信用リスクでバリュー株に転機?「警戒ゾーン入り口」の高配当株の見方【2026年10月】

「金利が上がるなら銀行株」
「インフレなら商社や資源株」
「PERやPBRが低いバリュー株なら安心」

ここ数年、こうした考え方はかなり有効でした📈
銀行、商社、保険、建設など、いわゆるバリュー株(割安株)・高配当株が大きく上がってきました。

ところが2026年10月、相場の空気に少し変化が出ています。
キーワードは「金利」ではなく、「信用リスク」です。

金利が上がるだけなら、銀行や保険には追い風になることがあります。
しかし金利が上がりすぎて、市場の関心が「この会社は借金を返せるのか?」に移ると、話が変わります。

この記事では、この変化を50〜60代の新NISA投資家にも分かりやすく整理します。

🔑 この記事の結論(先に)

  • 「安い株を買う」から「財務の強い割安株を選ぶ」へ、見る数字が変わりつつあります
  • 米10年国債の利回りは5%を超え、2026年10月1日には5.34%と24年ぶりの高さになりました
  • 全体の信用不安はまだ小さいものの、CCC格以下の低格付け債だけ上乗せ金利が12%台に広がっています
  • いまは「警戒ゾーンの入り口」。慌てて全部売る場面ではなく、中身を点検する場面と筆者は考えています

1.バリュー株はなぜ強かったのか🏦

まず、ここまでバリュー株が強かった理由を確認しましょう。

バリュー株とは、一般に次のような株を指します。

  • PER(株価が利益の何倍かを示す割安度)が低い
  • PBR(株価が会社の純資産の何倍かを示す数字)が低い
  • 配当利回りが高い
  • 成長株ほど、将来の利益を高く評価されていない

代表的なのは、銀行、保険、商社、資源、鉄鋼、建設、自動車、通信などです。

2022年以降、世界でインフレが進み、超低金利の時代が終わりました。
すると株式市場では、10年後、20年後の成長を高く評価する「グロース株」より、「いましっかり利益を出している企業」が評価されやすくなりました。

日本ではさらに、次のような動きが重なりました。

  • 東京証券取引所によるPBR改善の要請
  • 自社株買い、増配
  • 累進配当(減らさず増やす配当方針)、DOE(株主資本配当率)の導入
  • 政策保有株(持ち合い株)の売却

つまり、低PBR+高配当+株主還元の強化という、非常に強い追い風がバリュー株に吹いていたわけです。
野村證券も2026年8月の記事で、銀行株では2025年以降、低PBRの銘柄が優位だったと説明しています。

2.ところが「金利上昇」が別の顔を見せ始めた🔄

今回の重要ポイントはここです。
金利の上昇には、実は2つの段階があります。

金利上昇の2段階。正常化の金利上昇と信用リスクの金利上昇の違い

第1段階:正常化としての金利上昇

景気が良くなり、物価が上がります。
中央銀行が利上げをして、銀行の利ざや(貸出金利と預金金利の差)が改善します。

この段階では、銀行株をはじめ、バリュー株にプラスになりやすいといえます。

第2段階:信用リスクを意識する金利上昇

ところが、金利が高くなりすぎると流れが変わります。

  • 企業の利払い(借金の利息)の負担が増える
  • 借り換え(古い借金を新しい借金で返すこと)が難しくなる
  • 格付けの低い企業ほど、資金調達のコストが上がる
  • 倒産や貸倒れ(貸したお金が返ってこないこと)のリスクが上がる

こうなると、「金利が上がったから銀行株を買おう」という単純な話ではなくなります。

3.いま米国で起きている異変🇺🇸

2026年10月初め、米国債市場で大きな金利上昇が起きています。

米10年国債の利回りは、10月1日に一時5.34%まで上がったと報じられています。これは2002年初めごろ以来の高さで、リーマン・ショック前の2007年のピークも上回りました。

