はじめに|「高配当なら何を買っても同じ」ではない
新NISAが始まって以降、日本株の高配当投資は以前にも増して注目されるようになりました。
個別株で高配当銘柄を集める方法もありますが、
- 銘柄選びに時間をかけたくない
- 減配銘柄を自分でチェックするのは大変
- 数十社にまとめて分散投資したい
という人にとって、高配当株ETFや投資信託は非常に使いやすい商品です。まだ高配当株投資そのものが初めてという方は、はじめての高配当株投資|安定収入を目指すやさしい入門ガイドも先に読んでいただくと、この記事の内容がぐっと分かりやすくなります。
ところが、ここで一つ注意したいことがあります。
「高配当株ファンド」と名前が付いていても、中身はかなり違うのです。
2026年現在、日本株の高配当投資を考えるうえで特に面白いのが、次の3つの考え方です。
- 日経平均の中から、とにかく配当利回りの高い企業を選ぶ
- 10年以上減配していない企業の中から高配当株を選ぶ
- 配当だけでなく財務健全性まで評価する「SCHD型」の銘柄選択を行う
今回比較するのは、この3タイプを代表する商品です。
| タイプ | 今回比較する商品 |
|---|---|
| 高利回り重視 | Tracers 日経平均高配当株50インデックス(奇数月分配型) |
| 累進配当重視 | (アムンディ・インデックスシリーズ)日本・高配当株 |
| 日本版SCHD型 | 楽天・高配当株式・日本ファンド(四半期決算型) |
単純に「どれが一番上がったのか」だけではなく、
配当利回り、増配・減配耐性、財務健全性、分散性、値上がり期待、コスト、NISAとの相性
まで含めて徹底比較してみます。
まず数字で全体像をつかむ|3ファンド基本スペック(2026年8月12日時点)
比較の出発点として、3本の基本データを同じ日付でそろえました。ファンドの比較記事では時点がバラバラなことが多いのですが、時点が違う数字を並べると比較になりません。ここはすべて2026年8月12日の基準価額でそろえています。
| 項目 | Tracers 日経高配当50 |
アムンディ 日本・高配当株 |
楽天 日本版SCHD |
|---|---|---|---|
| 連動・参照する指数 | 日経平均高配当株50指数 | 日経累進高配当株指数 | ダウ・ジョーンズ 日本配当100 |
| 銘柄数 | 50 | 30 | 75(26年6月末) |
| 信託報酬(税込・年率) | 0.10725% | 0.198% | 0.297% |
| 基準価額(8/12) | 16,578円 | 15,114円 | 15,361円 |
| 純資産総額 | 約616億円 | 約99億円 | 約256億円 |
| 決算頻度 | 年6回(奇数月) | 年2回 | 年4回(四半期) |
| 設定日 | 2024年1月31日 | 2025年4月18日 | 2025年2月7日 |
| NISA成長投資枠 | 対象 | 対象 | 対象 |
この表だけでも、いくつか大事なことが読み取れます。
ひとつは設定日です。3本とも設定から2年経っていません。「実績が短いのは楽天だけ」という説明を見かけますが、正確ではありません。アムンディに至っては2025年4月設定で、いちばん新しい商品です。3本とも過去の成績で優劣をつけられる段階にはない、と考えておくのが公平です。
もうひとつは純資産総額です。Tracersが約616億円に対し、アムンディはまだ約99億円。純資産が小さいファンドは、資金が集まらないまま繰上償還(運用の途中終了)になる可能性がゼロではありません。20年、30年持つつもりの投資家にとって、これは無視できない要素です。今のところ順調に増えてはいますが、年に一度は残高を確認する習慣を持ちたいところです。
そして決算頻度。ここは意外と見落とされます。「年金の足しに分配金を使いたい」という目的なら、年2回と年6回では家計での使い勝手がまったく違います。
① 日経平均高配当株50とは?
