夜10時。証券会社のアプリを開くと、東京証券取引所はとっくに閉まっているのに、こんな数字が並んでいます。
トヨタ ADR +2.5%
三菱UFJ ADR +1.8%
「日本の市場は閉まっているのに、どうして株価が動いているの?」🤔
この疑問の答えが、ADRとPTS、そして米国株の時間外取引です。
そしていま、米国市場は「ほぼ24時間」へ動き出しています。2026年12月には、NYSE ArcaとNasdaqがそれぞれ1日23時間の取引を始める予定です。夜の株価の意味を知っておくことは、これまで以上に大切になります。
この記事では、投資を始めたばかりの方、とくに新NISAで日本株や高配当株を持っている50代・60代の方に向けて、専門用語をできるだけ避けて整理していきます。
※とは言いつつシニアには夜更かしは厳しいですが😅
まず結論|ADRとPTSはまったく別物です
いちばん多い誤解が、「ADRもPTSも、どちらも夜間取引のことでしょう?」というものです。実はまったく違います。
📌 超簡単に言うと
ADR → 何を取引するか(商品・証券の種類)
PTS → どこで取引するか(取引する場所・仕組み)
プレ/アフター/オーバーナイト → いつ取引するか(時間帯)
この3つは、「何を」「どこで」「いつ」という、そもそも別の質問への答えです。ここさえ分けられれば、夜の株価は一気に読みやすくなります。
| 項目 | ADR | PTS |
|---|---|---|
| 正式名称 | American Depositary Receipt | Proprietary Trading System |
| 日本語 | 米国預託証券 | 私設取引システム |
| 正体 | 証券・商品の一種 | 売買する市場・システム |
| 主な舞台 | 米国 | 日本 |
| 通貨 | 主に米ドル | 日本では円 |
| 取引される時間 | 米国市場の時間帯 | 日中+夜間 |
| 日本株との関係 | 日本企業の株価を米国で映すものがある | 日本株そのものを売買する |
ADRとは何か?🇺🇸
ADR(American Depositary Receipt/米国預託証券)は、外国企業の株を、米国の投資家が米ドルで買いやすくするための証券です。
仕組みはこうです。日本企業の株式を米国の預託銀行などが預かり、それを裏付けとして「この株を持っている証明書」にあたる証券を米国で発行します。これがADRです。米国市場では、米ドル建てで、米国株とまったく同じように売買できます。
注意したいのは、日本企業の株そのものを船に載せてアメリカへ運んでいるわけではないということ。あくまで「日本にある株式を裏付けにした、別の証券」です。
ADRとADS、何が違う?
関連する言葉にADS(American Depositary Share)があります。ざっくり言えば、ADSが「株にあたる単位」、ADRが「その証書」です。実務上はほぼ同じ意味で使われるので、初心者のうちは「ADR=米国版の日本株のようなもの」と覚えておけば十分です。
ADRの具体例
日本人におなじみの企業にもADRがあります(2026年9月時点)。
| 企業 | ティッカー | 取引される場所 |
|---|---|---|
| トヨタ自動車 | TM | ニューヨーク証券取引所(NYSE) |
| ソニーグループ | SONY | ニューヨーク証券取引所(NYSE) |
| 三菱UFJフィナンシャル・グループ | MUFG | ニューヨーク証券取引所(NYSE) |
| 本田技研工業 | HMC | ニューヨーク証券取引所(NYSE) |
| 任天堂 | NTDOY | 米国店頭市場(OTC) |
| NTT | NTTYY | 米国店頭市場(OTC) |
ここで大事なポイントが2つあります。
①「取引所に上場しているADR」と「店頭のADR」がある。 任天堂やNTTのADRは、証券取引所ではなく店頭市場(OTC)で取引されています。NTTは2017年にNYSEのADRを自ら上場廃止しており、いまはOTCです。取引所上場のADRに比べると出来高が少なくなりがちで、値動きの参考度も落ちます。
② ADR1株=日本株1株とは限らない。 これを「ADR比率」と呼びます。たとえばトヨタは、2021年10月の株式分割(1株→5株)に合わせて比率を変更し、ADR 1株=日本の普通株10株になっています。一方でソニーグループは、2024年10月の5分割の後もADR 1株=普通株1株のままです。
ADR価格から日本株の水準を見るには
🧮 目安の計算
日本株の換算値 = ADR価格 × ドル円 ÷ ADR比率
例:トヨタADRが200ドル、ドル円が150円、比率が10なら → 200 × 150 ÷ 10 = 3,000円
比率は企業ごとに違い、株式分割などで変わることもあります。実際に計算するときは、その企業のIRページで最新の比率を確認してください。
ADRは翌日の日本株の「答え」なのか?
