AIサイバー攻撃から資産を守る方法|個人でできること・できないことを徹底解説【2026年版】

「金融庁、金融機関にサイバー対策の点検を要請」

2026年10月9日、金融庁がこんな注意喚起を出しました。
企業への不正アクセスで、運転免許証などの画像まで漏れる事案が相次いでいるためです。

「銀行や証券会社まで狙われるなら、個人ではどうしようもないのでは?」
そう感じた方も多いと思います😟

新NISAが始まってから、証券口座に数百万円、数千万円を置く人も珍しくなくなりました。
しかも今は、攻撃する側もAIを使う時代です。

💡 先に結論

  • AIを使った攻撃そのものを、個人が止めることはできません
  • でも「突破される確率」と「突破されたときの被害額」は、個人の対策で大きく下げられます
  • カギは、守りを何枚も重ねる「多層防御」です

先日の記事「大和証券・デジタル庁でも情報漏えいの恐れ|50代・60代が今日からできる証券口座の守り方」では、いま何が起きているのかを中心に整理しました。

今回はその続編です。
「個人でできること・できないこと」をはっきり分けて、何から手をつけるかの優先順位と、印刷して使えるチェックリストまでまとめます。

🤖 AIでサイバー攻撃は何が変わったのか

以前の偽メール(フィッシングメール)には、分かりやすい特徴がありました。

  • 日本語がおかしい
  • 文章が不自然
  • 明らかに怪しいURLが書かれている

ところが生成AIを使えば、自然な日本語の偽メールを大量に作れます。

IPA(情報処理推進機構)の「情報セキュリティ10大脅威 2026」では、組織向けの3位に「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が初めて入りました。
AIの悪用で、攻撃がやりやすく、巧妙になっていることも含まれています。
解説書では、AIの翻訳力を使えば相手の母国語で自然な偽メールを作れ、多言語での攻撃がしやすくなるとも説明されています。

個人向けでも「インターネットバンキングの不正利用」が4年ぶりに選ばれました。
私たちのお金に直結する話です。

たとえば、こんな文面も自然に作れます。

  • 「証券口座の認証方式が変更されました」
  • 「クレジットカードの利用確認をお願いします」
  • 「旅行代金のお支払いについて確認があります」

しかもAIは文章だけではありません。
音声・画像・動画まで本人そっくりに作れます。

📩 これまで

「日本語が変だから詐欺」と
見分けられることが多かった

🤖 これから

文章も声も本物そっくり。
見た目では見分けにくい

🏛️ 金融庁もAIの脅威を強く警戒している

これは将来の話ではありません。
2026年に入って、金融庁は次々と手を打っています。

時期 出来事
2026年5月22日 金融庁と日本銀行が、フロンティアAI(最先端のAI)による脅威に備えるよう、金融機関に要請。9項目の対応を、おおむね1か月をめどに進めるよう求めました
2026年10月5日 業界横断のサイバー演習「Delta Wall 2026」を公表。10月6日〜22日、過去最多の181の金融機関が参加予定。証券分野では「不正アクセスと不正取引」を想定
2026年10月9日 金融庁が金融機関に注意喚起し、サイバー対策の点検を要請。本人確認書類の画像を含む情報漏えいが相次いでいることが背景

つまり、金融機関そのものが「いま」備えを急いでいる問題なのです。

⚖️ 個人で「できること」と「できないこと」

まず大切なのは、この2つを分けて考えることです。

リスク 個人での対策 主な方法
偽メール・偽サイト ◎ メールのURLからログインしない
パスワード流出 ◎ 使い回さない
なりすましログイン ◎ パスキー・2段階認証
AI音声詐欺 ○ 別の手段で本人確認
ウイルス(マルウェア) ○ OS・アプリを更新
SIM乗っ取り ○ SMS認証だけに頼らない
金融機関そのものへの攻撃 × 個人では防げない
金融機関・委託先からの情報漏えい × 個人では防げない
未知の弱点(ゼロデイ) × 完全に防ぐのは難しい

ポイントは、「全部を防ごう」と考えないことです。
1枚目の壁が破られても、2枚目・3枚目で止める。
これが「多層防御」の考え方です🛡️

🛡️ 多層防御のイメージ(外側から順に)

