好決算なのに株価暴落はなぜ起きる?AI半導体株の決算で優先すべき10の指標

「売上高も利益も過去最高なのに、なぜ株価が10%以上下がるのか」「コンセンサス(アナリスト予想の平均)を上回った好決算なのに、なぜ市場は評価しないのか」——AI半導体株を持っていると、こうした疑問に何度もぶつかります。

2026年に入ってからも、日米の半導体関連企業が市場予想を上回る決算を出した直後に、株価が二桁下落する場面が繰り返されました。「業績と株価は連動しないのか」「決算後の急落は買い場なのか」「そもそも決算資料のどこから見ればよいのか」と戸惑った方も多いはずです。

理由はシンプルです。株価は「現在の業績」ではなく「将来の業績変化」を先に織り込むからです。決算で判明するのは過去3か月の実績ですが、株価はその何か月も前から強気な将来像を前提に買われています。だから実績が良くても、将来像が上振れしなければ株価は下がり得るのです。

この記事では、決算発表後に慌てて売買するのではなく、確認すべき数字を優先順位の高い順に判断できるようになることを目標に、決算の見方を整理します。

※本記事の数値は2026年7月30日時点で確認できた公開情報に基づいています。

好決算なのに株価が暴落するのはなぜか

決算発表後の株価は、業績の良し悪しだけでは決まりません。株価はおおまかに、次の掛け算で成り立っています。

株価 = 将来の1株当たり利益(EPS)× 市場が許容するPER

EPSは1株当たり利益、つまり利益を発行済株式数で割った数字です。PERは株価収益率といい、その利益に対して市場が何倍まで株価を評価するかを示します。

大事なのは、決算が良くてもPERが縮めば株価は下がるという点です。単純化した例で見てみましょう。

  • 決算前:予想EPS100円 × PER40倍 = 株価4,000円
  • 決算後:予想EPS110円 × PER30倍 = 株価3,300円

EPSは10%増えています。それでもPERが40倍から30倍へ縮小すると、理論上の株価は17.5%下がります。好業績と株価下落は、矛盾なく同時に起こり得るのです。

PERが縮む理由は業績以外にもあります。投資家の期待の低下、金利上昇、AI投資の持続性への疑問、決算前の上げ過ぎに対する利益確定売りなど、複数の要因が重なることが多いと考えられます。「好決算なのに株価下落」は、EPSではなくPERの側で起きているケースが少なくありません。

コンセンサスを上回っても売られる「期待値」の仕組み

決算を評価する基準は、少なくとも3つあります。

  1. 会社が公表している業績予想(会社計画)
  2. コンセンサス(アナリスト予想の平均。QUICKやIFISなどが集計)
  3. 市場参加者が実際に期待している非公式の期待値

株価が最も敏感に反応するのは、3番目の非公式な期待値です。これはどこにも公表されていません。

たとえば売上高のコンセンサスが100億円でも、決算前の1か月で株価が3割上がっていれば、市場は実質的に110億円や120億円を期待している可能性があります。実際の売上高が105億円なら、コンセンサスは上回っていますが強気な期待には届きません。その結果、「好決算だが期待外れ」と受け止められ、株価が下落します。

言い換えると、決算前の株価上昇率が高い銘柄ほど、決算のハードルも高くなりやすいということです。コンセンサスとの比較だけでなく、「この株価にはどこまでの業績が織り込まれているのか」を意識する必要があります。

なお、AI関連の需要そのものが終わったかどうかは別の論点です。この点については AI相場は終わらない。“半導体一極集中”だけが終わり始めた——TOPIX優位で読む日本株の資金循環 でも整理しています。

【1位】次四半期・通期ガイダンス

ガイダンスとは、企業が示す今後の売上高や利益の見通しです。決算で最も株価を動かしやすいのがこのガイダンスです。過去3か月の実績よりも、次の3〜12か月の見通しのほうが重要だと考えてください。

