「米国債で約5%の利回りが取れるなら、わざわざ株価下落のリスクを取って配当利回り4%の高配当株を買う必要があるのだろうか?」🤔
2026年9月、この問いが現実味を帯びてきました。米10年国債利回りが5%目前まで上昇し、約3年ぶりの高水準に達したからです。
高配当株を中心に資産形成している方なら、一度は考えておきたい論点です。結論を先にお伝えします。
📌 この記事の結論
「ただ配当利回りが4%ある」という理由だけで株を買うのであれば、いまは米国債のほうが魅力的なケースがかなり増えました。
ただし「高配当株を全部売って米国債にすればいい」という話ではありません。株には増配があるからです。
大事なのは、株式と債券の「5%」が持つ意味の違いを理解することです。
2026年9月、なぜ米国債利回りがここまで上がっているのか 📈
まず足元の数字を確認しておきます。
| 指標 | 水準(2026年9月11日時点) | 意味合い |
|---|---|---|
| 米10年国債利回り | 約4.96% | 2023年10月以来、約3年ぶりの高水準 |
| 米30年国債利回り | 約5.37%(一時5.30%突破) | 2007年以来、約19年ぶりの高水準 |
| Brent原油 | 1バレル109ドル台 | 中東情勢の緊迫化で急騰 |
| FRBの追加利上げ確率 | 来週会合で25bp、約71% | 市場は「利下げ」ではなく「利上げ」を織り込み中 |
ここで注目したいのは、最後の行です。市場はもはや「利下げがいつか」ではなく「次の利上げがいつか」を見ている。これが今回の金利上昇の本質です。
原油高から金利上昇までの流れ 🛢️
なぜこうなったのか。起点は原油です。中東情勢の緊迫化によってBrent原油は一時1バレル109ドル台まで上昇しました。ここから先は、こう連鎖します。
財務省の買い戻し拡大でも止まらなかった 💸
米財務省も手を打ちました。9月9日以降、10〜20年ゾーンを対象とした国債買い戻しの規模を、従来の最大20億ドルから最大60億ドル(3倍)へ拡大したのです。
ところが市場では、もっと大規模な買い戻しを期待していた投資家が多く、「60億ドルでは巨大な米国債市場の需給を変えるには足りない」と受け止められました。結果として、長期金利の上昇は止まりませんでした。
この買い戻しオペの背景については、米国債買い戻しオペ発動、FRBの仕組み分解で詳しく整理しています。
30年債が19年ぶりの水準というのは、単なる一日の値動きではありません。世界的に「金利のある時代」が再評価され始めている、ということです。
配当4%株と米国債5%、数字だけならどちらが有利? ⚖️
単純化して、100万円を投資した場合で比べてみましょう。
📉 高配当株(利回り4%)
年4万円
100万円 × 4%
受け取るのは配当+株価変動。配当4万円をもらっても、株価が20%下がれば資産は100万円→80万円に。
📃 米国債(利回り5%)
年5万円
100万円 × 5%
受け取るのは利息+満期償還。満期まで持てば、米政府が債務不履行にならない限りドルベースで額面が戻る。
同じ「4〜5%」でも、性質はかなり違います。株式は「配当+株価変動」、国債は「利息+満期償還」。ここを混ぜて考えると判断を誤ります。
税引後で比較するとどうなるか 🧾
日本の個人投資家の場合、特定公社債である米国国債の利金などには原則20.315%の税率が適用されます。SBI証券では外国国債を含む特定公社債について、利金・譲渡益・償還差益などが課税対象となり、上場株式等との損益通算も可能とされています。外貨建て債券では、円換算時の為替損益も損益に含まれます。
| 表面利回り | 税引後(20.315%) | 100万円あたり | |
|---|---|---|---|
| 米国債 | 5.00% | 約3.98% | 約39,800円 |
| 高配当株 | 4.00% | 約3.19% | 約31,900円 |
| 差 | +1.00pt | +0.79pt | 約7,900円 |
もっとも実際の債券投資では、購入価格・クーポン・償還価格などによって収益構造が変わるため、単純に「表面利率×税率」で最終利回りが決まるわけではありません。
それでも、株価変動リスクを取る4%と、米国政府の信用リスクを取る約5%を並べて比較しなければならない局面になった。これは相当な変化です。
それでも株式を持つ最大の理由は「増配」 🌱
ここまで読むと「じゃあ高配当株を売って米国債を買えばいい」と思うかもしれません。私はそうは考えていません。理由は株には「増配」があるからです。
株価100万円・年間配当4万円(利回り4%)の企業が、毎年5%ずつ増配すると仮定してみます。
📊 年間配当の推移(100万円投資・毎年5%増配を仮定)
※あくまで計算上の仮定です。増配が続く保証はありません。
10年目の年間配当は約6万2,000円。取得価格100万円に対する配当利回り、いわゆる簿価利回りは約6.2%になります。米国債の5%は6年目に追い抜き、その後は差が開いていく計算です。
クローが計算してみて驚いたこと 💡
ここで、10年間の累計でも比べてみました。
| 期間 | 増配株(4%スタート・年5%増配) | 米国債(5%固定) | 差 |
|---|---|---|---|
| 10年累計 | 約50.3万円 | 約50.0万円 | ほぼ互角 |
| 15年累計 | 約86.3万円 | 約75.0万円 | 株が+11.3万円 |
| 20年累計 | 約132.3万円 | 約100.0万円 | 株が+32.3万円 |
面白いのは、10年時点ではほぼ互角という点です。「配当4%の株」と「米国債5%」は、受け取る現金の総額で見ると10年かけてようやく並ぶ。そしてそこから先は株が離していく。
しかも株の場合、企業利益が増えていれば株価そのものも上がっている可能性があります。つまり、
- 米国債:約5%を固定する資産
- 優良な増配株:現在4% + 増配 + 株価上昇を狙う資産
この違いは、10年・20年で効いてきます。
「高配当株」の選び方が変わる 🔍
米国債が5%近くまで上昇すると、高配当株を見る基準も変えるべきです。
以前なら「配当利回り4%だから魅力的」でよかったかもしれません。しかし今は、こう問う必要があります。
米国債5%ではなく、あえてこの株を買う理由は何か?
