2026年7月24日、大和アセットマネジメントから「iFreePlus 増配・高配当日本株(年4回決算型)」が新規設定されます。過去の連続増配実績ではなく、今期の増配実現性をスコア化して先回りするという新しい発想のファンドです。信託報酬0.275%、年4回決算、成長投資枠の対象。この記事では、仕組みと魅力を整理したうえで、日本版SCHDと呼ばれるSBI日本高配当株式(分配)ファンド、日経連続増配株指数との違いを比較し、定年前後の方が注意すべき点をまとめます。
高配当株や高配当ファンドに関心をお持ちの方であれば、「増配」という言葉に良い印象をお持ちだと思います。
配当が毎年増えていく銘柄を持っていれば、買った時の株価に対する実質的な利回りは年々上がっていきます。退職後の生活費の一部を配当でまかないたいと考えている方にとって、増配は物価上昇に対する備えにもなります。
その「増配」を正面から掲げた投資信託が、2026年7月24日に新しく設定されます。大和アセットマネジメントの「iFreePlus 増配・高配当日本株(年4回決算型)」です。
ただ、日本の高配当ファンドには、すでに人気商品があります。純資産2,000億円を超えた通称「日本版SCHD」ことSBI日本高配当株式(分配)ファンドや、連続増配銘柄を集めた日経連続増配株指数に連動するファンドです。
新しく出るからといって、それが自分に合うとは限りません。この記事では、新ファンドの中身を確認したうえで、既存の高配当ファンドと何がどう違うのかを比較し、定年前後の方が判断するための材料を整理します。
iFreePlus 増配・高配当日本株とはどんなファンドか
まず、基本的な情報を確認しておきましょう。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 運用会社 | 大和アセットマネジメント |
| 設定日 | 2026年7月24日 |
| 投資対象 | 日本の上場株式(約30銘柄) |
| 信託報酬 | 年率0.275%(税込) |
| 購入時手数料 | なし |
| 決算 | 年4回(1月・4月・7月・10月) |
| NISA | 成長投資枠のみ対象 |
| 銘柄入替 | 原則として月次でリバランス |
注目していただきたいのは、つみたて投資枠では買えないという点です。年4回の決算で分配金を出す設計のため、つみたて投資枠の対象からは外れています。新NISAで購入する場合は、成長投資枠を使うことになります。
信託報酬は年率0.275%です。約30銘柄を独自の基準で選び、しかも毎月見直しを行うアクティブ運用としては、抑えられた水準といえます。
最大の特徴は「増配スコア」──過去ではなく未来を見る
このファンドの一番の特徴は、銘柄の選び方にあります。
一般的な増配ファンドは、「過去に何年連続で増配してきたか」という実績で銘柄を選びます。これに対してiFreePlusは、今期の本決算で本当に増配しそうかを企業データから点数化し、点数の高い企業を選びます。運用会社はこれを「増配スコア」と呼んでいます。
スコアは、次の3つの視点から算出されます。
| 視点 | 見ているもの | 主な指標 |
|---|---|---|
| ①増配の「原資」を生む力 | 稼ぐ力があるか | 売上高利益率、利益成長率、予想ROE |
| ②増配を「支える」余力 | 財務に余裕があるか | キャッシュフロー利回り、ネットキャッシュ/総資産 |
| ③配当方針の「意思」と方向性 | 株主に還元する姿勢があるか | 予想配当・配当利回りの実績と会社予想の差 |
この3つは、稼ぐ力・財務余力・還元姿勢と言い換えられます。実は、私たちが個別の高配当株を自分で選ぶときに見る視点と、まったく同じものです。
分かりやすく言えば、健康診断に似ています。
これまで皆勤賞を続けてきた人(=連続増配銘柄)を選ぶのか。
それとも、今年の健康診断の数値が良好で、今年も元気に働けそうな人を選ぶのか。
前者が従来の連続増配ファンド、後者がこのiFreePlusの発想です。皆勤賞の人は確かに信頼できますが、体調を崩す可能性はあります。逆に、これまで記録がなくても、今の数値が良ければ今年は問題ないかもしれません。過去の実績を見るか、今の状態から先を読むかという違いです。
銘柄が選ばれるまでの流れ
実際の選定は、次の順序で進みます。
- 国内の上場株式から、規模と流動性を考慮して時価総額上位500銘柄程度に絞る
- 各銘柄の増配スコアを算出する
- 増配スコアと配当利回りの水準でグループ分けし、どちらも高いグループを投資候補として抽出する
- 候補の中から配当利回りの高い順に30銘柄程度を選定する
- 各銘柄を均等ウェイトで保有する
