証券担保ローンは老後資産に使えるか――金利上昇時の危険ライン|株を売らずに借りるリスクを考える

「3,000万円分の株を持っている。でも、急に300万円の現金が必要になった」

もし、あなたがこの立場だったら、どうしますか。

  • 株を300万円分だけ売る
  • 預貯金を取り崩す
  • 証券担保ローンで300万円を借りる

3つ目の証券担保ローンなら、株を売らずに現金を手に入れられます。配当も受け取り続けられる。「配当をもらいながら借りられるなら、むしろ得なのでは?」——そう感じた方も多いと思います。

ただ、この考え方には見落としやすい落とし穴があります。

株価が下がっても、借金は減らないのです。

資産は3,000万円から1,500万円に半減することがあっても、借りた300万円は300万円のまま。さらに変動金利であれば、そこに金利上昇まで重なります。これが、老後資産で証券担保ローンを使うときの最大のリスクです。

この記事では、証券担保ローンの仕組みを一から確認したうえで、「老後資産では、どこからが危険ラインなのか」を数字で整理していきます。結論を先にお伝えすると、こうなります。

証券担保ローンは「一時的に現金をつくる道具」としては便利。
しかし「老後の生活費を補うために借り続ける道具」として使ってはいけない。
考えるべきは「最大いくら借りられるか」ではなく「株価が40〜50%下がっても返済を迫られない金額はいくらか」です。

  1. そもそも証券担保ローンとは? 仕組みを図で理解する
    1. 時価=借りられる金額、ではない
  2. なぜ今、老後資金と証券担保ローンが結びつくのか
    1. ① 長年育てた株を売らなくて済む
    2. ② 配当を受け取り続けられる場合がある
    3. ③ 売却益への課税が、その時点では発生しない
    4. ④ 一時的な資金需要に対応できる
  3. 2026年、証券担保ローンの金利も確実に上がっている
    1. 「基準金利」と「実際に払う金利」は別物です
  4. 本当の危険は「金利」より「株価下落」
    1. LTV(担保融資比率)という物差し
  5. 「30%しか借りていない」は、安全という意味ではない
    1. 金利上昇も同時に効いてくる
  6. 金融機関の「強制売却ライン」を知っておく
  7. 老後資産で最も怖いのは「暴落時の強制売却」
    1. シーケンスリスクを自分から増幅させてしまう
  8. 金利上昇時の危険ライン——CP式・危険度の目安
  9. 「配当4%、金利3%なら差額1%が儲かる」は成り立つか
    1. 借りたお金で高配当株を買うのは、レバレッジ投資です
  10. 3,000万円の老後資産なら、いくらまで借りてよいか
  11. とすが考える「老後の証券担保ローン5原則」
    1. 原則① 借入可能額まで借りない
    2. 原則② 初期LTVは10%前後を一つの目安に
    3. 原則③ 株価50%下落でストレステストする
    4. 原則④ 借入額と同程度の返済手段を別に用意する
    5. 原則⑤ 生活費を借金で賄わない(最重要)
  12. 使ってよい場面と、避けたい場面
  13. 現金を持つことも、ひとつの「利回り」である
  14. まとめ:証券担保ローンは「非常用の出口」と考える
  15. 免責事項
    1. 参考にした一次情報(2026年8月19日確認)

そもそも証券担保ローンとは? 仕組みを図で理解する

証券担保ローンとは、株式・投資信託・債券などの有価証券を売らずに、担保として金融機関に差し入れてお金を借りる仕組みです。銀行の住宅ローンで「家」を担保にするのと同じことを、「株」で行うとイメージしてください。

証券担保ローンの仕組み。保有株式を担保に差し入れ、担保掛目で評価され、借入可能額が決まる流れを示した図解
図表① 証券担保ローンの仕組み

時価=借りられる金額、ではない

ここで最初に押さえてほしいのが、3,000万円分の株を預けても、3,000万円借りられるわけではないということです。

借入可能額は、次のように決まります。

借入可能額 = 担保にする有価証券の時価 × 担保掛目(かけめ)

担保掛目とは、担保をどれくらい割り引いて評価するかの比率です。株価は動くものなので、金融機関は時価をそのままは認めません。

たとえば日本証券金融(日証金)のコムストックローン(SBI証券提携)の商品説明では、担保有価証券の60%までが融資可能額とされています。しかも1銘柄への集中度が高い場合(1銘柄の時価が担保全体の70%以上を占める場合)は50%に下がります。野村信託銀行の「野村Webローン」でも、時価の50〜80%程度が借入可能額として案内されています。