⚠️ 慎重になるタイプ
- 配当利回り4%
- 利益成長ほぼゼロ
- 配当成長ほぼゼロ
- 自社株買いなし
→ 米国債5%に勝てる要素が見当たらない
✅ 検討したいタイプ
- 配当利回り3.5〜4%
- 利益(EPS)が成長
- 累進配当・DOEを採用
- 毎年増配+自社株買い
→ 今は負けても10年トータルで上回る可能性
これからの高配当株投資では、「配当利回り」ではなく「配当成長率」がますます重要になります。この考え方は、日本の長期金利が3%に近づいた局面でも同じ論点になりました。長期金利3%時代、高配当投資の常識が変わるも併せてご覧ください。
DOE・累進配当が重要になる理由 🏛️
この環境では、DOEや累進配当政策を採用する企業の価値も高まります。
- 累進配当:原則として配当を減らさず、維持または増配していく方針
- DOE(Dividend on Equity=株主資本配当率):株主資本を基準に配当を決める考え方。企業利益が多少変動しても配当が安定しやすい
米国債5%という強力な競争相手が現れた以上、株式には「将来キャッシュフローが増える」という魅力が必要です。その意味でも、これまで以上に次の6点を見るべきだと考えています。
DOE
増配実績
EPS成長
フリーキャッシュフロー
自社株買い
個別株ではなく投信・ETFで高配当を取りたい方は、【2026年版】日本版高配当ファンド徹底比較もご参照ください。
最大の注意点は為替 💱
日本人が米国債へ投資するとき、絶対に忘れてはいけないのが為替です。
例えば1ドル157円で米国債を購入したとします。その後、円高が進むとどうなるか。
| 購入時 | その後の為替 | 円換算の評価 | 年5%の利息と比べると |
|---|---|---|---|
| 1ドル157円 | 150円(▲4.5%) | 約▲4.5% | 1年分の利息とほぼ相殺 |
| 140円(▲10.8%) | 約▲10.8% | 2年分の利息を超える損 | |
| 130円(▲17.2%) | 約▲17.2% | 3年分以上の利息が吹き飛ぶ |
したがって「米国債5%だから安全」ではありません。正確には「ドル建てでは信用力の高い固定収益資産」です。円で生活する日本人にとっては、為替リスクが必ず乗ります。
だから「円高局面で買う」という発想が重要 🎯
ここで現在の為替環境が効いてきます。
2026年7月にはドル円が164円目前まで進みましたが、日米協調介入を受けて155円台まで円高が進行。その後160円台を回復したものの、9月に入って日銀の金融正常化観測などから157円台まで戻す場面がありました。
介入の規模も歴史的でした。8月末の外貨準備高は1兆2,075億ドルと前月末比6.2%減。減少率・減少額(約795億ドル)ともに過去最大です。それだけ大規模な円買い介入が実施されたということです。
この介入の中身と、米国債市場への影響については外貨準備が過去最大の減少と日米協調介入はなぜ必要だったのかで詳しく扱っています。
米国債を買うなら、「金利が高い」ことだけでなく「ドルをできるだけ安く買える」ことも同じくらい重要です。私なら一括購入ではなく、金利と為替の2軸で分割します。
📈 金利を見る軸
💴 為替を見る軸
特定の水準が必ず正解というわけではありません。大事なのは金利と為替の両方を分散するという考え方です。ドル円の水準感についてはドル円163円時代、個人投資家はどう資産を守るべきかもどうぞ。
もう一つの魅力。「株暴落時の弾」にできる 🔫
私が現在の米国債に魅力を感じる最大の理由は、利回り5%だけではありません。
将来、景気が悪化した場合を考えてみます。
🔄 景気後退シナリオでの「二段構え」
企業利益悪化→
株価下落 📉
長期金利低下→
既発債券の価格上昇 📈
値上がりした債券を売り、暴落した株を買う。この入れ替えができます。
例えば5%近い利回りで買った米10年国債を保有していて、その後金利が3〜4%まで低下すれば、債券価格には値上がり余地が生まれます。
つまり米国債を「約5%のインカムを受け取りながら待つ、次の株式投資の待機資金」として使えるということです。これは50代・60代の資産運用では、かなり面白い考え方だと思います。
ただし債券価格も下落する ⚠️
逆のケースも考えておく必要があります。
原油高 → インフレ再加速 → FRB追加利上げ → 10年債利回りが5.5%へ。この場合、5%で買った国債の時価は下落します。
🚨 ここを混同しないでください
✅ 満期まで持つ → ドル建て額面で償還(米政府が債務不履行にならない限り)
