◆ はじめに:NVIDIA好決算が引き起こした「世界の温度変化」
米国の半導体大手 NVIDIA(エヌビディア) が市場予想を上回る決算と強気のガイダンスを発表し、世界の株式市場は再び熱気を帯びました。
- 売上高:約570億ドル(予想超え)
- 次四半期ガイダンス:約650億ドル(これも予想超え)
- CEOコメント:「AIエコシステムは構造的に拡大している」
その結果、日本株も爆騰。
日経平均はついに “5万円台” を回復。
さらに為替は円安方向へ加速し、債券利回りは上昇(=債券価格は下落)。市場全体としては「リスクオン」の空気が一気に強まりました。
しかし――
年末にかけて投資家が忘れてはいけないのが、
◆ 年末恒例「損益通算売り」&「利益確定売り」という“逆風”の存在
どんなに市場が強くても、年末は必ずと言っていいほど 利益調整の売り が出てきます。
特に以下の3つは毎年ほぼ必ず発生します。
●① 損益通算のための損出し売り
利益が出ている投資家が、含み損銘柄を年末に売って税金を減らす動き。
●② 利益確定の売り
今年の利益を確定し、翌年以降の税金負担を調整したい投資家・法人の行動。
●③ ファンドの窓掃除(Window Dressing)
投資信託や機関投資家が、決算に向けてポートフォリオを整理する動き。
これらが 上昇相場でも突然の「押し目」や「急落」を生みやすい原因 になります。
つまり──
今の強気相場は、構造的に強い部分を持ちながらも、
年末特有の“逆風”が混じり込むハイブリッド相場 と言えます。
◆「今は強気だけれど、少し慎重さを混ぜるべき時期」
ウォーレン・バフェットの名言を思い出しましょう。
「他人が貪欲なときに慎重に、他人が慎重なときに貪欲に」
今、市場は“貪欲”です。
AI関連に熱狂し、円安に追い風が吹き、日経平均も過熱気味。
こういう時こそ、少しだけ冷静な視点を持つことが大切です。
◆ NVIDIA決算は「バブル回避の証拠」か?
今回の決算は明らかに強い数字でした。
しかし、ここで読者の皆さんに知っておいてほしいことがあります。
■ AIバブルの本質
「AIバブル」とよく言われますが、シリコンバレーの研究者たちはこう言います。
- AIはバブルではなく“構造変化”の初期ステージ
- 企業のAI投資はまだ加速段階で、ピークではない
つまり、AI関連企業の成長は今後数年〜10年スパンで続く可能性があるわけです。
バブルではなく、テクノロジー革命の序章。
NVIDIAの決算は、この見方を裏付けました。
◆ 日本株が上がる「3つの理由」
読者の方にとっては「なぜ日本株が?」と思われるかもしれません。
理由は明確です。
●① 円安が止まらない
円安は輸出企業に強烈な追い風です。
- 輸出価格は据え置きでも円ベースの利益が膨らむ
- トヨタ、ソニー、機械メーカーなどの利益上振れインパクトが大きい
- 海外投資家から見て日本株は割安で魅力的に映る(円安のため)
●② 日本の企業利益が構造的に上昇
岸田政権の「資本市場改革」や、企業の自社株買い・増配の加速。
これが日経平均を長期的に押し上げています。
●③ 世界の資金が「安全な市場」を求めている
米国は大統領選で政治リスクが高まっています。
中国は景気不安が続いています。
その中で日本市場は、
- 政治リスクが小さい
- 経済の基調は安定
- 大企業の財務は超健全
という理由から、「避難先」として選ばれます。
◆ 年末に向けた相場の“3つのシナリオ”
年末に向かって考えられる動きは、以下の3つに集約できます。
■ シナリオA:強気継続(AI+円安+日本の構造改革)
- NVIDIA好決算 → AI銘柄に資金流入
- 円安継続 → 日本輸出株が強い
- 日経平均は5万円台を固め、さらなる高値へ挑戦
- 債券は売られ、利回り上昇
→ 「攻める」ならこの流れに乗る選択肢あり
■ シナリオB:年末調整での一時的な下落