掛目・対象商品・融資限度額は金融機関ごとに違い、変更もされます。実際に検討する際は、必ずその時点の公式の商品説明書を確認してください。

なぜ今、老後資金と証券担保ローンが結びつくのか

50代・60代の方にこの商品が注目される理由は、大きく4つあります。

① 長年育てた株を売らなくて済む

20年かけて買い増してきた高配当株、含み益の乗った投資信託。「これを崩したくない」という気持ちは、資産形成をしてきた人ほど強いものです。担保に入れるだけなら、保有そのものは続けられます。

② 配当を受け取り続けられる場合がある

商品にもよりますが、担保に入れた株をそのまま保有できるタイプであれば、配当や分配金は引き続き受け取れるケースがあります。65歳から始める高配当株投資のように、配当を生活の柱にしている方にとっては、この点は魅力に映るはずです。

③ 売却益への課税が、その時点では発生しない

特定口座で含み益のある株を売れば、利益に対して課税されます。証券担保ローンは「売らない」ので、借入の時点では売却益は発生しません。

ただし、これを「節税商品」と考えるのは正確ではありません。売らずに先送りしているだけで、税金が消えるわけではないからです。NISA口座であればそもそも売却益は非課税なので、シニア世代の新NISA戦略のように非課税枠を先に使い切る方が素直な選択になる場面も多くあります。

④ 一時的な資金需要に対応できる

次のような「金額が読めて、期限も読める」支出とは相性が比較的良い商品です。

  • まとまった医療費・介護費用
  • 自宅の修繕費
  • 相続税・所得税などの納税資金
  • 不動産の買い替えにおけるつなぎ資金
  • 子や孫への一時的な支援

逆にいえば、ここに「毎月の生活費」は入っていません。その理由は、記事の後半で詳しくお話しします。

2026年、証券担保ローンの金利も確実に上がっている

「証券担保ローンは1%台で借りられる」——数年前の記事にはそう書かれていました。しかし、日銀の利上げ局面に入った今、その前提はすでに崩れています。

執筆時点(2026年8月)で確認できる公式情報を並べてみます。

商品 金利(変動) 直近の改定
野村Webローン
(野村信託銀行)
年2.40% 2026年7月15日より適用
楽天銀行 証券担保ローン
(基準金利=短プラ)
年2.375% 2026年8月3日より
(前期間は年2.125%)
コムストックローン
(日証金・SBI証券提携)
年3.0〜5.0% 2026年8月1日現在
図表② 主な証券担保ローンの金利(2026年8月時点・各社公式サイトより)

「基準金利」と「実際に払う金利」は別物です

ここは間違えやすいので、丁寧に見ておきましょう。

楽天銀行の証券担保ローンでは、基準金利(短期プライムレート)とは別に、借入残高に応じた適用金利が決まります。公式サイトによれば、2026年9月1日以降は次のとおりです。

借入残高(元本) 適用金利(2026年9月1日〜)
1,000万円超 年2.375%
100万円超〜1,000万円以下 年3.375%
100万円以下 年4.375%

つまり、少額しか借りない人ほど金利は高いという構造です。「証券担保ローンは2%台」というイメージのまま300万円を借りると、実際には3%台後半ということが起こり得ます。

そしてこれらは、ほぼすべて変動金利です。日銀の利上げが続く局面では、借りたあとに金利が上がっていきます。半年で0.25%上がった実績が、まさに上の表に表れています。

💡 ここまでのポイント:証券担保ローンの金利は「借りたときの数字」で固定されません。今後さらに上がる前提で、返済計画を立てる必要があります。

本当の危険は「金利」より「株価下落」

ここからが、この記事でもっともお伝えしたい部分です。

証券担保ローンで怖いのは、実は金利そのものではありません。担保にしている株が下がったときに、比率が急変することです。

LTV(担保融資比率)という物差し

LTV(Loan to Value)=担保にしている資産に対して、どれくらい借金しているかを示す比率のことです。日本語では「担保融資比率」と呼ばれます。

LTV = 借入残高 ÷ 担保にしている資産の時価

3,000万円の株を担保に900万円を借りたとしましょう。

900万円 ÷ 3,000万円 = LTV 30%
「7割は余裕がある」——そう見えます。

では、株価が40%下がったらどうなるでしょうか。

3,000万円の株を担保に900万円借りた場合、株価30%・40%・50%下落でLTVが30%から60%へ上昇することを示す棒グラフ
図表③ 株価下落でLTVはこう動く