ポイントは、増配スコアと配当利回りの両方が高い銘柄に絞っていることです。利回りだけを見ると、業績が悪化して株価が下がった結果として利回りが高く見えている、いわゆる「見せかけの高利回り」を拾ってしまいます。増配スコアという網をかけることで、それを避けようという設計です。
そして、選んだ銘柄をずっと持ち続けるのではなく、原則として毎月見直します。増配の見込みが薄れた銘柄は外し、新たに条件を満たした銘柄を入れる、という運用です。
運用会社のシミュレーションが示す数字と、その読み方
運用会社が公表しているシミュレーション(過去データを使った試算)では、次のような結果が示されています。
| 比較対象 | 累積(2016年5月=100) | 配当利回り |
|---|---|---|
| 「増配・高配当」戦略(シミュレーション) | 751 | 4.30% |
| 日経平均高配当株50指数 | 519 | 3.62% |
| TOPIX | 363 | 2.24% |
また、単純に配当利回りの上位30銘柄を選んだ場合、実際に増配となった銘柄の割合は平均で49%にとどまるのに対し、増配スコアを使った場合はその精度が大きく高まる、という説明もなされています。
数字だけを見れば、非常に魅力的に映ります。ただし、ここは慎重に受け止める必要があります。
これらはすべて過去のデータを使った試算であり、実際の運用実績ではありません。設定は2026年7月24日ですから、この記事を書いている時点では、実績は1日分もありません。
過去データを使った試算は、どうしても良い結果が出やすい性質を持っています。ルールを作る段階で、すでに過去の結果が分かっているためです。テストの答えを見てから解答方法を考えれば、高得点が出るのは当然です。問題は、次のテストでも同じ点が取れるかどうかです。
実際の運用では、想定した価格で売買できなかったり、増配を見込んだ企業が減配したりします。シミュレーションは「この戦略には過去において合理性があった」という裏付けとして受け取り、将来の成績を約束するものとは考えないことが大切です。
日本版SCHD・日経連続増配株指数との比較
ここからが本題です。日本の高配当ファンドには、すでに実績のある選択肢があります。名前は似ていても、中身の思想はかなり違います。
| 比較項目 | iFreePlus 増配・高配当日本株 | SBI日本高配当株式(分配) (通称:日本版SCHD) |
iFreeNEXT 日経連続増配株指数 |
|---|---|---|---|
| 運用会社 | 大和アセットマネジメント | SBIアセットマネジメント | 大和アセットマネジメント |
| 設定 | 2026年7月24日 | 2023年12月12日 | 2023年11月22日 |
| 信託報酬 | 年率0.275% | 年率0.099% | 年率0.275% |
| 純資産総額 | これから(信託金限度額2,000億円) | 約2,149億円 | 約15億円 (資産成長型) |
| 銘柄数 | 約30銘柄 | 約30銘柄 | 約70銘柄 |
| 選定の考え方 | 今期の増配実現性をスコア化して先回り | 配当利回り+財務健全性+割安さ | 原則10年以上の連続増配実績で順位付け |
| 見直し頻度 | 原則月次 | 定期的な見直し | 年1回(毎年6月) |
| 運用実績 | なし(これから) | 約2年半 | 約2年半 |
※純資産総額は2026年7月17日時点。iFreeNEXT 日経連続増配株指数には資産成長型と年4回決算型があり、上表は資産成長型の数値です。
日本版SCHDとの違い|コストと実績では明確に分がある
SBI日本高配当株式(分配)ファンドは、米国の人気ETF「SCHD」になぞらえて日本版SCHDと呼ばれています。配当利回りに加えて、財務の健全性や株価の割安さも見て銘柄を選ぶファンドです。
両者の違いを一言でいえば、こうなります。
- 日本版SCHD:今、利回りが高くて財務が健全で割安な銘柄を選ぶ
- iFreePlus:今、利回りが高くてこれから増配しそうな銘柄を選ぶ
日本版SCHDも配当方針は当然考慮しますが、「増配」を前面に出してはいません。ここがiFreePlusの独自性です。
一方で、コストと実績では日本版SCHDに明確な分があります。信託報酬は年率0.099%で、iFreePlusの0.275%の約3分の1です。純資産総額も2,000億円を超え、設定から2年半の実績があります。
信託報酬の差である年0.176%は、一見わずかに見えるかもしれません。しかし、500万円を20年間運用した場合、累計では十数万円の差になります。長期保有を前提とするシニアの方にとって、この差は無視できません。
日経連続増配株指数との違い|「増配」の意味が正反対
日経連続増配株指数は、原則10年以上の連続増配を続けている銘柄を、連続年数でランク付けして上位70銘柄で構成される指数です。連動するファンドとして、iFreeNEXT 日経連続増配株指数があります。設定は2023年11月で、iFreePlusと同じ大和アセットマネジメントの商品です。
