高額療養費制度は、医療費が高額になった際に、自己負担額が一定の上限を超えた分を公的医療保険から支給することで、家計の負担を軽減する制度です。
自己負担限度額
自己負担限度額は、年齢や所得状況に応じて設定されています。70歳未満の場合、以下のように区分されます。
- 区分ア(年収約1,160万円以上):252,600円+(総医療費-842,000円)×1%
- 区分イ(年収約770万~約1,160万円):167,400円+(総医療費-558,000円)×1%
- 区分ウ(年収約370万~約770万円):80,100円+(総医療費-267,000円)×1%
- 区分エ(年収約370万円以下):57,600円
- 区分オ(住民税非課税者):35,400円
例えば、年収約370万~約770万円の方が総医療費100万円の治療を受けた場合、自己負担限度額は87,430円となり、窓口で30万円を支払った場合、差額の21万2,570円が高額療養費として払い戻されます。
申請方法
高額療養費を受け取るためには、加入している公的医療保険の保険者に申請が必要です。申請には、医療機関等の領収書や必要書類を添付し、所定の申請書を提出します。申請から支給までには、一般的に3か月以上かかることがあります。
限度額適用認定証の活用
入院や手術などで高額な医療費が予想される場合、事前に「限度額適用認定証」を取得し、医療機関の窓口で提示することで、窓口での支払いを自己負担限度額までに抑えることができます。この認定証は、加入している公的医療保険の保険者に申請することで取得可能です。
注意点
高額療養費制度は、公的医療保険が適用される医療費のみが対象となります。差額ベッド代や先進医療にかかる費用、入院時の食事代など、保険適用外の費用は対象外となり、全額自己負担となるため注意が必要です。
また、2025年8月から自己負担限度額の引き上げが予定されており、現役世代の保険料負担を抑えることを目的としています。具体的な引き上げ額は所得区分によって異なります。
高額療養費制度は、医療費の負担を軽減する重要な制度です。医療費が高額になる場合は、早めに手続きを行い、適切な支援を受けるよう心掛けましょう。
高額療養費制度改正案は、2025年8月から段階的に自己負担限度額を引き上げることを柱に
改正の主なポイント
- 自己負担限度額の引き上げ:収入に応じて自己負担限度額が一律に引き上げられます。例えば、年収約370万~770万円の中間所得層では、現行の月額自己負担上限が約80,100円から、2025年8月には88,200円に引き上げられます。
- 所得区分の細分化:2025年8月以降、所得区分が5区分から13区分に細分化され、高所得者ほど上限額が高くなるよう再設定される予定です。
長期療養者への配慮
政府は、長期にわたり療養を続けている患者への負担増を懸念する声を受け、修正案を検討しています。具体的には、直近1年で4回以上高額療養費を利用している「多数回該当」の患者については、現行の上限額を据え置く方針が示されています。
議論の状況
この改正案は、2025年の政府予算案に盛り込まれ、現在国会で審議中です。しかし、患者団体などからは、負担増による治療中断や受診抑制の懸念が指摘されており、慎重な議論が求められています。

高額療養費制度の改正案による、患者へのメリットとデメリット
メリット
- 現役世代の保険料負担の軽減:自己負担限度額の引き上げにより、医療費全体の公的負担が抑制され、その結果、現役世代の健康保険料の上昇を抑える効果が期待されます。
- 医療費控除を受けやすくなる可能性:自己負担額が増加することで、年間の医療費が医療費控除の対象となる金額(通常10万円)を超えやすくなり、所得税や住民税の軽減につながる可能性があります。
デメリット
- 窓口での医療費負担の増加:自己負担限度額の引き上げにより、医療機関での支払い額が増加します。特に中間所得層では、月額の自己負担上限が約80,100円から88,200円に引き上げられるため、負担増となります。 世帯合算しても恩恵を受けられない可能性:世帯内で複数の医療費が発生しても、自己負担限度額の引き上げにより、合算しても高額療養費の適用を受けられないケースが増える可能性があります。
- 多数回該当の上限額引き上げの可能性:直近12か月で3回以上高額療養費の支給を受けた場合、4回目以降の自己負担限度額がさらに引き上げられる可能性があり、長期療養者の負担が増加する懸念があります。
これらのメリットとデメリットを踏まえ、患者自身が自身の医療費負担を見直し、必要に応じて民間の医療保険の活用なども検討することが重要です。
まとめ
高額療養費制度の改正案は、医療費負担の公平性と持続可能性を図るためのものですが、患者への影響も大きいため、国会での慎重な審議と十分な配慮が必要とされています。
高齢化による医療費負担が現役世代にのしかかる仕組みになっており、少しでも現役世代に付加をかけずに高額な医療費が必要な患者さんの医療費の限度額を抑える事が出来ないのか、様々な議論が必要です。必要な所に税金を使用する事です。


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