確認する項目は次の通りです。

  • 次四半期の売上高予想、EPS(または営業利益)予想
  • 通期の売上高・営業利益・EPS予想
  • 従来予想からの上方修正か下方修正か
  • ガイダンスの上限と下限(レンジ)
  • 為替、製品価格、供給能力などの前提条件

実例を見てみましょう。後工程装置のディスコは2026年7月23日、2026年4〜6月期の連結純利益が前年同期比44%増と好調だったことを発表しました。ところが同時に示した7〜9月期の純利益見通しは395億円(前年同期比23%増)で、QUICK集計の市場予想473億円を下回りました。株価は一時12.7%安まで売られたと報じられています。実績が良くても、次四半期ガイダンスが市場予想に届かなければ株価は急落しやすいのです。

逆のパターンもあります。アドバンテストは2026年7月29日、2027年3月期の通期予想を売上高1兆7,140億円(前期比51.9%増)、営業利益8,460億円(同69.5%増)へ大幅に上方修正しました。推論向けAI半導体のテスト需要が4月時点の想定を上回ったことが理由で、株価は翌30日に大幅反発しました。同社は2026年4月の本決算では前期実績が予想を上回った一方、新年度の利益計画が慎重で株価が下落しています。同じ会社でも、実績より計画が株価を動かしたわけです。

なお通期予想の据え置きも安心とは限りません。上期の進捗が良いのに通期を動かさないのは、下期を慎重に見ている可能性があります。上期実績を差し引いた下期の必要額を計算し、達成条件が厳しくなっていないか確認してください。東京エレクトロンが2027年3月期から通期予想の開示を半期開示へ変更したように、通期見通しを出さない企業も増えています。その場合は四半期ガイダンスと受注の情報がいっそう重要になります。

【2位】前年同期比ではなく前四半期比の成長率

半導体株の決算では、前年同期比だけで判断しないでください。前年が低迷していた場合、前年同期比では大幅な増収増益に見えやすいからです。見るべきは次の3つの並びです。

  • 前年同期比(YoY)
  • 前四半期比(QoQ)
  • 次四半期の会社予想

ケースA:前年同期比50%増/前四半期比2%増/次四半期予想は横ばい
見た目は高成長ですが、成長の勢いはすでに止まりかけている可能性があります。

ケースB:前年同期比30%増/前四半期比15%増/次四半期も15%増の予想
前年同期比の数字はAより低いのに、成長が継続または加速していると判断できます。

市場が評価するのはBです。参考として、NVIDIAが2026年5月20日に発表した2027年1月期第1四半期(2026年4月26日締め)の売上高は816億ドルで前年同期比85%増、前四半期比20%増。データセンター部門は752億ドルで前年同期比92%増、前四半期比21%増でした。前四半期比で二桁の伸びが続いているかが、AI半導体株では大きな判断材料になります。

【3位】売上高より粗利益率と営業利益率

粗利益率とは、売上高から製造原価を差し引いた粗利益が売上高に占める割合です。営業利益率は、本業でどれだけ効率よく利益を生んでいるかを示します。

売上が伸びていても利益率が低下している場合、次の要因が考えられます。

  • 製品価格の値下げ、競争の激化
  • 部材価格や製造コストの上昇
  • 新製品の立ち上げ費用
  • 製造歩留まり(良品率)の悪化
  • 低利益率製品の販売比率の上昇
  • 旧製品の在庫処分、顧客への値引きや販売奨励金

AI半導体企業は高いPERで評価されることが多いため、売上成長だけでなく高い利益率の維持が求められます。売上高が20%増えても粗利益率が数ポイント下がれば、将来の利益成長に疑問が生じます。

