れたら即撤退 |
ポジション管理 | 1銘柄の最大投資額は全資産の5%まで |
精神安定策 | ナンピン実行時には「成功確率」「撤退条件」を書き出しておく |
👤提案:「あなたに合ったナンピン戦略」を選ぼう
投資家にはそれぞれ性格とスタイルがあります。
- 慎重派 → 新家工業型(守りのナンピン)
- 中庸型 → 青山商事型(安定配当+優待付き)
- 攻めの投資家 → クレハ型(高配当×需給期待)
自分がどのタイプかを把握し、合ったナンピンスタイルを選ぶことが、成功の近道です。
📝最後に:ナンピンは「リスク」ではなく「選択肢」
ナンピンは一歩間違えれば「大火傷」にもなりえます。
しかし、正しい知識・ルール・分析があれば、「買い増しによる戦略的な収益最大化」も可能です。
ナンピンを「仕方なく行う損失補填の手段」ではなく、
**「戦略的に使いこなす資本運用の手段」**に昇華させましょう。
そして、孫子の言葉をもう一度思い出してください。
「兵は拙速を聞くも、久留の利を聞かず」塩漬け株に長居せず、速やかに仕掛け、速やかに見切る。
これこそが、勝ち続ける投資家に共通する“攻守の美学”です。


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