日々の終値ベース(FRED)でも、10月1日が5.24%、2日が5.28%、5日が5.31%と、5%台前半〜半ばの高い水準が続いています。

背景として、次のような点が指摘されています。

  • 米国の景気が底堅いこと
  • 原油高によるインフレへの警戒
  • 米国の財政悪化への懸念

国債の金利が上がると、企業が借りるときの金利も上がります。
国債の利回りに上乗せ金利が加わるからです。たとえば、CCC格以下の債券全体の利回りは、10月5日時点で17.02%でした(ICE BofA指数)。米国債の5%台に、約12%の上乗せが乗った水準です。ただし、これは「すでに出回っている低格付け債」の平均で、すべての低格付け企業の新しい借入金利が17%という意味ではありません。

企業から見れば、これまで5〜8%で借りられた資金が、10%、15%、場合によってはそれ以上になるということです。
利益率の低い企業や、借金の多い企業には大きな負担です。

国内の動きも気になります。日本の金利環境については、こちらの記事でも整理しています。

4.クレジットスプレッドとは何か🔍

ここは、ぜひ覚えておきたい言葉です。

たとえば、こう考えます。

  • 米国債の利回り:5%
  • ある企業の社債の利回り:8%

8% − 5% = 3%。
この3%が、おおまかな「信用リスクの上乗せ分」です。これをクレジットスプレッドと呼びます。

市場が「この会社なら大丈夫」と思えば、スプレッドは小さくなります。
「返済できないかもしれない」と思えば、広がります。

見えている変化 何の問題か
国債の金利が上がるだけ 「金利」の問題
スプレッド(上乗せ)まで広がる 「企業の信用力」の問題に変わった可能性

いまのスプレッドはどうなっている?(2026年10月2日)

米国の社債の上乗せ金利は、格付けごとに次のとおりです(ICE BofA指数、FRED掲載値)。

米国社債の信用格付け別スプレッド。CCC格以下のみ12%超
区分 上乗せ金利
BB格 1.93%
シングルB格 3.12%
ハイイールド債(低格付け債)全体 3.10%
(参考)BBB格社債
※投資適格の一番下
1.04%
CCC格以下 12.02%

ここで大事なのは、「全体はまだ落ち着いて見える」点です。
低格付け債全体のスプレッドは3%台で、過去の危機のときのように急拡大してはいません。投資適格の一番下のBBB格も1%前後で、まだ広がっていません。

なお、スプレッドは国債との単純な引き算ではなく、「オプション調整後」という方法で計算された値です。細かい数字は日によって動くので、おおまかな目安として見てください。

一方で、最も格付けの低いCCC格以下だけが、12%台と大きく広がっています。
つまり市場は、「弱い会社」と「強い会社」を選別し始めているともいえます。

株式市場もいまのところ崩れてはいません。日経平均は10月6日の終値が7万683円98銭(前日比+1.05%)と高い水準です。銀行株の指数も同日は上がりました。
だからこそ「危機が来た」とも「何も心配いらない」とも言えない、警戒ゾーンの入り口なのです。