担保資産は3,000万円から1,800万円へ。しかし借金は900万円のままです。

900万円 ÷ 1,800万円 = LTV 50%

さらに50%下落すれば、1,500万円に対して900万円でLTV 60%

株価が半分になっただけで、LTVは30%から60%へ倍増する。これが証券担保ローンの一番怖い性質です。借金は自分では減ってくれません。分母だけが勝手に小さくなっていくのです。

「30%しか借りていない」は、安全という意味ではない

担保3,000万円のケースで、借入額別に「暴落後のLTV」を並べてみます。

借入額 今のLTV 30%下落 40%下落 50%下落
300万円 10% 約14.3% 約16.7% 20.0%
600万円 20% 約28.6% 約33.3% 40.0%
900万円 30% 約42.9% 50.0% 60.0%
図表④ 担保3,000万円・借入額別のLTVストレステスト

表を縦に見ると、借入300万円(LTV10%)なら株価が半分になってもLTVは20%にとどまります。一方、借入900万円は60%まで跳ね上がる。同じ「3,000万円の資産家」でも、耐久力はまったく別物です。

👉 判断すべきなのは「現在のLTV」ではなく、「暴落後のLTV」です。

金利上昇も同時に効いてくる

参考までに、年間の利息額も見ておきましょう。

借入額 金利2% 金利3% 金利4% 金利5%
300万円 6万円 9万円 12万円 15万円
600万円 12万円 18万円 24万円 30万円
900万円 18万円 27万円 36万円 45万円
図表⑤ 年間の利息額(単純計算・税金や手数料は考慮せず)

900万円を金利5%で借りれば、年45万円。年金以外の収入が限られる老後で、毎年45万円の利息を払い続けるのは決して軽い負担ではありません。

金融機関の「強制売却ライン」を知っておく

LTVが上がると、何が起きるのか。ここは商品ごとに条件が決まっています。楽天銀行の証券担保ローンを例に見てみましょう(2026年8月時点の公式サイト記載)。

融資担保比率 起きること
60%超 新規の借入ができなくなる/担保設定済み銘柄の担保解除ができなくなる
85%超 担保設定銘柄すべてを売却依頼し、売却代金を返済に充当

楽天銀行のページには「85%を超えた場合、いかなる場合でも担保銘柄の売却を取り消すことはできない」という趣旨の記載があります。本人の意思では止められないということです。

また、日証金のコムストックローン(SBI証券提携)の商品説明では、担保時価に対する融資残高の割合が70%以上になった状態では、追加担保の差し入れか一部返済が必要とされています。

⚠️ ここで大事なのは、この60%・85%という数字は「楽天銀行の商品ルールの一例」にすぎないということです。担保掛目・追加担保・強制売却の条件・返済条件は、金融機関ごと、商品ごとに違います。必ずご自身が使う商品の説明書で確認してください。

老後資産で最も怖いのは「暴落時の強制売却」

では、実際に何が起きるのか。63歳のAさんを例に考えてみます。

  • 高配当株を中心に3,000万円保有
  • 自宅のリフォームと親の介護費用で900万円を借入(LTV30%)
  • 配当は年約120万円あり、利息(年3%で27万円)は十分払える

ここまでは、何の問題もないように見えます。実際、平常時であれば問題は起きません。

問題は、金融危機が起きたときです。株価が50%下落し、担保は1,500万円に。借金は900万円のままなので、LTVは60%。ここからさらに下げれば、追加担保か返済を求められる水準に入っていきます。

このとき、Aさんはこう思うはずです。「今は安すぎる。ここで売りたくない」

しかし証券担保ローンを使っている以上、その判断は自分の手を離れます。一番売ってはいけないタイミングで、株を売らされる可能性がある。これが老後資産にとって最悪の展開です。

シーケンスリスクを自分から増幅させてしまう

これは、シーケンスリスク(収益率配列のリスク)と同じ構造の問題です。取り崩し期に入った直後の暴落で資産を大きく減らすと、その後どれだけ相場が回復しても資産寿命は戻りにくくなります。

証券担保ローンは、この「一番弱い時期に売らされる」構造を、自分から強めてしまう道具になり得ます。最悪期を乗り越える力を優先するという考え方は、借入を検討する場面でこそ効いてきます。

金利上昇時の危険ライン——CP式・危険度の目安

「では、金利が何%になったら危ないのか」

この問いには、金利だけでは答えられません。次の3つの組み合わせで判断します。

  1. 借入金利(今後上がる前提で見る)
  2. LTV(借入比率)(暴落後の数字で見る)
  3. 返済原資(いつ、何で返すのか)