結論から言うと、参考にはなりますが、翌日の始値を保証するものではありません。
理由はシンプルで、ADRが売買されている米国時間のあいだにも、そして東京市場が開くまでのあいだにも、世界はまだ動き続けるからです。
- 米国時間中に新しいニュースが出る
- ドル円が動く 💱
- 米国株全体、日経平均先物が動く
- ADRと日本株では、参加者も需給も違う
- ADRの出来高が少ない銘柄では、値がぶれやすい
- 翌朝の寄り付き直前にも新しい材料が出る
ですから「ADRが+3%だから明日の日本株も+3%」とはなりません。ADRは翌朝の東京市場を考えるための「温度計」のひとつ——このくらいの受け止め方がちょうどよいと思います。🌡️
PTSとは何か?🏢
PTS(Proprietary Trading System/私設取引システム)は、証券取引所を通さずに株を売買する仕組みです。日本では証券会社などが運営しており、ジャパンネクスト証券が運営する「ジャパンネクストPTS」がよく知られています。
PTSがある目的は、おおむね次のようなものです。
- 取引できる時間を広げる
- 取引所と価格で競争し、より有利な価格での約定を目指す
- 取引所の外にも売買機会をつくる
ポイントは、PTSで売買されているのは日本株そのものだということ。ADRのような「別の証券」ではありません。だからPTSは「場所」の話なのです。
夜間PTS|日本株を夜に売買できる仕組み
日本株投資家にとっていちばん身近なのが、夜間のPTSです。SBI証券を例に見てみましょう(2026年9月時点)。
| セッション | SBI証券が提供する時間 |
|---|---|
| デイタイム・セッション | 8:20 ~ 16:30 |
| ナイトタイム・セッション | 17:00 ~ 23:59 |
⚠️ 混同しやすいポイント
「PTSそのものの運営時間」と「証券会社が顧客に提供する取引時間」は一致しないことがあります。ジャパンネクストPTSのナイトタイム・セッション自体は2023年8月以降、翌朝6:00まで延長されていますが、SBI証券が個人向けに提供する夜間PTSは23:59までです。使っている証券会社の公式サイトで、必ずご自身の取引時間を確認してください。
なぜ夜間PTSで株価が急騰・急落するのか
典型的な流れはこうです。
つまり夜間PTSは、翌日の東京市場が開く前に、投資家が企業ニュースへ反応できる場なのです。
ただし、いいことばかりではありません。
⚠️ 夜間PTSの注意点
- 参加者が少なく、出来高が細い
- 板が薄く、買値と売値の差(スプレッド)が広がりやすい
- 少ない注文で価格が大きく動く
- 翌日の東証の価格と大きく食い違うことがある
ADRとPTSを時間軸で並べてみる ⏰
ここまでを、日本時間の1日の流れに置いてみます。米国が夏時間の場合(2026年9月現在は夏時間)です。
世界の株式市場は、こうしてバトンを渡すようにつながっています。夜の株価は「勝手に動いている」のではなく、この受け渡しの途中経過なのです。🏃
米国株の取引時間と「時間外取引」
米国株の通常取引時間(レギュラーマーケット)は、米国東部時間の9:30~16:00です。日本時間に直すと次のとおり。
| 期間 | 米国東部時間 | 日本時間 |
|---|---|---|
| 夏時間(3月~11月) | 9:30 – 16:00 | 22:30 – 翌5:00 |
| 冬時間(11月~3月) | 9:30 – 16:00 | 23:30 – 翌6:00 |
そして米国には、この通常時間の前後にも取引の時間帯があります。
プレマーケット(開場前)🌅
通常市場が開く前の取引です。米国では雇用統計・CPI(消費者物価指数)・PPI(生産者物価指数)といった重要な経済指標が、通常市場の開始前に発表されることがあります。その反応がまずプレマーケットに出るため、開場前から株価が大きく動くことがあります。
アフターマーケット(引け後)🌇
通常市場が終わったあとの取引です。米国企業は引け後に決算を発表することが多く、大型ハイテク企業の決算が出るとアフターマーケットで株価が急変することがあります。AI・半導体関連企業の決算のように、市場全体の空気を左右するイベントもここで起きます。
オーバーナイト取引(深夜~早朝)🌙
従来は「プレマーケット → 通常市場 → アフターマーケット」で1日が終わり、そのあとは翌朝まで空白でした。この空白を埋めるのがオーバーナイト取引です。
代表例がBlue Ocean ATS。FINRAに登録されたATS(代替取引システム/米国版のPTSのようなもの)で、2021年から米国東部時間20:00~翌4:00(日~木)に米国株を取引できる場を提供しています。日本の投資家が「日本の日中に米国株を売買できる」サービスの多くは、この仕組みを使っています。