現状の水準を押さえておくと判断しやすくなります。NVIDIAの前掲第1四半期の非GAAP粗利益率は75.0%で、第2四半期も75.0%(±50ベーシスポイント)の見通し。Micron Technologyは2026年6月24日発表の第3四半期(2026年8月期)で非GAAP粗利益率84.9%、次四半期は約86%を見込むとしています。AMDは2026年5月5日発表の第1四半期(2026年12月期)で非GAAP粗利益率55%、次四半期は約56%の見通しでした。いずれも「維持または改善」の形で、ここが崩れる決算は警戒されやすくなります。

なお粗利益率やEPSにはGAAP(会計基準通り)と非GAAP(一時費用などを除いた調整後)があり、同じ企業でも数字が変わります。AMDの同四半期はGAAP1株利益0.84ドル、非GAAP1株利益1.37ドルでした。比較は必ず同じ基準どうしで行ってください。

【4位】受注高・受注残高・顧客の設備投資計画

日本の半導体製造装置や検査装置の企業では、今期の売上高よりも受注動向が重要になることがあります。東京エレクトロン、アドバンテスト、SCREENホールディングス、ディスコ、レーザーテックなどが代表例です(銘柄の推奨ではなく、業態の説明としての例示です)。

装置企業では、受注から売上計上まで数か月から1年以上の時間差があります。今回の売上が好調でも新規受注が減っていれば、半年後の売上が減速する可能性があります。逆に実績が市場予想に届かなくても、受注が増えていれば評価は分かれます。レーザーテックが2026年4月30日に発表した2025年7月〜2026年3月期の純利益は568億円(前年同期比8%増)で市場予想には届きませんでしたが、同時に2026年6月期の受注高見通しを従来の1,700〜2,200億円から2,000〜2,400億円へ上方修正しました。

確認する項目は次の通りです。

  • 受注高(その四半期に新しく受けた注文の金額)
  • 受注残高(まだ売上になっていない注文の残高)
  • それぞれの前四半期比・前年同期比
  • 受注残の消化期間(何四半期分あるか)
  • キャンセル率、納期の長短
  • 主要顧客の設備投資計画

受注残が積み上がっているだけでは不十分です。新規受注が続いているかを必ず見てください。受注残だけが厚く新規受注が細っている状態は、数四半期後の減速サインになり得ます。

【5位】AI売上の「量」ではなく「中身」

「AI関連売上が増えました」という説明だけでは、決算の質は判断できません。企業の種類ごとに見るべき中身が違います。

GPU・AIアクセラレーター企業

NVIDIAやAMDなどでは、次を確認します。

  • データセンター部門の売上高と前四半期比成長率
  • AIアクセラレーターの出荷数量と平均販売価格
  • 次世代製品への移行時期と立ち上がり
  • 製品供給の制約(作れないのか、売れないのか)
  • 大口顧客への依存度、中国向け売上
  • ネットワーク製品の成長

NVIDIAの第1四半期では、データセンターのうち計算用が604億ドル(前年同期比77%増)、ネットワークが148億ドル(同199%増)と開示されました。同じ「データセンター」でも中身の伸び方は異なります。

メモリ企業

Micron、SKハイニックス、Samsung、キオクシアなどでは、次を確認します。

  • HBM(広帯域メモリ。AI向けの高速メモリ)の売上高・出荷量・契約価格
  • DRAM価格、NAND価格の推移
  • 在庫日数、設備投資額
  • 次世代HBMの量産時期と顧客認証の状況
  • 中国メーカーの増産状況

メモリ企業では、業績が絶好調でも「価格上昇率がピークを迎えた」と判断された時点で株価が先に下がることがあります。実際、2026年第1四半期に前四半期比で9割超上昇したとされるDRAM契約価格は、第3四半期には上昇率が前四半期比10%台へ鈍化するとの予測が出ています。価格の水準ではなく上昇率の変化が株価を動かす点に注意が必要です。

半導体製造装置・検査装置企業

日本企業では、次を確認します。

  • AI向け売上比率、HBM向け需要
  • ロジック・ファウンドリー向け需要
  • 中国向け売上比率
  • 顧客の設備投資動向、受注残
  • 製品別の利益率