第1の壁 入口を固定(公式アプリ・ブックマークだけ)
第2の壁 パスキー・2段階認証
第3の壁 メールアカウントを守る
第4の壁 パスワードを使い回さない
第5の壁 更新を自動化(スマホ・パソコン)
🔔 最後の砦 ログイン・出金通知で早く気づく

ここからは、優先度の高い順に7つの対策を見ていきます。

🔑 最優先① パスワードから「パスキー」へ

銀行・証券会社が対応しているなら、いちばん先に設定したいのがパスキーです。

パスキーは、パスワードの代わりに次のもので本人確認をする仕組みです。

  • 指紋
  • 顔認証
  • Windows Hello(パソコンの顔・PIN認証)
  • スマートフォン

最大の長所は、偽サイトにパスワードを入力させる手口に強いことです。
そもそも入力するパスワードがないので、盗まれようがありません。

金融庁も、証券会社などのネット取引の利用者に向けて、パスキーなど「フィッシングに強い認証」が提供されたら、速やかに設定するよう呼びかけています。

「複雑なパスワードを覚える」から、
「そもそもパスワードを盗ませない仕組み」へ。

これからは、こちらの方向へ進んでいくと私は考えています。

🔗 最優先② メールのリンクから金融機関へログインしない

簡単ですが、とても効果がある対策です。

銀行や証券会社を名乗って、こんなメールが届いても…

  • 「重要なお知らせ」
  • 「本人確認のお願い」
  • 「口座が停止されます」

メールの中のリンクからはログインしません。
入口は公式アプリか、自分で登録したブックマークだけに決めておきます。

金融庁も、証券会社の正しいURLを前もってブックマークし、そこから入るよう呼びかけています。

📧 メールの役割

「お知らせが来た」と気づくだけ

📱 お金の操作

公式アプリかブックマークから入って確認

役割を完全に分けてしまうのがコツです。
AIがどれほど本物そっくりのメールを作っても、リンクを押さなければ多くの攻撃はかわせます。

📮 最優先③ Gmailなどメールアカウントを守る

意外と見落としがちなのがメールです。

証券口座をどれだけ固めても、メールを乗っ取られると、次のようなメールを攻撃者に見られてしまいます。

  • パスワード再設定
  • 本人確認
  • セキュリティのお知らせ

つまり、メールは「すべての合鍵が届く郵便受け」です。
金融口座と同じくらい大事なアカウントとして扱いましょう。

GoogleやMicrosoftなどはパスキーに対応しています。まずはメールから設定するのがおすすめです。

🔁 最優先④ パスワードを使い回さない

たとえば、次のサービスで同じパスワードを使っていたとします。

🛒 通販サイト(漏えい)
➡
📧 メール
➡
🏦 銀行
➡
📈 証券口座

どこか1か所から漏れると、そのパスワードで他のサービスにも次々とログインを試されます。
これを「リスト型攻撃」といいます。

基本はサービスごとに別のパスワードです。
覚えきれない場合は、パスワード管理アプリ(パスワードマネージャー)を使う方法があります。

📲 最優先⑤ SMS認証だけに頼らない

SMS(ショートメッセージ)で届く確認コードは、パスワードだけよりは安全です。
ただし、次のような弱点があります。

  • SIMスワップ(電話番号の乗っ取り)
  • SMSの転送
  • 偽サイトでコードまで入力させる手口
  • ウイルス

選べるなら、パスキー・セキュリティキー・認証アプリなど、より強い方法を優先します。

🔐 認証方法の強さのめやす

パスキー・セキュリティキー

認証アプリ

SMS認証

パスワードだけ

※筆者の考えによるイメージ図です

「SMSは危ないから使わない」という意味ではありません。
SMSしか選べないなら必ず使う。より強い方法が選べるなら乗り換える。
この考え方です。

🔔 最優先⑥ ログイン・出金の通知をONにする

これは侵入を防ぐ対策ではありません。
侵入されたあとの被害を小さくする対策です。

銀行・証券会社・クレジットカードで、次の通知はできるだけONにしておきます。

  • ログイン
  • 振込・出金
  • 新しい端末からのアクセス
  • 登録情報の変更
  • パスワードの変更
  • 出金先の銀行口座の変更

金融庁も、2段階認証だけでなく通知サービスを有効にするよう勧めています。

100%防ぐのが難しいなら、「入られたことに早く気づく仕組み」が大切です。
気づくのが1日早いだけで、被害額は大きく変わります。

🔄 最優先⑦ スマホ・パソコン・ブラウザを自動更新にする

AIの進化で心配されていることの一つが、弱点が見つかってから攻撃されるまでの時間が短くなることです。
5月の金融庁・日銀の要請も、まさにこの点を重く見たものでした。