⚠️ 混同しないこと
「ATSでのオーバーナイト取引(すでに行われている)」と「NYSE・Nasdaqなど証券取引所そのものの23/5化(これから)」は別の話です。ニュースで「米国株24時間取引」と見たときは、どちらの話かを見分けてください。
米国株は本当に24時間取引になるのか?
ここが今回いちばんお伝えしたいところです。結論はこうです。
「完全な24時間365日」ではありません。中心にあるのは「1日23時間 × 週5日(23/5)」です。
24/7ではありません。土日は休みですし、清算処理やシステムメンテナンス、配当・株式分割といった企業行動の処理のために、毎日1時間の停止時間が設けられます。2026年9月4日時点では、各市場はまだ移行の途中です。
NYSE Arcaの23時間取引計画
NYSEグループのうち、延長取引の対象はNYSE Arcaです。NYSE全体が24時間になるわけではありません。ここは誤解されやすいところです。
NYSE Arcaは2025年2月、既存の証券取引所として初めてSECから取引時間延長の承認を得ました。公表されているセッション構成は次のとおりです(米国東部時間)。
| セッション | 米国東部時間 |
|---|---|
| Overnight(新設) | 21:00 – 翌4:00 |
| Early | 4:00 – 9:30 |
| Core(通常取引) | 9:30 – 16:00 |
| Late | 16:00 – 20:00 |
| 休止 | 20:00 – 21:00 |
合計で1日23時間・週5日。開始目標は2026年12月6日とされていますが、市場データ配信(SIP)やDTCCの清算体制など周辺インフラの整備が前提で、SECの承認事項も残っています。確定した既成事実ではなく「予定」として受け止めてください。
Nasdaqの23/5計画
Nasdaqは2026年4月10日、米国株の取引時間を1日23時間・週5日へ延長する規則変更についてSECの承認を得ました。開始目標はNYSE Arcaと同じ2026年12月6日です。
- Day Session:4:00 – 20:00(米国東部時間)
- Night Session:21:00 – 翌4:00
- 20:00 – 21:00 は停止(メンテナンス、配当・分割などの処理)
ただしNasdaq自身も、この日程は市場データ関連システムの準備状況やSECのさらなる承認次第だと説明しています。
Cboe EDGXも「near 24×5」へ
CboeもEDGX取引所で取引時間を大幅に延ばす計画を2026年3月に発表し、2026年6月に23×5取引についてSECの承認を得ました。基本の枠は日曜21:00 ET ~ 金曜20:00 ETで、月~木の20:00~21:00 ETに1時間の運用停止を設ける形。開始目標は2026年12月です。
取引所だけでは実現しない|清算インフラとSEC
ここが意外と大事なところです。取引所のシステムが24時間動くだけでは、市場は動きません。約定した取引を清算・決済する仕組みも同じ時間だけ動く必要があります。
その中核を担うのがDTCC傘下のNSCC(全米証券清算機関)で、2026年6月28日から24×5体制での清算(日曜20:00 ET ~ 金曜20:00 ET)が始まっています。取引所の延長計画が「2026年12月」に揃っているのは、この土台が先に整ったからです。
SEC側も、2026年9月17日に「24時間取引への備え」をテーマとした公開ラウンドテーブルを開催する予定で、オーバーナイト取引のインフラ、市場の頑健性、投資家保護といった論点を議論する段階にあります。制度づくりはまだ進行中です。
23/5・24/5の比較まとめ
| 市場 | 体制 | 状況(2026年9月4日時点) | 開始目標 |
|---|---|---|---|
| Blue Ocean ATS | オーバーナイト(20:00–翌4:00 ET) | すでに稼働中 | 2021年~ |
| NYSE Arca | 23時間 × 週5日 | 2025年2月にSEC承認、準備中 | 2026年12月6日(予定) |
| Nasdaq | 23時間 × 週5日 | 2026年4月にSEC承認、準備中 | 2026年12月6日(予定) |
| Cboe EDGX | near 24×5(23時間 × 週5日) | 2026年6月にSEC承認、準備中 | 2026年12月(予定) |
| NSCC(清算) | 24 × 5 | 稼働開始済み | 2026年6月28日~ |
なぜ米国市場は24時間化するのか?
