── 含み益・税金・追加資金・買い直しタイミングまで徹底解説(2025年版)
◆ はじめに:NISAへの“移行”という悩ましいテーマ
最近は、多くの個人投資家が 「特定口座で持っている株を NISA に移したい」 という相談を寄せています。
理由はとてもシンプルです。
- 配当金を非課税にしたい
- 長期投資したい銘柄は NISA で保有したい
- 将来の値上がり益を無税にしたい
- せっかくなら NISA 枠を有効活用したい
こうした理由から、「特定口座の株をそのまま NISA に移せないか?」と考える人が多いのです。
しかし、実際には多くの誤解があります。
結論から言うと、特定口座の株を NISA に“直接移す”ことはできません。
これを知らずに、「移管する方法はどこ?」と探し続けている人も少なくありません。
本記事では、SBI証券を例に、
- 何ができて、何ができないのか
- どうすれば実質的に NISA に移行できるのか
- 売却の税金はどうなるのか
- 同じ株数を買い直すには追加資金が必要な理由
- 実際の買い直し戦略とタイミング
これらを“完全に分かりやすく”整理していきます。
投資歴が長い人ほど誤解しがちなポイントでもあるため、ぜひ最後までご覧ください。
◆ 第1章:特定口座→NISA の「移管」は制度上存在しない
まず押さえておきたい最重要ポイントはこれです。
❌ 特定口座の株を NISA へ“移す”という制度は存在しない
SBI証券でも明確に次のように案内されています。
特定口座(一般口座)の株式を NISA 口座に直接移すことはできません。
一度売却し、新たに NISA 口座で買う必要があります。
つまり、投資家がよく言う「移したい」という表現の正体は、
→ 正しくは “売却+買い直しによる実質移行”
これを理解していないと、手続きを誤り、
「思ったより税金がかかった」「同じ株数を買えなかった」などの失敗につながります。
◆ 第2章:売却→買い直しには“税金”という落とし穴がある
ここが今回のテーマの核心です。
● 特定口座で株を売却すると
- 含み益(利益)がある場合は 課税(約20.315%) が発生する
- その税金は売却代金から自動的に差し引かれる
たとえば、以下のようなケースを見てみましょう。
【例①】株価1,000円・100株・取得価格800円 のケース
■ ① 売却時
- 売却代金:100,000円
- 利益:20,000円
- 税金:20,000 × 20.315% = 4,063円
■ ② 手元に残る(買い付け可能額)
100,000円 − 4,063円
= 95,937円
しかし…
【例②】NISAで100株買うには?
株価:1,000円
必要資金:100,000円
❌ 足りない
必要額:100,000円
現金:95,937円
不足:4,063円
ここで投資家が気づくわけです。
「あれ?売ったのに同じ株数が買えない…」
そうです。
含み益がある株ほど、税金が引かれるため“資金が目減りする” のです。
これが “NISA買い直しに追加資金が必要な理由” です。
◆ 第3章:同じ株数を買いたいなら“追加資金”が必須
逆に言うと、とても簡単な数式で表現できます。
🧮 同株数を買い直すのに不足する金額=売却益 × 20.315%
上の例では
利益20,000円 × 20.315%=4,063円
これが必要です。
含み益が大きいほど、不足額は大きくなります。
◆ 大きな含み益があるほど NISA 移行しづらくなる理由
- 利益が大きい
- 税金も大きい
- 再買付に必要な資金も大きい
たとえば利益50万円なら
税金だけで約10万円必要になります。
これが“含み益の大きい株ほど移しにくい”と言われる理由です。
◆ 第4章:NISA移行に向いている銘柄・タイミング
追加資金が必要という現実を踏まえて、
どんなときに“売ってNISAで買い直す”べきか。
CPが結論を整理します。
🔵 【向いているケース①】含み損が出ている銘柄
これは最強のパターンです。
- 税金がかからない
- 売却代金=買い直し資金として満額使える
- 同株数を買っても資金不足が出ない
つまり…
◇ “含み損のときは、NISAに移す大チャンス”
これは投資家があまり意識しない、
実はとても合理的な判断です。
🔵 【向いているケース②】株価が調整(下落)したタイミング
株価が5〜10%下がっただけで、
- 同じ資金で多く買える
- 同株数を買うための追加資金が減少
- NISA枠を効率的に使える
このメリットが生まれます。
🔵 【向いているケース③】長期保有が前提の銘柄
- 高配当株
- 成長株
- 増配株(累進配当)
- 海外売上比率が高い企業
こうした銘柄は NISA で保有する価値が高いです。
配当が非課税になる効果はとても大きく、
長期保有での複利効果も最大化します。(これが本筋と考えています。)
◆ 第5章:買い直しの実務注意点(SBI証券のルール)
SBI証券の仕様として、次の点に気をつけてください。
❗ ① 売却→買付は「同時」は推奨されない
同一銘柄を同日に売って買うと、
監視システム上「仮装売買」判定の対象になり得ます。
安全策:
→ 売却が約定してから時間を置いて買う
→ 株数や金額を微妙にずらす
❗ ② 売却代金が買付余力に反映されるまでタイムラグがある
- 市場時間帯
- 取引方法(PTSなど)
によって反映に時間差が出ることがあります。
「売った瞬間に買い直す」はできない場合があります。
❗ ③ NISA枠を消費するので枠管理に注意
- 成長投資枠
- つみたて投資枠
残り枠次第では買い戻しできない可能性があります。
◆ 第6章:最適な“実質NISA移行”戦略(CP推奨)
CPがこれまでの投資相談で結論として推奨しているのは
次の3ステップ戦略です。
◆ ステップ①:売却候補銘柄を分類
分類基準:
- 含み損銘柄 → 即NISAへ移行候補
- 含み益小 → 小額の追加資金で移行可能
- 含み益大 → 移行コスト(税金)が大きいので慎重に
投資効率の観点から、
「含み損の銘柄」ほどNISAに移したほうが価値があります。
◆ ステップ②:買い直しタイミングを決める
推奨タイミング:
- 市場調整時
- 金利上昇時
- 決算後の下落
- 日経平均・S&P500の調整局面
NISAは長期投資向きなので、「高値掴み」を避けることが特に重要です。
◆ ステップ③:NISA枠は“最強銘柄”を優先して使う
優先度の高い銘柄:
- 累進配当 or DOE銘柄
- 10年以上保有する成長株
- 米国成長ETF(※成長投資枠)
- 優良インフラ株(電力・通信など)
逆に…
- リスクの高いテーマ株
- トレード目的の銘柄
これらに NISA を使うのは推奨されません。
◆ 最終章:同株数の買い直しは“追加資金が必要”と理解しておく
今回のテーマの本質はここにあります。
🟥 含み益がある限り、同株数を買い戻すには“税金分”の追加資金が必要
NISA移行の判断には、
- 税金
- 株価水準
- NISA枠
- 資金余力
- 投資目的(配当か、成長か)
このすべてを考慮する必要があります。
◆ まとめ:NISA移行は「ルールと戦略」を理解した人だけが成功する
最後にポイントをまとめます。
✔ 特定口座→NISAの“移管”はできない
→ 売却+買い直しのみ
✔ 含み益があると売却代金から税金が引かれ資金不足になる
→ 同株数の買い直しには追加資金が必要
✔ 含み損銘柄は“移行の大チャンス”
✔ 株価が下がったタイミングの買い直しが最も効率的
✔ NISA枠は長期優良銘柄に優先的に使う
2026年のNISA口座枠への投資戦略の一つとして参考にしていただけると嬉しいです。😊







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