そのうえで、当ブログとしての目安を4段階に整理しました。

証券担保ローンの危険度を金利とLTVの組み合わせで緑・黄・橙・赤の4段階に整理した図
図表⑥ CP式・証券担保ローン危険度の目安
  • 🟢 比較的低リスク:金利2〜3%台 かつ LTV10%以下。しかも現金等ですぐ全額返せる
  • 🟡 注意ゾーン:金利3〜4%台 または LTV10〜20%。使い道と返済期限を明確にする
  • 🟠 警戒ゾーン:金利4〜5%台 または LTV20〜30%。株価40%下落のストレステストを必ず行う
  • 🔴 危険ゾーン:金利5%以上 または LTV30%超。特に生活費目的で使い続けている場合は危険度が高い

念のため強調しておきます。この4段階は、金融機関が定めた公式の安全基準ではありません。老後資産を守るために、当ブログが保守的に設定したストレステスト上の目安です。金融機関のルール(例:楽天銀行の60%・85%)とは別のものとして、あくまで自分を守る内側の線として使ってください。

「配当4%、金利3%なら差額1%が儲かる」は成り立つか

高配当株投資をしている方が、必ず一度は考える発想です。

配当利回り4%の株を持っていて、証券担保ローンの金利が2.5%なら、差額1.5%分が手元に残る——一見、筋が通っています。

しかし、この計算には抜けている要素が多すぎます。

  • 配当は保証されていない(減配・無配になれば前提が崩れる)
  • 配当には課税される課税口座なら約20%が差し引かれるため、手取り利回りは4%より低い)
  • 借入金利は変動する(2.5%が3.5%になれば差額はほぼ消える)
  • 株価が下がれば担保評価も下がる(利回りは変わらなくてもLTVは悪化する)
  • 強制売却されれば、配当そのものが失われる

手取りベースで考えれば、配当4%は税引後およそ3.2%。そこから金利3%台を払えば、差額はほぼゼロです。「配当利回り-借入金利」だけで判断してはいけない理由がここにあります。

借りたお金で高配当株を買うのは、レバレッジ投資です

「証券担保ローンで借りて、その資金でさらに高配当株を買う」

この方法は、実質的に借金で投資規模を膨らませるレバレッジ投資です。上げ相場では効きますが、下げ相場では損失も同じ倍率で拡大し、しかもLTVが悪化して強制売却の可能性が高まります。

当ブログとしては、老後資産においてこの使い方は推奨しません。資産を増やす局面ならともかく、守る局面で採る手法ではないと考えています。

3,000万円の老後資産なら、いくらまで借りてよいか

具体的に考えてみましょう。

年齢 62歳
金融資産 3,000万円
年間生活費 400万円
年金収入 220万円
年間配当 120万円
不足額 年60万円

ここで「不足する60万円を毎年借りれば、株を1株も売らずに済むのでは?」という発想が出てきます。実際にやるとどうなるか。

  • 1年目:借入60万円
  • 5年目:借入残高300万円
  • 10年目:借入残高600万円 + 利息(金利3%なら累計およそ100万円)

10年で約700万円の借金です。しかも金利は変動。72歳になったとき、返済原資はどこにあるでしょうか。年金は増えません。むしろ、この間に株価が40%下落していれば、担保は1,800万円、LTVは約39%。危険ゾーンの入口です。

これは生活費という「毎年必ず発生する支出」を、借金で埋めている状態です。返済のあてがないまま残高だけが増えていく構造なので、時間が経つほど選択肢が減ります。

老後資金の基本は、あくまでこの順番です。

生活費の不足 → ①配当・分配金 → ②手元の現金 → ③必要に応じた資産の売却

③の売却を避けるために借金を挟むのではなく、③をどう計画的に行うかを設計する。それが4%ルールなどの取り崩し戦略であり、65歳までにキャッシュフローを完成させるという考え方です。

とすが考える「老後の証券担保ローン5原則」

ここまでを踏まえ、老後資産で証券担保ローンを使う場合の原則を5つにまとめます。

原則① 借入可能額まで借りない

「3,000万円の株なら1,800万円まで借りられます」と言われても、それは上限であって適正額ではありません。上限は金融機関の都合で決まる数字です。

原則② 初期LTVは10%前後を一つの目安に

3,000万円なら300万円程度。これなら株価が半分になってもLTVは20%にとどまります。※これも公式基準ではなく、当ブログの保守的な目安です。

原則③ 株価50%下落でストレステストする

借りる前に、必ず紙に書いて計算してください。「半分になったら、私のLTVは何%になるか」。この数字を見て平気でいられる金額が、あなたの上限です。

原則④ 借入額と同程度の返済手段を別に用意する

現金、短期の国債、定期預金など、相場に左右されずに返せる資産を確保しておく。これがあれば、暴落時に「株を売る以外の選択肢」が残ります。

原則⑤ 生活費を借金で賄わない(最重要)