【6位】フリーキャッシュフローと設備投資

フリーキャッシュフロー(FCF)とは、本業で稼いだ現金から設備投資を差し引いて残る資金です。純利益やEPSは会計上の数字なので、それだけでは決算の質を判断できません。

  • 営業キャッシュフロー
  • 設備投資額とフリーキャッシュフロー
  • 在庫の増減、売掛金の増減
  • 株式報酬、自社株買い、借入金の増減

利益が増えているのに在庫と売掛金ばかり膨らみ、現金が増えていない場合は注意が必要です。逆に、売上高・営業利益・フリーキャッシュフローがそろって増えている企業は、比較的決算の質が高いと考えられます。NVIDIAの前掲第1四半期のフリーキャッシュフローは486億ドルで過去最高でした。

【7位】在庫と在庫日数

半導体産業は、需要と供給のずれによる在庫循環(シリコンサイクル)の影響を強く受けます。在庫日数とは、在庫が何日分の売上に相当するかを示す指標です。次の組み合わせが同時に現れたときは注意してください。

  • 売上高の伸び率が鈍化してきた
  • 在庫が増加し、在庫日数が長期化している
  • 顧客への納期が短くなってきた
  • それでも設備投資を増額している
  • 製品価格の値下げが始まった

この状態は、供給不足から供給過剰への転換点を示す可能性があります。特にメモリや汎用半導体では、実際の業績がピークを迎える前に株価が先行して下落することが、過去にも繰り返されてきました。

なお、日米の半導体株が同時に急落する背景については KOSPI急落でなぜ日本株も下がる?韓国半導体指数に振り回される日経平均の仕組みを徹底解説 で詳しく解説しています。

【8位】顧客企業のAI設備投資と投資回収

半導体企業の決算だけでは足りません。AI半導体を買う側、つまりMicrosoft、Alphabet、Amazon、Meta、Oracleといった大手テクノロジー企業の決算も確認する必要があります。

  • 設備投資額と次年度の設備投資計画
  • AIサービス売上、クラウド売上、利用者数
  • AI投資による利益貢献
  • フリーキャッシュフロー
  • 設備投資の回収期間

ここで重要な変化が起きています。Alphabetは2026年7月22日に発表した2026年12月期第2四半期で、売上高1,198億ドル(前年同期比24%増)と市場予想を上回りました。それでも株価は下落しました。四半期の設備投資が449億ドル(前年同期比101%増)に膨らみ、2026年通期の設備投資計画を1,800〜1,900億ドルから1,950〜2,050億ドルへ引き上げたためです。四半期のフリーキャッシュフローはマイナスに転じたと伝えられています。

かつては「設備投資を増やす」というニュースは、半導体企業への追い風として素直に歓迎されました。しかし現在は、設備投資の増額が投資家に嫌われる場面が出てきています。これは「AI投資額の競争」を評価する段階から、「AI投資の採算性を確認する段階」へ市場が移りつつあることを示す変化だと、筆者は推測しています。

【9位】決算前の株価位置とバリュエーション

決算内容だけでなく、決算前に株価がどこまで上がっていたかを必ず確認してください。

  • 予想PER:予想利益に対する株価の倍率
  • 過去の平均PER:その銘柄の平常時の水準との比較
  • PEGレシオ:PERを利益成長率で割った指標。成長を考慮した割高・割安の目安
  • PSR:株価売上高倍率。赤字企業にも使える
  • EV/EBITDA:企業価値が、税・利払い・減価償却前の利益の何倍かを示す指標
  • 直近1か月・3か月・6か月の株価上昇率
  • 移動平均線からの乖離率(平均的な価格からどれだけ離れているか)
  • 信用買い残(借入で買っている投資家の残高)
  • オプション市場の強気・弱気ポジション

