円安シナリオが崩れた理由

― ドル主導相場と金下落が示す“本当の転換点” ―

第1章|当初のメインシナリオは「財政拡張=円安」だった

衆院選で高市自民が大勝。
市場は当然のようにこう考えました。

  • 積極財政
  • 国債増発
  • 財政赤字拡大
  • 国債利回り上昇
  • 円安進行

これは理論的には極めて自然な流れです。

通貨は“信用”で成り立ちます。
財政規律が緩む国の通貨は売られやすい。

しかし、現実は逆方向へ動きました。

ドル円は円高方向へ振れ、
さらに安全資産であるはずの金価格まで下落基調。

なぜなのか。

ここからが本質です。


第2章|為替は「日本」ではなく「相対評価」で決まる

ドル円は

日本が弱いかどうか

ではなく

日本 vs 米国の“どちらが相対的に強いか”

で決まります。

仮に日本が財政拡張をしても、

  • 米国がそれ以上に減速
  • 米金利が低下
  • ドル資産が売られる

なら円高になります。

今起きているのは、
「ドル主導の調整」の可能性が高い。


第3章|米国側で何が起きているのか?

今回の雇用統計は強めでした。

そのため一時的に

  • 利下げ期待後退
  • 米金利反発
  • 円高一服

となりました。

しかし市場は単月データでは動きません。

構造的に見れば、

  • 失業率はじわじわ上昇
  • クレジット延滞率増加
  • 商業不動産問題
  • 政府債務拡大

といった“遅行型のリスク”が積み上がっています。

特に重要なのは米国債の増発。

米財政赤字はGDP比で過去最大級。
双子の赤字(財政+経常)を抱える構造です。

これはドルの中長期的な重石になります。


第4章|金利差の縮小観測が円高を生む

為替の最重要要素は金利差。

もし

  • FRBが年内利下げに動く
  • 米10年金利が低下
  • 日銀は緩やかに正常化

となれば、金利差は縮小方向です。

金利差縮小=ドル売り円買い。

今はこの“期待”が先行している可能性が高い。


第5章|なぜ金(ゴールド)まで下落しているのか?

通常、円高局面やリスクオフでは金は買われます。

しかし現在、金価格も軟調。

ここが非常に重要です。

金価格は

実質金利 × ドル指数

でほぼ決まります。

米実質金利(名目金利-期待インフレ)が上昇すると、
利息を生まない金は売られやすい。

今回の雇用統計を受けて

  • 利下げ期待後退
  • 実質金利上昇
  • 金売り

という流れが出ています。

つまり今は

“純粋なリスクオフ”ではなく
“ドル・金利主導の調整”

の可能性が高いのです。


第6章|安全資産の選好先が変わっている

従来のリスクオフでは

  • 米国債

が買われました。

しかし今は

  • 円は買われる
  • 金は売られる
  • 米国債は方向感が不安定

という分裂状態。

これは

市場が「景気後退」ではなく
「流動性転換」を織り込み始めた

可能性を示唆します。


第7章|ポジションの巻き戻し圧力

投機筋は長らく円ショートを積み上げていました。

円安トレンドが崩れると、

  • ショートカバー
  • ストップロス連鎖
  • 急速な円高

が起こります。

為替はファンダメンタルより
ポジション調整で動く局面が多い。

今はその段階の可能性があります。


第8章|日本は本当に財政危機なのか?

重要な冷静視点。

日本は

  • 世界最大級の対外純資産国
  • 経常黒字国
  • 国債の大半を国内保有

ギリシャ型の外貨依存国家ではありません。

財政問題は確かに長期リスクですが、

“今すぐ通貨危機”

の状況ではない。

一方、米国は

  • 外国資本依存
  • 国債消化問題
  • 格下げ懸念

を抱えています。

相対比較でドルが弱含むのは
不自然ではありません。


第9章|今後の3シナリオ

シナリオA(40%)

米景気減速 → 利下げ → ドル安 → 140円方向

シナリオB(35%)

インフレ再燃 → 金利高止まり → 160円再挑戦

シナリオC(25%)

株式急落 → リスクオフ円高 → 135円台

金価格は

  • 実質金利低下なら反発
  • 実質金利上昇なら軟調

が基本線です。


第10章|投資戦略のヒント

  • 米債ETF(例:長期米国債)
  • 高配当株
  • VIXヘッジ

を組み合わせる戦略は合理的です。

特に米10年金利が4%割れへ向かうなら、
長期債は妙味が出てきます。

逆に

  • 実質金利上昇
  • ドル反発

なら金は調整継続の可能性。


第11章|金下落が示す“まだ本格危機ではない”サイン

金が急騰していないということは、

市場はまだ

システミックリスク(金融危機)

を見ていない。

今は“循環的なドル調整”段階。

しかし、もし

  • 米債需給悪化
  • VIX急騰
  • 信用スプレッド拡大

が起きれば、
金は再び本格上昇へ転じます。


最終まとめ

今回の円高は

「日本が強い」からではなく

ドルのピークアウト観測

が主因の可能性が高い。

金下落は

実質金利上昇が主導

している。

為替は

  • 金利差
  • 景気差
  • 資金フロー
  • ポジション

で動きます。

今は転換点の初期段階かもしれません。

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