理由は5つに整理できます。
① 米国株の投資家が世界中にいる 日本、韓国、中国、香港、シンガポール、欧州、中東。米国外から米国株を買う人が増えました。
② 時差の問題 日本人にとって米国市場が開くのは夜。23/5になれば、日本の日中にも売買しやすくなります。
③ ニュースは24時間発生する 選挙、中央銀行、企業の発表、AI関連ニュース、為替、原油、金利。市場が閉まっているあいだにも世界は動きます。
④ 暗号資産市場との競争 ビットコインなどは24時間365日動いています。若い世代ほど「市場が閉まる」ことに違和感を持ちやすいと言われます。
⑤ 世界的な米国株人気 米国外から米国株へのアクセス需要そのものが増えています。
日本人投資家には何が変わる?
いまは、米国株を売買しようとすると夜更かしが必要です。22時半に市場が開き、明け方まで続くのですから、生活リズムを崩しやすい。😴
23/5・24/5が普及すると、たとえば日本時間の午前10時に、AppleやMicrosoft、NVIDIAといった米国株を売買できる環境が広がる可能性があります。すでにオーバーナイト取引に対応した証券会社では部分的に実現していますが、取引所そのものが対応すれば、流動性も情報量も厚くなることが期待されます。
では日本株のPTSは不要になるのか?
「米国が24時間になるなら、日本のPTSも24時間になるの?」——これは別の問題です。
PTSは日本株のための取引インフラであって、米国市場の23/5化と直接つながっているわけではありません。ここは事実として押さえておいてください。
ただし推論として言えば、世界の市場が長時間化していけば、日本でも「PTSの拡大」「取引時間の延長」「夜間の流動性向上」といった議論が強まる可能性はあります。実際、東京証券取引所は2024年に取引終了時刻を15:00から15:30へ延長しています。あくまで可能性の話であり、確定した予定ではありません。
24時間化のメリットとデメリット
まずメリットから。
- ① 日本の日中に米国株を売買できる 🌞
- ② ニュースにすぐ反応できる
- ③ 時差による生活の負担が減る
- ④ 世界中の投資家が参加しやすくなる
- ⑤ 市場をまたいだ価格差が縮まりやすくなる可能性
しかし、「24時間取引=便利」だけではありません。ここは必ず知っておいてください。
⚠️ 時間外取引のリスク
流動性:夜間は参加者が少なくなります。買いたいときに売り手がいない、ということが起こり得ます。
スプレッド:買値と売値の差が広がりやすく、不利な価格で約定しやすくなります。
値動き:少ない注文で価格が大きく動きます。翌朝には元に戻っていた、ということも珍しくありません。
情報格差:機関投資家やアルゴリズム取引のほうが、ニュースの処理は圧倒的に速いです。
睡眠:そして最も大事な点。市場が24時間動くからといって、投資家まで24時間相場を見る必要はありません。
24時間市場で個人投資家がやってはいけないこと 🚫
- 夜中まで株価を見続ける
- ニュースが出るたびに売買する
- 板の薄い時間帯に成行注文を出す
- PTSの価格だけで翌日の株価を決めつける
- ADRだけで日本株の寄り付きを予想する
- 時間外の急騰を見て慌てて飛びつく
時間外では「成行より指値」
板が薄い時間帯では、100ドルで買えると思っていた株が、101ドル、102ドルで約定してしまうことがあります。これをスリッページ(思っていた価格と実際の約定価格のズレ)と呼びます。
また、買値と売値の差であるスプレッドも、時間外は広がりがちです。「100.00ドルで買えて100.00ドルで売れる」のではなく、「買うなら100.50ドル、売るなら99.50ドル」というような状態になります。この差は、そのまま自分のコストになります。