決算前に株価が急騰している場合、かなり強い業績がすでに織り込まれています。良い決算でも利益確定売りが出やすくなります。NVIDIAの2026年5月20日の決算は売上高が市場予想を上回りましたが、株価は下落しました。市場では、決算前の上昇と高い評価倍率がハードルを上げていたことが背景として受け止められた可能性があります。

もう一点。高金利環境では、将来の利益を現在価値に割り引く際の割引率が上がるため、遠い将来の利益に価値を置く成長株のPERは縮みやすくなります。金利動向も決算の受け止め方を左右します。

【10位】決算説明会の質疑応答

決算短信やプレスリリースだけでは、決算の質は読み切れません。決算説明会の質疑応答こそ、株価が動く材料が出やすい場です。

経営陣の「需要は非常に強い」「長期的な成長を期待している」といった抽象的な発言だけでは判断できません。次のような具体性があるかを確認してください。

  • 受注残は何四半期分あるのか
  • 次世代製品はいつから売上に貢献するのか
  • 粗利益率はいつ改善するのか
  • 大口顧客以外の売上は増えているか
  • 中国規制の影響額はいくらか
  • 供給制約はいつ解消するのか
  • 価格競争は起きているか
  • 顧客の設備投資の回収見通しはどうか

経営陣が不都合な質問に曖昧な回答を繰り返す場合は注意が必要です。多くの日本企業は自社サイトで質疑応答集や書き起こしを公開しており、米国企業も説明会の音声とトランスクリプトを掲載しています。ここまで確認できると、決算の見え方が変わります。

決算発表後に確認する実践チェックリスト

実際に使いやすいよう、時系列で整理しました。

決算発表直後の5分

  1. 次四半期の売上高ガイダンス
  2. 次四半期のEPS(営業利益)ガイダンス
  3. 通期業績の上方修正・下方修正
  4. 粗利益率の実績と見通し
  5. AI・データセンター部門の前四半期比
  6. 時間外取引またはPTSの株価反応

決算資料を読む30分

  1. 受注高・受注残
  2. AI売上の内訳
  3. 在庫と在庫日数
  4. 営業キャッシュフロー
  5. フリーキャッシュフロー
  6. 設備投資計画
  7. 中国向け売上
  8. 顧客集中度

決算説明会のあと

  1. 経営陣の需要見通しの具体性
  2. アナリスト質問への回答の中身
  3. 利益率改善の時期
  4. 新製品の量産状況
  5. 顧客の設備投資計画
  6. 来期業績の前提条件

なお時間外取引やPTS(取引所外の私設取引システム)の値動きは参加者が限られるため、翌日の通常取引で反応が変わることも珍しくありません。時間外の株価だけで判断しないようにしてください。

決算後の急落が買い場になり得るケース

次の条件がそろっている場合、業績悪化ではなく過剰な期待の調整である可能性があります。

  • 通期業績を上方修正している
  • 次四半期も増収増益の見通し
  • 粗利益率を維持または改善している
  • 受注高・受注残が増えている
  • AI需要の継続が具体的に確認できる
  • フリーキャッシュフローが増えている
  • 在庫の急増がない
  • 株価下落の主因がPER縮小や利益確定と考えられる
  • 長期の競争優位性が崩れていない

ただし、条件が良くても株価がすぐ反発するとは限りません。期待の調整には時間がかかり、下落が数か月続く場合もあります。購入を検討する場合でも、一度にまとめず複数回に分けて買う方法が、一般論としてのリスク管理になります。

警戒すべき決算後の急落

一方、次のような場合は単なる期待値の調整ではなく、業績のピークアウトの可能性を考える必要があります。

  • 次四半期ガイダンスが市場予想を下回った
  • 通期業績を下方修正した
  • 売上成長率が急に減速した
  • 粗利益率が低下した
  • 新規受注が減少した
  • 在庫と在庫日数が増えた
  • 主要顧客が設備投資を延期した
  • 中国企業との競争で価格が下落している
  • 売掛金が売上高以上のペースで増えている
  • フリーキャッシュフローが減少した
  • 大口顧客への依存度が高まった
  • 経営陣の説明が抽象的になった