ただし、こちらは純資産総額が約15億円(資産成長型、2026年7月17日時点)と、規模はまだ大きくありません。指数の考え方は堅実ですが、日本版SCHDのような資金の集まり方には至っていないのが現状です。
同じ「増配」という言葉を使っていますが、アプローチは正反対です。
| 日経連続増配株指数 | iFreePlus 増配・高配当 | |
|---|---|---|
| 重視するもの | 過去の連続増配実績 | 今期の増配見込み |
| 銘柄の顔ぶれ | 安定した優良企業が中心 | 利回りの高い成熟企業が中心 |
| 配当利回り | 相対的に低め | 相対的に高め |
| 入替頻度 | 年1回 | 原則月次 |
連続増配株指数は、増配実績を最優先するため、必然的に利回りは控えめになります。増配を長年続けられる企業は市場から評価され、株価が高くなりやすいためです。「配当は少なめでも、確実に増えていく安心感」を買う商品といえます。
対してiFreePlusは、まず高い利回りを確保したうえで、増配の可能性を上乗せしようとします。今の配当収入を重視するならiFreePlus、将来にわたる安定性を重視するなら連続増配株指数という整理になります。信託報酬はどちらも0.275%で同じです。
配当ローテーション型(435A)との違い
もう一つ、名前が紛らわしい商品があります。2025年10月に東証へ上場した「iFreeETF 日本株配当ローテーション戦略(435A)」です。
こちらは、3か月以内に配当の権利が確定する銘柄を買い、権利を取ったら次の銘柄へ乗り換えていく戦略です。配当を効率よく受け取ることを目的としており、増配を狙うiFreePlusとは目的そのものが違います。名前が似ているからといって、混同しないようご注意ください。
定年前後の方が特に注意したい5つの点
ここからは、購入を検討する前に必ず知っておいていただきたい点を5つ挙げます。
①リターンの正体は「配当」ではなく「値上がり」
先ほどのシミュレーションで、戦略の累積が751まで伸びた要因の大部分は、実は配当ではなく株価の値上がりによるものです。
これは考えてみれば当然です。「この会社は今後も配当を増やせそうだ」と市場が判断すれば、その株は買われて株価が上がります。増配期待が株価を押し上げるという流れです。
つまり、このファンドは「配当だけで着実に儲かる商品」ではありません。株価が伸び悩む局面では、配当を受け取ってもトータルではほとんど増えない、あるいはマイナスになる年もあり得ます。値動きのある株式投資であることを忘れないでください。
②毎月の入れ替えに伴う「隠れコスト」
信託報酬0.275%は良心的な水準です。しかし、投資信託には信託報酬以外にもコストがかかります。
このファンドは原則として毎月銘柄を入れ替えます。売買のたびに売買委託手数料が発生し、それは基準価額から日々差し引かれます。信託報酬と違い、目論見書に「年率何%」と明記されるものではありません。
サッカーチームにたとえれば分かりやすいでしょう。毎月レギュラーを入れ替えれば、常に調子の良い選手を起用できます。しかし入れ替えのたびに移籍にかかる費用が発生し、チームの財布から出ていきます。
実際の負担額は、運用開始から1年後に公表される運用報告書の「実質コスト」で確認できます。信託報酬0.275%に対して実質コストがどの程度になるのかは、現時点では誰にも分かりません。
③分配金は「増えたお金」とは限らない
年4回の決算で分配金が出るのは、生活費の足しにしたい方にとって魅力的です。ただし、投資信託の分配金の仕組みは、正しく理解しておく必要があります。
分配金は、ファンドの財産の中から支払われます。分配金が出れば、その金額のぶんだけ基準価額は下がります。どこかから利益が湧いてくるわけではありません。
さらに注意が必要なのが、運用がうまくいっていない時期です。この場合、分配金の一部が元本払戻金(特別分配金)となることがあります。俗に「タコ足配当」と呼ばれるもので、タコが自分の足を食べているように、投資した元本の一部が戻ってきているだけの状態です。
分配金を受け取ると、その分は再投資されないため、複利の効果は働きにくくなります。資産を増やす目的なら分配頻度の低い商品、今の生活費を補う目的なら年4回決算の商品、というように、ご自身の目的から選ぶことが大切です。
④30銘柄でも業種は偏る
シミュレーション時点の組入銘柄を見ると、金融、不動産、建設、素材といった業種が目立ちます。これは運用の巧拙ではなく、構造的な特徴です。
高い配当を出せるのは、成長投資に資金を回す必要が少ない成熟企業です。そうした企業は特定の業種に集まりやすく、高配当・増配を狙えば自然と業種が偏ります。