最初は、高配当株投資の王道ともいえる「日経平均高配当株50指数」です。
この指数は、日経平均株価を構成する225銘柄の中から、配当利回りが高い50銘柄を選びます。さらに配当利回りと流動性を考慮して銘柄ごとの比率を決めます。年1回、6月に銘柄入れ替えが行われます。
投資信託で買う場合の代表例が、Tracers 日経平均高配当株50インデックス(奇数月分配型)です。信託報酬は年率0.10725%(税込)と非常に低く、NISA成長投資枠にも対応しています。
最大の特徴は「高い配当利回り」
2026年6月末時点の日経高配当株50指数の予想配当利回りは約3.96%。日経平均の約1.28%を大きく上回っています。
つまり、この指数の目的は非常に分かりやすい。
「大型株の中から、今たくさん配当を出している会社を買う」
という戦略です。
構成上位には、本田技研工業、野村ホールディングス、第一生命HD、川崎汽船、三井住友FG、日本製鉄、ソフトバンク、JTなどが並びます。自動車、保険、銀行、鉄鋼、海運など、典型的な日本のバリュー・高配当セクターが多くなっています。
日経高配当50の強み
最大のメリットは、やはりインカム収入の高さと低コストです。難しい財務分析をせずとも、日経225採用企業という一定規模以上の企業から、配当利回りの高い50社へまとめて投資できます。
2021年から2025年までのトータルリターンを見ると、
- 2021年 +28.24%
- 2022年 +24.60%
- 2023年 +40.55%
- 2024年 +25.17%
- 2025年 +28.34%
と、高配当株に追い風となった局面では非常に強い成績を残してきました。
特に2022年は日経平均トータルリターンがマイナスだった一方、高配当50は大幅プラスでした。これは金利上昇やインフレ局面で、銀行、保険、商社、資源、自動車などのバリュー株が評価された影響が大きいと考えられます。
ただし注意も必要です。これは指数の成績であって、Tracersというファンドの成績ではありません。Tracersの設定は2024年1月末なので、2021〜2023年の数字はファンドが存在していなかった期間のものです。「この指数がこういう性格を持っている」という理解のために使う数字だと考えてください。
日経高配当50の弱点
一方、大きな弱点があります。
「配当利回りが高い理由」を深く考えないことです。
株価が急落すると、「配当額 ÷ 株価」で計算する配当利回りは上昇します。つまり業績悪化によって株価が下落している会社も、高配当株として浮上する可能性があります。これが、いわゆる高配当株の「バリュートラップ」です。
また、景気敏感株が多くなりやすいため、景気後退局面では業績悪化 → 減配 → 株価下落という二重苦になる可能性もあります。この「減配のサインをどう読むか」については、高配当株は”増配で買い・減配で売り”では勝てない──決算シーズンに本当に見るべき5つの指標で詳しく書きました。
とす評価
| 配当利回り | ★★★★★ |
| 低コスト | ★★★★★ |
| 分散性 | ★★★★☆ |
| 増配力 | ★★★☆☆ |
| 減配耐性 | ★★★☆☆ |
| 値上がり期待 | ★★★★☆ |
| 総合評価 | ★★★★☆ 4.3 / 5 |
「今の配当」を重視する人には非常に魅力的です。
② 日経累進高配当株指数|「減配しない企業」を選ぶ
次は「日経累進高配当株指数」。愛称は「しっかりインカム」です。
この指数の考え方は日経高配当50とは大きく異なります。国内の上場企業の中から、
- 時価総額が500億円以上
- 10年以上連続して、増配または配当維持を続けている
という条件を満たす企業をまず抽出します。その中から予想配当利回りの高い30銘柄を選び、時価総額ウエート方式で構成します。
つまり、
- 日経高配当50 → 「今の配当利回り」
- 日経累進高配当 → 「10年間配当を減らしていない実績 + 現在の高配当」
という違いです。
この指数への連動を目指す投資信託が、(アムンディ・インデックスシリーズ)日本・高配当株です。信託報酬は年0.198%程度で、NISA成長投資枠でも購入できます。
そもそも「累進配当」という言葉自体が耳慣れないという方は、累進配当株×高配当株で最強の自分年金戦略!攻守バランス型ポートフォリオ徹底解説と、累進配当+DOEで下値を守る!高配当株戦略の新潮流とは?を読んでいただくと理解が早いはずです。
「累進配当」がなぜ重要なのか
退職後を見据えて高配当投資をする場合、とすが特に重要だと考えるのがここです。
老後の生活費として配当を使うのであれば、「今年4.5%もらえる」ことだけでは十分ではありません。重要なのは、5年後、10年後にも配当が維持されるかです。
例えば100万円投資して年間5万円の配当が出ても、業績悪化によって翌年3万円になれば、生活費としては不安定です。
その点、10年以上減配していない企業には、
- 安定した利益
- 強いキャッシュフロー
- 配当を重視する経営姿勢
- 株主還元余力
などを持つ企業が多くなります。
もちろん今後も減配しない保証はありません。しかし「過去10年間減配しなかった」というフィルターは、高配当株投資では非常に意味があります。
日経累進高配当の弱点