だからこそ、時間外取引では価格を自分で決める指値注文を基本にしてください。これは日本の夜間PTSでも、米国のオーバーナイト取引でも同じです。
翌朝、どれを見ればいい?☀️
日本株投資家が朝にチェックする順番の一例です。絶対の順位ではありませんが、「ひとつだけを見ない」ことが大切です。
| 順 | 見るもの | 何がわかるか |
|---|---|---|
| ① | ドル円 | 日本株、とくに輸出企業への影響 |
| ② | 日経平均先物 | 日本株全体への期待 |
| ③ | S&P500・Nasdaq | 世界的なリスクオン/オフ |
| ④ | 米国10年債利回り | 株式の割高・割安の目安に影響 |
| ⑤ | 保有株のADR | 米国時間での日本企業への評価 |
| ⑥ | PTS | 国内投資家の反応 |
| ⑦ | 企業ニュース | 個別の材料 |
この順番が示しているのは、それぞれ役割が違うということです。ドル円の水準と米国の長期金利は、同じ「株価に効く材料」でも効き方がまったく異なります。ひとつの数字だけで朝の判断をしないことです。
高配当株投資家に、24時間取引は必要か?🌾
ここは当サイトらしく、はっきり書いておきます。
長期の高配当株投資家ほど、24時間市場に無理に付き合う必要はありません。
企業の利益、キャッシュフロー、配当方針、DOE(株主資本配当率)、累進配当、自社株買い。こうしたものを見て長く持つ投資では、夜間の5%の値動きよりも、5年後・10年後にその企業がどれだけ利益と配当を生むかのほうがはるかに重要です。高配当ファンドの中身を比べるときも、見ているのは値動きの速さではなく中身の質でしょう。
とはいえ、PTSやADRがまったく不要かというと、そうではありません。決算、減配、不祥事、M&Aといった重大なニュースが出たとき、市場がどう受け止めたのかを翌朝までに知る手がかりとして役に立ちます。使いどころを絞ればいい、ということです。
とくに新NISAで高配当株を積み上げている方にとっては、非課税の枠を使って長く持つことが前提です。夜間の値動きに反応して売買を繰り返せば、その前提そのものが崩れてしまいます。
初心者向け早見表 📋
| 用語 | 一言でいうと | 主な用途 |
|---|---|---|
| 東証 | 日本株のメイン市場 | 日本株の売買 |
| PTS | 民間の取引市場(場所) | 日本株の日中・夜間売買 |
| ADR | 外国株を米国で取引する証券(商品) | 日本企業などへの米ドル投資 |
| プレマーケット | 米国市場が開く前(時間帯) | 指標・ニュースへの先行反応 |
| 通常市場 | 米国株の中心市場 | 通常の売買 |
| アフターマーケット | 米国市場終了後(時間帯) | 引け後の決算反応 |
| オーバーナイト | 深夜~翌朝(時間帯) | 23/5化の中心 |
| 23/5 | 1日23時間 × 週5日 | NYSE Arca・Nasdaq等 |
| 24/5 | ほぼ24時間 × 週5日 | NSCCの清算体制など |
よくある質問(FAQ)❓
Q1. ADRとPTSは何が違いますか?
ADRは「証券の種類(何を取引するか)」、PTSは「取引の場所(どこで取引するか)」です。ADRは米国市場で米ドル建てで売買される外国企業の証券、PTSは日本国内で証券取引所を通さずに日本株を売買する仕組みです。まったく別のものです。
Q2. ADRが上がれば翌日の日本株も上がりますか?
必ずしもそうはなりません。参考にはなりますが、米国時間中の新しいニュース、為替の動き、需給の違い、出来高の少なさなどにより、翌日の東京市場の始値とはズレます。「温度計のひとつ」として見てください。
Q3. PTSの株価は翌日の株価になりますか?