⚠️ 途中で売る → その時の時価。金利が上がっていれば元本割れもあり得る
「10年国債だから元本保証」ではありません。満期保有と途中売却は、別物として分けて考える必要があります。
50代・60代では債券の意味がさらに大きい 👴👵
20代・30代と50代・60代では、資産運用の目的が違います。
若い世代は運用期間が長いため、株式市場の暴落を時間で乗り越えやすい。しかし退職が近づくと、資産の性質が変わります。
20〜30代
「いつ使うか分からない資産」
→ 暴落しても時間で回復を待てる
50〜60代
「これから生活費として使う資産」
→ 暴落時に売らざるを得ないのが怖い
ここで重要になるのがシーケンス・オブ・リターン・リスクです。退職直後に株価が大きく下落し、その状態で生活費のために株を売却すると、資産寿命に決定的な影響を与えます。
株式だけでなく一定量の債券を持つことで、株価暴落時に株を安値で売る必要性を減らせます。米国債が5%近い利回りを提供してくれるなら、この「待つための資産」の役割は、以前よりかなり魅力的になっています。
退職後の取り崩し設計そのものについては、50歳からでも間に合う「自分年金」の作り方も参考になるはずです。
私なら「株か債券か」ではなく両方持つ 🤝
現在の環境で私なら、「株式を全部売って債券」にも「債券を持たず株式100%」にもしません。役割を分けます。
🌱 株式=「攻め」
- インフレへの対応
- 企業利益の成長
- 増配による簿価利回り上昇
- 長期的な資産成長
🛡️ 米国債=「守り+待機」
- 安定したインカム
- 株式との値動きの分散
- 退職後のキャッシュフロー
- 株価暴落時の買い増し原資
株式と債券は競争相手ではなく、違う役割を持つ資産です。
米国債5%時代に「買わなくてもいい高配当株」 🚫
これから高配当株を見るとき、私は必ずこう考えます。
この企業は、米国債5%ではなくこの株を保有するだけの理由があるか?
答えが「配当利回りが4%だから」だけなら弱い。一方で「配当4% + 利益成長 + 増配 + 自社株買い」なら、投資する意味があります。
つまり米国債5%は、高配当株を選別する新しいハードルになったということです。これは日本株投資にも大きな影響を与えると思います。日本の長期金利上昇が高配当株の勝ち負けをどう分けるかは、日本10年債3%目前、高配当投資の勝ち組・負け組で整理しています。
まとめ:利回りだけの高配当株には厳しい時代 📝
2026年9月現在、米10年国債利回りは5%目前まで上昇しています。
「配当4%の株を買うより米国債5%を買った方がいいのでは?」——この問いへの私の答えは、「単純なインカムだけを目的にするなら、その可能性はかなり高くなった」です。
しかし株式には、利益成長・増配・株価上昇・インフレ耐性があります。だから株式をやめる必要はありません。重要なのは、「利回りが高い株」と「長期的に配当が成長する株」を区別することです。
✅ 今日から使えるチェックリスト
□ 保有する高配当株に「米国債5%ではなくこれを持つ理由」があるか書き出す
□ 配当利回りではなく配当成長率を過去5年分で確認する
□ 累進配当・DOE・自社株買いの方針を企業の開示資料で確認する
□ 米国債を買うなら「金利」と「為替」の2軸で分割購入の計画を立てる
□ 50代以降なら、暴落時に売らずに済む「待てる資産」を確保する
米国債5%が選択肢になる時代では、ただ利回りが4%だからという理由だけで株を買う必要はありません。これから高配当株に求められるのは、米国債5%を超える未来です。
いま4%でも、5年後・10年後に配当が増え、企業利益が成長し、株価も伸びる。そんな企業を選ぶ。そして債券では約5%のインカムを確保しながら、次の株価下落に備える。
50代・60代の資産運用では、「株か債券か」ではなく「成長は株、守りと待機資金は債券」という組み合わせが、これからますます重要になってくるのではないでしょうか。😊
※本記事は2026年9月11日時点の市場環境を基にした一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の購入・売却を推奨するものではありません。外国債券には為替変動、価格変動、金利変動等のリスクがあります。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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