- 損益通算売り
- 利益確定
- ファンドの窓掃除
- 債券利回り上昇による株価調整
→ 「押し目買い」のチャンスが到来
■ シナリオC:横ばいを経て強い銘柄だけが選別される
最も現実的なのはこのパターンです。
- AI・半導体・輸出など強いテーマは上昇
- 内需株・割高株は売られやすい
- マーケット全体は強弱が混在しつつ、年明けから再び上昇相場へ
◆ 読者にお伝えしたい「5つの実践ポイント」
ここからが、読者の皆さんに最も役立つ「具体的行動」です。
① 成長テーマ(AI・半導体)は“完全に外すべきではない”
NVIDIAの数字を見ると、
- AIサーバー
- 半導体
- データセンター
- クラウド
- AI関連ETF
これらのテーマは、まだ成長の途中です。
長期テーマとして一定の割合を組み込む価値は十分にあります。
② 日本株は「輸出+半導体関連」を軸に強気維持
円安は当面止まりにくい状況。
- 輸送機械(自動車など)
- 精密機器
- 半導体製造装置
- 化学・素材
円安の恩恵を受ける企業はまだ力強い動きを見せるでしょう。
③ ただし“今”全力にならない。キャッシュは残す
年末の調整は必ず来る可能性があります。
そのため、
●キャッシュ比率 10〜20% ほど確保がおすすめ
理由:
- 調整が来た時に買える
- 心理的に余裕が生まれる
- 急落に巻き込まれて狼狽しにくい
④ 債券は短期的に弱いが「利回り投資」としては魅力的
債券価格は下落していますが、利回りは上昇中。
- 米国債
- 日本国債
- 社債
- 債券ETF(BNDなど)
中長期の利回り投資としてはむしろチャンスが拡大しています。
⑤ 為替ヘッジも検討
円安が続く可能性がある一方、逆流(円高)も常に起こり得ます。
- 為替ヘッジ付きファンド
- 外貨預金
- 円貨MMF
- 為替変動耐性のあるETF(HDV系など)
両面で備えておくことが重要です。
◆ “押し目待ち”のための3つのサイン
年末での押し目を狙う読者に向けて、以下のシグナルを共有します。
■① 日米の債券利回りが急上昇した時
株式市場は利回り上昇に弱いです。
利回り急伸=株の調整シグナル。
■② 円高方向に急反発した時
円高は日本株に逆風です。
急激な円高が出た時は押し目到来の可能性。
■③ 海外投資家(投資主体別売買動向)が日本株を売り越しに戻った時
これは「押し目」のサインになりやすい。
◆ 孫子の兵法 × 投資の示唆
「兵は拙速を貴ぶ」
→ しかし拙い判断での“焦った行動”は危険という意味も含む。
つまり、
●相場が盛り上がっても焦らない。
●調整が来ても慌てない。
●時間を味方につける。
これは山崎元氏が繰り返し語る「時間と分散の重要性」と完全に一致します。
◆ 今後の構え
- 今の強気相場に“適度に乗る”
- ただし年末特有の調整を見越してキャッシュも残す
- AI・半導体テーマは長期で持つ
- 円安恩恵株の強さは続く
- 債券は利回り投資として魅力が増す
- 年末の押し目は“買い増しチャンス”
- 2025年〜2026年はAI革命の本格普及期
読者の方にとっても、2025年は「無視してはいけない相場」になります。
◆ 最後に:2025年の相場は“AI×円安×構造改革”の三重奏
今年は間違いなく 歴史的な相場の転換点 に位置しています。
- AI革命の本格始動
- 円安の追い風
- 日本企業の増配・自社株買い
- 世界の資金が日本に戻ってくる流れ
短期的には年末の利益確定売りで揺れますが、
中長期で見ればまだまだ期待できるマーケットです。
読者の皆さんには、
「攻める部分」と「守る部分」の両方を持つこと
そして年末の調整に備え、キャッシュを少し持っておくこと
をぜひ意識していただきたいと思います。😊




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