なりません。夜間PTSは参加者が少なく板も薄いため、少ない注文で価格が大きく動きます。翌日の東証の価格と大きく食い違うことは珍しくありません。方向感の参考にとどめるのが安全です。
Q4. 米国株は24時間取引できますか?
2026年9月4日時点では、一部のATS(Blue Ocean ATSなど)や、それを利用する証券会社を通じたオーバーナイト取引がすでに可能です。一方、NYSE ArcaとNasdaqは1日23時間・週5日(23/5)の体制を2026年12月6日開始目標で準備中、CboeのEDGXも2026年12月を目標としています。いずれも「完全な24時間365日」ではなく、土日は休みで、毎日1時間の停止時間があります。また開始日は市場インフラの整備状況やSECの承認次第で変わり得ます。
Q5. 米国株の通常取引時間は日本時間で何時ですか?
夏時間は22:30~翌5:00、冬時間は23:30~翌6:00です(米国東部時間の9:30~16:00)。2026年9月は夏時間です。
Q6. 夜間取引は初心者でも利用したほうがいいですか?
無理に使う必要はありません。流動性が低くスプレッドが広がりやすいため、初心者ほど不利な価格で約定しやすい環境です。使う場合は必ず指値注文で、少額から始めてください。まずは「見て、値動きの意味を知る」だけでも十分に価値があります。
Q7. 24時間取引になったら日本の日中でも米国株を買えますか?
可能性は高まります。実際、オーバーナイト取引に対応した証券会社ではすでに部分的に実現しています。ただし、どの証券会社が、どの銘柄を、何時から提供するかは各社の判断です。取引所が23/5化しても、自分が使う証券会社が対応していなければ利用できません。
まとめ|市場が24時間動いても、あなたが24時間動く必要はない
最後に、いちばんお伝えしたいことを。
📌 一番覚えておきたいポイント
ADR = 商品(何を取引するか)
PTS = 取引場所(どこで取引するか)
プレ・アフター・オーバーナイト = 取引時間(いつ取引するか)
そして——24時間取引とは、24時間売買し続けなければならないという意味ではありません。
ADRとPTSを理解することは、「夜に株を売買するため」ではありません。世界の市場がどうつながっているのかを理解するためです。
夜、PTSに国内の反応が出る。米国市場が開く。ADRが動く。為替が動く。先物が動く。そして翌朝、東京市場が始まる。バラバラに見える市場は、実際には24時間近く情報を受け渡しています。米国市場の23/5・24/5化が進めば、この境界はさらに曖昧になっていくでしょう。
それでも、長期投資家に必要なのは「いつでも売買できること」ではありません。何を、なぜ、どの価格で保有するのかを、あらかじめ決めておくことです。
夜の株価は、眺めるものであって、追いかけるものではない。そのくらいの距離感が、50代・60代からの資産づくりにはちょうどよいのではないかと思います。🌙
24時間は戦えませんので…😆
参考資料・出典
- NYSE「Extended Hours Trading」(NYSE Arcaのセッション構成・承認状況)
- Nasdaq 23/5取引に関するSEC承認(2026年4月10日)および関連法律事務所メモ
- Cboe Global Markets「near 24×5 U.S. Equities Trading」に関するプレスリリース(2026年3月)およびSEC承認(2026年6月)
- DTCC/NSCC 24×5清算体制(2026年6月28日開始)
- SEC「Roundtable on Preparations for 24-Hour Trading」(2026年9月17日開催予定)
- SEC Office of Investor Education and Advocacy「Extended-Hours Trading: Investor Bulletin」
- SBI証券「PTS(SBI PTS)の取引時間」FAQ
- ジャパンネクスト証券「上場株式等私設取引システム取引説明書」
- トヨタ自動車 IR(ADR比率変更/2021年10月1日)、ソニーグループ IR(株式分割/2024年10月)
- Blue Ocean Technologies LLC 公式FAQ
※本記事は2026年9月4日時点で公表されている情報をもとに作成しています。取引時間・開始予定日・制度の内容は、市場インフラの整備状況や規制当局の判断により変更される可能性があります。実際のお取引の前には、必ずご利用の証券会社および各市場の公式情報をご確認ください。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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