次のものは、できるだけ自動更新にしておきましょう。

  • Windows Update
  • iPhone / Android
  • Chrome・Edgeなどのブラウザ
  • 銀行・証券会社のアプリ
  • 自宅のWi-Fiルーター

「時間があるときに更新する」ではなく、「更新を自動にしておく」のがポイントです。

🪪 本人確認書類の画像が漏れたら?

今回の金融庁の注意喚起では、運転免許証などの画像の漏えいが問題になりました。
悪用されると、本人になりすまして口座を作られるおそれがあります。

金融庁は金融機関に対し、ネットでの本人確認で画像に不自然な点がないか、改めて徹底するよう求めています。
さらに、2027年4月1日からは、本人確認書類の画像を送る方式が廃止され、マイナンバーカードなどのICチップを読み取る方式が原則になります。金融庁は、この切り替えを施行日を待たずに急ぐよう求めています。

個人としては、次の点に気をつけておくと安心です。

  • 漏えいの通知を受けたサービスのパスワードはすぐ変更
  • 身に覚えのない「口座開設のお知らせ」が届いたら、メールのリンクではなく公式窓口に連絡
  • 「漏えいのお詫び」を装った偽メールにも注意(ここでもリンクは押さない)

📧 金融専用のメールアドレスを作るのも有効

資産額が大きい方なら、金融サービス専用のメールアドレスを用意する方法もあります。

普段使いのアドレス 金融専用のアドレス
通販・SNS・メルマガ・旅行・各種会員登録 銀行・証券会社・クレジットカードだけ

金融用のアドレスをほかで使わなければ、そのアドレスが攻撃者の名簿に載る可能性を下げられます。
また、金融用アドレスに「見覚えのないサービス」からメールが来たら、それだけで怪しいと判断できます。