5.なぜバリュー株が影響を受けるのか⚠️

理由は、バリュー株には、景気に左右されやすい企業や、借金の多い企業が比較的多いからです。

たとえば、次のような業種です。

  • 銀行、地方銀行、ノンバンク(貸金業)
  • 不動産、建設
  • 素材、自動車、資源

これらは、PERやPBRが低く、配当利回りが高くなりやすい一方、景気や信用環境の影響も受けます。
つまり、「安い=安全」ではありません。

たとえば、PER8倍、PBR0.7倍、配当利回り5%の株は、とても魅力的に見えます。
しかし、次のような流れになることもあります。

借金が多い → 借り換えの金利が上がる → 利益が減る → 減配(配当が減ること) → 株価が下がる

こうなると、「割安株」だと思っていた株が、実はバリュートラップ(安く見えるだけの罠)だった、ということになります。

6.特に気になる銀行株🏧

日本の高配当投資家にとって、いちばん気になるのは銀行株でしょう。

これまでの流れは、こうでした。
日銀の利上げ → 貸出金利の上昇 → 利ざやの拡大 → 銀行の収益改善。

実際、銀行株は2024年のマイナス金利解除以降、大きく上がりました。
メガバンクの動きは、こちらの記事でも取り上げています。

しかし、金利には「ちょうどよい水準」があります。
1%、2%と上がる段階では銀行に追い風でも、企業の返済能力を超えるほど高くなると、逆回転が始まります。

貸倒れが増える → 貸倒引当金(備え)が増える → 信用コストが増える → 銀行の利益が減る。

さらに、銀行が持っている債券にも注意が必要です。
金利が上がると、債券の価格は下がります。すると、保有している債券の含み損が増えます。
実際に2026年も、円債の含み損の拡大が、地方銀行株などで警戒材料として報じられました。
なお、日銀の2026年4月の金融システムレポートは、評価損の拡大を認めつつ、金融機関は総じて十分な損失に耐える力があると評価しています(2026年3月末までの情報)。

だから、「利上げ=銀行株を買い」という単純な公式は、そろそろ見直す時期かもしれません。

7.高配当株投資は危険なのか?🤔

筆者は、そうは考えていません。
むしろこれから大切になるのは、「バリュー」から「クオリティ・バリュー」への移行です。

つまり、「安い会社」ではなく、「財務が強く、利益と配当を続けられる割安な会社」を選ぶということです。

バリュー投資の第1幕から第2幕へ。見る数字の変化

確認したいポイントは、次の5つです。

チェック項目 見る理由
① 自己資本が厚い 借金への依存が低いと、高金利に強い
② フリーキャッシュフローが安定 会計上の利益だけでなく、実際に現金を稼げているか
③ 配当性向に余裕がある 利益の100%近くを配当に回す会社より、50〜60%程度の会社のほうが減配に強い
④ 累進配当・DOE 一時的な利益の変動だけで配当を決めない会社は、老後の配当収入と相性が良い
⑤ 借り換えの負担が小さい 短期間に大きな借り換えが必要な会社は要注意

配当性向の考え方は、こちらの記事で詳しくまとめています。

8.日本の高配当株で、どう見るか🇯🇵

ここからは日本株です。筆者がいま特に重視したい順番は、次のとおりです。

配当利回り → 財務 → キャッシュフロー → 配当政策 → 信用力

以前なら「配当4%以上だから候補」でも良かったかもしれません。
これからは、「その4%を10年間払い続けられるか」を見る局面です。

業種ごとの見方の目安を、表にまとめます。これは特定の銘柄をすすめるものではなく、確認するときの視点です。

業種 見るポイント
通信 景気の影響が比較的小さく、現金収入が安定しやすい。設備投資と借入のバランスを確認
大手商社 資源価格のリスクはあるが、事業の分散、現金を生む力、自社株買いの継続を確認
大手銀行 利ざやの拡大だけでなく、信用コスト、債券の含み損、自己資本を確認
建設 受注残と価格転嫁力に加え、人件費・資材高・借入の負担を確認
内需ディフェンシブ 海外景気が悪化したときに、相対的に落ち着きやすい傾向がある

9.今後チェックしたい「5つの警戒ランプ」🚦

では、何を見ればよいのでしょうか。筆者なら、次の5つを毎週眺めます。

毎週チェックしたい5つの警戒ランプ

① 米ハイイールド債スプレッド

最重要の指標です。10月2日時点は3.10%、10月5日は3.12%でした。ここが急に広がると、信用不安のサインになります。

② BBB格社債

低格付けだけでなく、BBB格まで不安が広がるかを確認します。10月2日・5日時点は1.04%で、まだ落ち着いています。BBBは「投資適格」の一番下の格付けです。ここまで悪化すると、市場全体への影響が大きくなります。

③ 銀行株

国債の金利が上がっても、銀行株が上がらなくなったら注意です。市場が「利ざや改善」より「信用コストの増加」を気にし始めた可能性があります。

④ VIX(恐怖指数)