「株価が大きく下がったから割安」とは限りません。株価が30%下がっても、将来の利益予想が40%下がっていれば、かえって割高になっている可能性すらあります。見るべきは下落率ではなく、将来利益予想と企業価値の変化です。

現在のAI・半導体相場はどの段階にあるのか

ここからは筆者の推論です。AI・半導体相場を3段階に分けて考えると整理しやすくなります。

第1段階:AI需要が伸びれば幅広い銘柄が上昇する相場
AI関連であること、AI向け売上が増えること自体が評価される段階です。売上高の成長だけでも株価が上がりやすくなります。

第2段階:市場予想を大幅に上回らなければ売られる相場
現在はこの段階に入っている可能性が高いと考えています。好決算だけでは不十分で、大幅な予想超過、次四半期ガイダンスの上振れ、通期の上方修正、成長率の加速、利益率の改善、受注の増加が同時に求められます。決算前に株価が大きく上がった企業ほど、ハードルは高くなります。

第3段階:AI投資の採算性と競争力が問われる相場
今後は、AI関連であるだけでは評価されず、次の点が問われるようになると推測しています。AI投資が実際の売上につながっているか、顧客企業がAIサービスで利益を出せているか、巨額の設備投資を継続できるか、半導体の供給過剰が起きないか、中国企業との価格競争に耐えられるか、高い利益率を維持できるか、フリーキャッシュフローを生み出せるか。

その結果、AI・半導体株が一斉に上がる相場から、業績の質によって企業間の株価差が広がる選別相場へ移っていく可能性があります。この資金の移り方については TOPIX最高値更新の意味──AI相場の次は「高配当・バリュー株」が主役になるのか?半導体株暴落でセクターチェンジ開始か|夏枯れ相場前に高配当株・バリュー株・債券をどう組み合わせるか も参考になります。

個人投資家は決算リスクにどう対応するか

決算前に一度に買わない
決算は良くても悪くても株価が大きく動きます。決算をまたぐ前に大きな金額を一度に投じない、という選択肢があります。

決算またぎの目的を明確にする
長期保有なのか、短期の値上がり狙いなのかで判断は変わります。長期保有でも、決算後に業績見通しが崩れていないかの確認は必要です。

決算後の株価だけで判断しない
下がったから悪い決算、上がったから良い決算とは限りません。ガイダンス、利益率、受注、キャッシュフローを自分で確認してください。

分割購入を検討する
決算内容を確認して買う場合でも、株価がさらに下落することはあります。複数回に分けることがリスク管理になります。

ポートフォリオ全体で半導体比率を管理する
NVIDIA、AMD、半導体ETF、日本の半導体装置株を複数持っていても、実質的には同じAI・半導体テーマへの集中投資になっている可能性があります。銘柄数ではなく、資産全体に占める半導体関連の比率を確認してください。新NISAの成長投資枠で人気銘柄を積み上げている方は、一度この比率を計算してみることをおすすめします。

この考え方をポートフォリオに落とし込む具体的な方法は コアサテライト戦略とは?株式・債券・金・REIT・現金で作る「守りと攻め」のポートフォリオ株は高い、債券も高い…今どうする?初心者でも失敗しない“最適ポートフォリオ”戦略AI・半導体株が暴騰中でも積立投資はやめるな!インデックス・高配当株を維持すべき理由 でも取り上げています。

決算指標の優先順位まとめ

  1. 次四半期・通期ガイダンス
  2. 市場の非公式な期待値を超えたか
  3. 前四半期比の売上・利益成長率
  4. 粗利益率・営業利益率
  5. 受注高・受注残・顧客設備投資
  6. AI売上の内訳と顧客構成
  7. フリーキャッシュフロー
  8. 在庫と在庫日数
  9. バリュエーションと決算前の株価上昇
  10. 決算説明会の質疑応答