4つ目までを守っていても、これを破ると意味がありません。生活費は借金では解決できません。収入を増やすか、支出を見直すか、資産を計画的に取り崩すか。この3つで対応するのが原則です。

使ってよい場面と、避けたい場面

⭕ 比較的相性が良い ❌ 避けたい
相続税・所得税などの納税資金 毎月の生活費の補填
まとまった医療費・介護費用 旅行・趣味・娯楽費
不動産売買のつなぎ資金 借りた資金でさらに株を買う
自宅の修繕・リフォーム 配当目的のレバレッジ投資
数か月〜1年で返済原資が入る予定がある 返済時期も原資も決まっていない
担保が複数銘柄に分散している 担保が1銘柄に集中している
借入時点のLTVが低い 下落時に追加資金を用意できない
図表⑦ 使ってよいケース/避けたいケース

左右を見比べると、境目がはっきりしてきます。「いつ、何で返すか」が決まっているかどうか。ここが唯一にして最大の分かれ目です。

現金を持つことも、ひとつの「利回り」である

退職後に現金を多めに持っていると、「運用できていない」「機会損失だ」と感じる方がいます。証券担保ローンに惹かれるのも、根っこは同じ気持ちかもしれません。「現金を作りたいが、株は運用したままにしたい」からです。

しかし、老後資産における現金には、数字に表れにくい価値があります。

暴落時に、株を売らなくて済む。

これは、証券担保ローンが抱えるリスクの正反対です。現金があれば、下落局面で追加担保も強制売却も関係なく、ただ待っていられる。この「待てる力」こそが、老後資産の生存率を左右します。

現金は「利益を生まない資産」ではなく、強制売却を防ぐ保険と考えてみてください。保険料として多少の機会損失を払っている、という整理のほうが、老後資産の実態には合っています。生活費の2〜3年分を現金で確保しておけば、そもそも証券担保ローンを検討する場面自体が減ります。

まとめ:証券担保ローンは「非常用の出口」と考える

証券担保ローンは、悪い金融商品ではありません。金融資産を多く持つ人にとって、売却せずに資金を作れる合理的な選択肢です。使い方さえ間違えなければ、有効に働く場面はあります。

大切なのは、判断の順番です。

❌「借りられるから借りる」
⭕「いつ、何で返すか決まっているから借りる」

そして、老後資産における本当の危険ラインは、金利が何%かという単独の数字ではありません。危ないのは、次の組み合わせです。

高いLTV × 株価下落 × 金利上昇 × 返済原資なし

この4つが同時に揃ったとき、選択肢は一気に消えます。逆にいえば、どれか1つでも外しておけば——特に「返済原資」を確保しておけば——致命傷は避けられます。

老後の資産設計では、配当・NISA・債券で不足額を埋める仕組みを先に作り、借入はあくまで例外として置いておく。その順番が現実的です。

証券担保ローンは、老後資産を増やすためのアクセルではありません。必要なときだけ開ける「非常用の出口」と考えるほうが、老後資産との相性は良いはずです。

免責事項

本記事は証券担保ローンおよび資産運用について一般的な情報を提供するものであり、特定の金融商品の利用や投資を推奨するものではありません。

金利・担保掛目・融資条件・強制売却条件等は金融機関や商品によって異なり、変更される場合があります。実際の利用にあたっては各金融機関の最新の商品説明書等をご確認ください。

投資・借入に関する最終的な判断は、ご自身の資産状況、収入、年齢、リスク許容度等を踏まえて行ってください。

参考にした一次情報(2026年8月19日確認)

  • 野村信託銀行「野村Webローン」商品ページ(適用利率 年2.40%/2026年7月15日より)
  • 楽天銀行「証券担保ローン お借入利率」(基準金利および借入残高別の適用金利)
  • 楽天銀行「証券担保ローン 融資担保比率」(60%超・85%超の取扱い)
  • 日本証券金融「コムストックローン 商品説明(SBI証券)」(融資利率・担保掛目・担保不足時の対応)

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