📞 AI音声詐欺にも注意

これから特に気をつけたいのが、AIで作った「声のニセモノ」による詐欺です。

家族の声をAIで再現して、こんな電話がかかってくるかもしれません。

  • 「事故を起こした」
  • 「旅行先で財布をなくした」
  • 「今すぐお金を送ってほしい」

こうなると、「声が本人だから信じる」という判断が危なくなります。
お金の話が出たら、次の順番を習慣にしましょう。

☎️ お金の話が出たらいったん電話を切る
⬇
📒 自分が知っている本人の番号にかけ直す
⬇
👨‍👩‍👧 家族など別の経路でも確認

家族の間で「緊急時の合言葉」を決めておくのも効果的です。
電話口で合言葉が出てこなければ、それ以上は話を進めない。そう決めておくだけで、あわてずに済みます。

🚧 それでも個人には防げないことがある

ここは冷静に受け止めておく必要があります。

金融機関やその委託先が攻撃を受けて、次のような情報が漏れた場合、利用者が前もって防ぐことはほぼできません。

  • 氏名・住所
  • メールアドレス・電話番号
  • 口座に関する情報
  • 本人確認書類の画像

クラウド事業者への攻撃や、まだ知られていない弱点を突く「ゼロデイ攻撃」も同じです。

❌ こう考えない

「自分の個人情報は一生漏れない」

⭕ こう考える

「一部の情報が漏れても、資産までは奪われない状態を作る」

✅ 投資家がまず確認したい10のチェックリスト

銀行・証券口座をお持ちの方は、次の10項目を確かめてみてください。
スマホでスクリーンショットを撮って、一つずつ確認していくのがおすすめです📸

📋 資産防衛チェックリスト

☐ Gmailなどメールに2段階認証(できればパスキー)を設定

☐ 対応している金融機関ではパスキーを設定

☐ 銀行・証券会社のパスワードを使い回していない

☐ 金融機関へは公式アプリかブックマークから入る

☐ メールやSMSのURLからログインしない

☐ ログイン通知をON

☐ 出金・振込通知をON

☐ 登録情報の変更通知をON

☐ スマホ・パソコン・ブラウザを自動更新

☐ 家族から突然の送金依頼が来たら、別の経路で確認

10項目すべてにチェックが付けば、守りはかなり固くなります💪
ご両親やご家族の口座も、ぜひ一緒に見直してみてください。

💭 私はこう考えています

投資の神様と呼ばれるウォーレン・バフェット氏には、有名な投資の原則があります。

「ルール1:絶対にお金を失わないこと。ルール2:ルール1を忘れないこと」
(ウォーレン・バフェットの言葉として広く知られる投資原則)

本来は「損をしない銘柄選び」の話ですが、私はサイバー対策にこそ当てはまる言葉だと感じています。
相場の下落なら、時間をかければ戻る可能性があります。
でも、不正に引き出されたお金は、戻ってこないかもしれません。

私は62歳で、再雇用で働きながら高配当株とNISAで資産を育てています。
同世代の方と話すと、「自分のような個人は狙われないだろう」という声をよく聞きます。
でも、2025年に証券口座の乗っ取りが急増したことを思い出すと、そうとは言い切れません。

この記事の7つの対策は、どれも特別な知識はいりません。
週末の半日あれば、メールと主な金融口座の設定を一通り見直せると思います。
「銘柄を1つ調べる時間」を、一度だけ守りに回す。そのくらいの気持ちで十分です。

AI時代に大切なのは、「本物か偽物かを見破る力」ではないと思います。
文章も声も本物そっくりになれば、人間の目と耳には限界があります。
それよりも、「偽物を本物と思い込んでしまっても、簡単には資産を奪われない仕組み」を作っておくこと。
私はこちらに発想を切り替えました。

老後の資産は、取り戻す時間が少ないお金です。
資産寿命を延ばす長期投資を考えるときも、守りの土台があってこそだと、私は考えています。

📝 まとめ|AI時代の資産防衛は「多層防御」

AIを使ったサイバー攻撃は、これからさらに巧妙になる可能性があります。
それでも、個人にできることは十分にあります。

優先度 対策 役割
① パスキー 盗まれない
② 公式アプリ・ブックマーク 偽サイトに行かない
③ メールアカウントを守る 合鍵を渡さない
④ パスワードを使い回さない 被害を広げない
⑤ 強い2段階認証 突破されにくくする
⑥ ログイン・出金通知 早く気づく
⑦ 自動更新 弱点をふさぐ

特別なセキュリティソフトを買えば全部解決、というわけではありません。
基本の対策を一つではなく、何重にも重ねることが、いちばん現実的な守り方です。

新NISAやiDeCoで、自分の資産を自分で管理する時代になりました(制度の全体像は「新NISAとiDeCo改訂まとめ」で整理しています)。
これからは商品選びだけでなく、「デジタル犯罪から資産をどう守るか」も資産運用の一部だと私は考えています。

投資で1%高いリターンを狙うことも大切。
でも、サイバー犯罪による100%の損失を防ぐことは、それ以上に大切です🔐

📚 あわせて読みたい関連記事

主な参考資料

  • 金融庁「現下の情勢を踏まえたサイバーセキュリティ対策の強化と各種取引申込等における対応について」(2026年10月9日)
  • 金融庁「金融業界横断的なサイバーセキュリティ演習(Delta Wall 2026)について」(2026年10月5日)
  • 金融庁・日本銀行「フロンティアAIによる脅威変化を踏まえた金融機関等の短期的な対応」(2026年5月22日)
  • 金融庁「インターネット取引サービスへの不正アクセス・不正取引にご注意ください」
  • IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」

※本記事は2026年10月9日時点の公表情報をもとに、筆者個人の考えをまとめたものです。特定の金融商品やサービスの利用を推奨するものではありません。セキュリティ設定や認証方式は金融機関ごとに異なるため、最新情報は各社の公式サイトでご確認ください。投資判断はご自身の責任においてお願いいたします。

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