株式市場の不安の大きさを示す指数です。スプレッドの拡大とVIXの上昇が同時に進むと、警戒度が上がります。

⑤ 小型株

大型株より先に、小型株が崩れることがあります。小さな会社ほど、借入コストの影響を受けやすいからです。

10.「警戒ゾーンの入り口」と考える理由🟠

ここは大切なところです。

筆者は現時点で、「金融危機が始まった」と考えるのは早いと思います。
一方で、「何も心配する必要はない」という段階でもありません。

市場の警戒ゾーン5段階。いまは信用スプレッド拡大の段階に注目

🟢 平常 → 🟡 金利上昇 → 🟠 信用スプレッド拡大(いま注目する場所) → 🔴 BBB格まで信用悪化 → 🔴 銀行・企業の資金調達の問題

現在は「警戒ゾーンの入り口」と考えておくのが、ちょうどよいでしょう。
ただし、これは筆者の見立てであり、今後の相場を予想するものではありません。

11.こう動く、という考え方🛠️

ここで慌てて、高配当株を全部売る必要はありません。
むしろ、銘柄を入れ替える準備をしておくのがよいでしょう。

見直しを考えたい企業 保有を続けやすい企業
高配当だが借金が多い 累進配当、DOEを採用している
配当性向が高すぎる 自社株買いを続けている
フリーキャッシュフローが弱い キャッシュフローが強い
景気悪化で一気に利益が落ちる 景気への耐性が高い
単にPBRが低いだけ 自己資本が厚く、借金が少ない

つまり、「高配当株」から「高品質な高配当株」へ、少しずつ軸足を移していくということです。

売るときは、税金や手数料、新NISAの枠の使い方も考える必要があります。一度にやらず、数か月に分けて見直すほうが、判断の失敗を減らせます。

12.債券との比べ方も変わった💴

もう一つ、大きな変化があります。国債の利回りそのものが高くなったことです。

米国債の利回りが5%前後まで上がると、配当利回り4%の株を持つ意味を、以前より慎重に考える必要があります。
株には「配当+値上がり」がありますが、同時に「減配+値下がり」もあります。

一方、満期まで持つ国債なら、国が破綻しない限り、受け取る利息と元本は決まっています。信用リスクは極めて小さいといえます。

ただし、日本の投資家が米国債を持つ場合は、為替の変動で円に直した金額が増減します。途中で売れば、金利の動きによる値下がりもあります。
この点は、こちらの記事で詳しく比べています。

米国債の価値を評価する運用会社の声も報じられています(PIMCOについての10月6日の報道。元の発言までは確認できていません)。
そのうえで、50〜60代では、株式100%で高配当を追う必要性は、以前より低くなったとも考えられます。
どのくらいの割合にするかは、年金の見込み、働き方、生活費によって人それぞれです。迷うときは、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談するのも一つの方法です。

まとめ|「割安株を買う」から「信用力を見る」へ✨

今回、いちばん伝えたかったことをまとめます。

これまでのバリュー株相場では、PER、PBR、配当利回りを見るだけでも、ある程度の成果が得られました。
しかし金利がさらに高くなると、見る数字が変わります。

  • 有利子負債(利息のつく借金)
  • 利払いの負担
  • フリーキャッシュフロー
  • 格付け
  • 信用コスト
  • 自己資本

バリュー投資の第1幕「安い株を買う」から、第2幕「財務の強い割安株を選ぶ」へ。

市場が完全な危機に入ったわけではありません。
ただ、信用市場が動き始めた今、「警戒ゾーンの入り口」には立っていると考えて、ポートフォリオの中身を一度確認しておく価値はありそうです。

特に50〜60代の資産運用では、「いちばん上がる株」を探すことより、「次の下落相場でも配当を払い続けられる企業」を持つことのほうが大切ではないでしょうか。

高配当株投資も、利回りの高さを見る時代から、配当の持続力を見る時代へ。2026年秋は、その転換点になる可能性があります。

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【免責事項】
本記事は2026年10月7日時点の公開情報をもとに作成した情報提供を目的としたものです。特定の銘柄・金融商品の売買を推奨するものではありません。数値は出典の更新により変わることがあり、将来の成果を保証するものではありません。投資の最終判断は、ご自身の責任で行ってください。

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