問題は、これらの業種が景気や金利の動きに敏感で、景気悪化時にまとめて売られやすいことです。30銘柄に分散していても、業種が偏っていれば分散効果は限定的になります。
また、AIや半導体が相場を牽引する上昇局面では、市場平均に見劣りしやすい傾向もあります。下落相場に粘り強い反面、上げ相場には乗り切れない。この性格は、あらかじめ理解しておくべきでしょう。
⑤すでに個別の高配当株を持っている方は「重複」に注意
これは、実際に高配当株を保有している方に特にお伝えしたい点です。
このファンドが選ぶのは、時価総額上位500銘柄の中の高配当銘柄です。つまり、日本の高配当株投資家が個別で保有している銘柄と、大きく重なる可能性があります。
分散のつもりで購入したのに、結果として同じ業種・同じ銘柄への集中度を高めてしまう。これは避けたい事態です。購入を検討する際は、必ずご自身の保有銘柄と照らし合わせてください。
どんな人に向き、どんな人は見送りでよいか
ここまでの内容を踏まえて、整理します。
| 検討してもよい方 | 見送りでよい方 |
|---|---|
| 定期的な配当収入は欲しいが、個別株選びの手間は避けたい | コストを最優先したい(日本版SCHDに分がある) |
| 銘柄選定と毎月の見直しをプロに任せたい | 実際の運用実績を見てから判断したい |
| 「増配を先回りする」という発想に共感できる | すでに日本の高配当株・高配当ファンドを十分持っている |
| 成長投資枠に余裕がある | つみたて投資枠で完結させたい |
私自身の考えを申し上げると、慌てて設定日に飛びつく必要はないと思っています。
理由は3つあります。第一に、実質コストが運用開始後にしか分からないこと。第二に、実際の分配金がいくらになるか未知数であること。第三に、増配スコアという仕組みが実際の相場でどう機能するかは、少なくとも1回の決算期を経ないと判断できないことです。
新しい商品は、どうしても情報が「これから」の話ばかりになります。半年から1年ほど様子を見て、運用報告書で実質コストを確認し、分配金の実績と基準価額の推移を見てから判断しても、決して遅くはありません。
なお、このファンドが見ている「稼ぐ力・財務余力・還元姿勢」という3つの視点は、私たちが自分で高配当株を選ぶときの視点とまったく同じです。この選定作業を信託報酬0.275%でプロに任せるのか、それとも自分の目で選んで直接個別株を買うのか。後者を選べば、有望な銘柄に薄まらずに投資でき、割安なタイミングを自分で選べるという利点もあります。
まとめ|「新登場」より「自分の目的」から考える
iFreePlus 増配・高配当日本株は、過去の実績ではなく今期の増配実現性をスコア化して先回りするという、これまでにない発想のファンドです。信託報酬0.275%、年4回決算、約30銘柄を毎月見直すという設計は、戦略としては十分に魅力的です。
一方で、押さえておくべき点も明確です。
- 好成績はすべて過去データによる試算であり、運用実績はまだない
- 試算で伸びた要因の大部分は配当ではなく株価の値上がりによるもの
- 毎月の入れ替えに伴う売買コストは、実質コストが公表されるまで分からない
- 分配金が元本払戻金になる可能性がある
- 金融・不動産・建設・素材などへの業種の偏りが生じやすい
既存の選択肢と比べると、コストと実績では日本版SCHD(年率0.099%、純資産約2,149億円)に明確な分があります。将来にわたる配当の安定性を重視するなら、日経連続増配株指数に連動するファンドという選択肢もあります。
大切なのは、どれが優れているかではなく、ご自身が何を求めているかです。今の配当収入なのか、将来の増配なのか、コストの低さなのか、実績の安心感なのか。その答えによって、選ぶべき商品は変わります。
新しい商品の登場は、自分の投資方針を見直す良い機会でもあります。今お持ちの資産全体を眺めて、日本株の高配当がどのくらいの比率を占めているか、業種の偏りはないか、この機会に確認してみてはいかがでしょうか。
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本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品について購入・売却を推奨するものではありません。記載した数値は2026年7月時点で公表されている情報にもとづくものであり、シミュレーション結果は過去のデータによる試算であって、将来の運用成果を示唆または保証するものではありません。ファンドの取扱いは販売会社によって異なる場合があります。最新の情報は運用会社および販売会社の交付目論見書をご確認のうえ、投資判断はご自身の責任で行ってください。


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