最も大切な考え方は一つです。過去のEPSが市場予想を上回ったかよりも、将来の利益予想がさらに上がる決算だったかを見ることが重要です。決算資料を開いたら、まず「来期の数字がどう変わったか」を探してください。

なお、同じ決算でも高配当株の場合は見るべき指標が変わります。そちらは 高配当株は“増配で買い・減配で売り”では勝てない──決算シーズンに本当に見るべき5つの指標 で整理しています。

まとめ

  • 中長期的には、株価は企業業績に連動します
  • しかし短期では、業績の絶対水準よりも、事前に織り込まれた期待値との差が株価を動かします
  • 好決算でも、PERが縮小すれば株価は下落します
  • AI半導体株は非常に高い成長期待を織り込んでおり、決算リスクが構造的に高くなっています
  • 最優先で確認すべきは、次四半期・通期のガイダンスです
  • 続いて、利益率、受注、キャッシュフロー、在庫を確認します
  • 決算後の急落は、「期待値の調整」と「業績悪化」を区別して考えます
  • 決算前の集中投資を避け、分散と分割購入を意識します

AI需要が終わったと短絡的に判断する必要はありません。一方で、AI関連であればどの企業でも上昇する相場から、利益率、受注、キャッシュフロー、競争力によって企業が選別される相場へ移行している可能性があります。

個人投資家に必要なのは、決算発表直後の株価だけを見て慌てることではありません。将来の売上高、利益率、受注、キャッシュフローが崩れていないかを順番に確認し、業績の質と株価に織り込まれた期待の両方を見ながら判断していくことです。次の決算発表では、株価を見る前に、まずガイダンスの数字を探してみてください。

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄や金融商品の売買を推奨するものではありません。記事中で企業名を挙げている箇所は、決算の見方を説明するための例示であり、投資勧誘の意図はありません。

決算数値、業績予想、株価、コンセンサスなどは、時間の経過とともに変化します。本記事の数値は執筆時点で公表されていた資料に基づいており、その後の修正や更新を反映していない場合があります。実際の投資判断にあたっては、企業の最新のIR資料や、ご利用の証券会社が提供する情報をご確認ください。

株式投資には元本割れのリスクがあります。特にAI・半導体関連株は値動きが大きく、短期間で大幅に下落する可能性があります。投資判断は、ご自身の資産状況、投資目的、リスク許容度を踏まえ、ご自身の責任で行ってください。本記事の情報を利用した結果生じたいかなる損害についても、筆者および当サイトは責任を負いません。

参考にした主な一次情報・公式資料

  • NVIDIA「NVIDIA Announces Financial Results for First Quarter Fiscal 2027」(2026年5月20日発表、2026年4月26日締め四半期)
  • Advanced Micro Devices「AMD Reports First Quarter 2026 Financial Results」(2026年5月5日発表)
  • Micron Technology「Reports Record Results for the Third Quarter of Fiscal 2026」(2026年6月24日発表)
  • Alphabet 2026年12月期第2四半期決算(2026年7月22日発表)および設備投資計画に関する開示
  • 株式会社アドバンテスト 2027年3月期第1四半期決算短信/業績予想の修正に関するお知らせ(2026年7月29日)
  • 株式会社ディスコ 2027年3月期第1四半期決算および2026年7〜9月期見通し(2026年7月23日発表)
  • レーザーテック株式会社 2026年6月期第3四半期決算および受注高見通しの修正(2026年4月30日発表)
  • 東京エレクトロン株式会社 業績予想(2027年3月期からの開示方針変更を含む)
  • TrendForceによるDRAM/NAND契約価格見通し(各種報道経由)
  • 日本経済新聞、CNBC、Bloomberg、株探等による各社決算および株価反応の報道

コメント

タイトルとURLをコピーしました