問題は銘柄数です。30銘柄しかありません。日経高配当50の50銘柄、楽天日本版SCHDの75銘柄と比較すると、集中度は高くなります。優良企業を厳選する代わりに、一社当たりの影響が大きくなるわけです。
また、「10年以上減配していない」という条件は非常に強い反面、最近急速に株主還元を強化した企業が入りにくいという弱点もあります。
日本企業では2023年以降、東証の資本コスト改革などを背景に、DOE、累進配当、自社株買いを導入する会社が増えました。こうした「最近変わった企業」を取り込むまでには時間がかかります。この流れそのものについては、なぜ株式分割・増配が増えているのか?本物の株主還元を見極める方法でまとめています。
そしてもう一つ、とすが気になっているのが決算が年2回という点です。分配金を生活費に充てたい人にとって、年2回はやや使いにくい。「配当の持続性はいちばん高いが、受け取りリズムはいちばん粗い」——ここは目的次第で評価が割れるところです。
とす評価
| 配当利回り | ★★★★☆ |
| 低コスト | ★★★★☆ |
| 分散性 | ★★★☆☆ |
| 増配力 | ★★★★★ |
| 減配耐性 | ★★★★★ |
| 値上がり期待 | ★★★★☆ |
| 総合評価 | ★★★★☆ 4.4 / 5 |
老後の「自分年金」として使うなら、非常に魅力的な設計だと思います。自分年金づくりの全体設計は、50歳からでも間に合う「自分年金」の作り方|配当・NISA・債券で老後の不足額を補う最適解にまとめてあります。
③ 日本版SCHD|楽天・高配当株式・日本ファンド
3つ目が今回もっとも興味深い商品、楽天・高配当株式・日本ファンド(四半期決算型)です。ネット上では「日本版SCHD」と呼ばれることがあります。
本家SCHDは米国で非常に人気の高い高配当ETFですが、単純に配当利回りの高い会社を買っているわけではありません。重要なのは「配当+企業の質」です。本家の中身については米国高配当ETF投資:SCHDとVYMの比較と投資信託のメリット・デメリット、日本から買える連動ファンドの比較はSCHD連動型ファンド比較:SBI・Sと楽天の高配当株式ファンドを徹底解説をご覧ください。
楽天の日本高配当ファンドは、S&P Dow Jones Indicesのダウ・ジョーンズ日本配当100インデックスを主に参照して銘柄を選定します。
この指数はS&P Japan 500の中から、安定した配当実績を持つ高配当企業を対象とし、さらに財務比率によって同業他社と比較したファンダメンタルズの強さを考慮します。これが日経高配当50との大きな違いです。
日本版SCHDの最大の魅力
簡単に言えば、
「高配当だから買う」のではなく、「高配当で、なおかつ企業として質が高いものを買う」
という思想です。
2026年6月末の楽天ファンドでは75銘柄を保有し、ポートフォリオの予想配当利回りは3.6%でした。上位銘柄には、
- JT
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ
- 第一三共
- 東京海上HD
- アステラス製薬
- トヨタ自動車
- スズキ
- ブリヂストン
- デンソー
- 第一生命HD
などが入っています。
配当利回りだけを追いかけているというより、銀行、保険、自動車、医薬品、食品など、利益を生み出す力の強い大型企業が並んでいることが分かります。
日本版SCHDの成績は?
2026年6月末時点の楽天・高配当株式・日本ファンドの騰落率は、分配金再投資ベースで、
| 期間 | 騰落率 |
|---|---|
| 1カ月 | -0.7% |
| 3カ月 | ±0.0% |
| 6カ月 | +9.3% |
| 1年 | +40.1% |
| 設定来 | +50.3% |
かなり優秀な成績です。ただし、ここで注意が2つあります。
1つ目。設定日は2025年2月7日で、運用実績はまだ1年半ほどしかありません。「1年で40%上昇したから今後も最強」と判断するのは早すぎます。日本株、とくに金融・バリュー株が上昇した局面だったことも考慮する必要があります。
2つ目。他ファンドと直接比べるときは時点をそろえてください。例えば同じ「1年リターン」でも、楽天の+40.1%は2026年6月末時点、Tracersの数字は8月時点というように、基準日が違うだけで印象は大きく変わります。相場が動いた1〜2カ月の差が、そのままリターン差に見えてしまうのです。
したがってとすとしては、直近パフォーマンスよりも、「SCHDに近い銘柄選定思想が10年、20年通用するか」を見るべきだと考えます。
日本版SCHDの弱点
最大の弱点はコストです。信託報酬は年率0.297%。3本のなかでは最も高くなります。
ただし、その代わりに楽天は単純な指数完全連動ではなく、対象指数を参照しながら流動性などを考慮してポートフォリオを構築します。つまり、「少し高いコストを払って、銘柄選択の質を買う」という商品だと考えると分かりやすいでしょう。
とす評価
| 配当利回り | ★★★★☆ |
| 低コスト | ★★★☆☆ |
| 分散性 | ★★★★★ |
| 増配力 | ★★★★☆ |
| 減配耐性 | ★★★★☆ |
| 値上がり期待 | ★★★★★ |
| 総合評価 | ★★★★★ 4.5 / 5 |
信託報酬の差は、20年でいくらになるのか
「0.1%と0.3%なんて誤差でしょう」と思われるかもしれません。実際に金額にしてみます。
信託報酬(税込・年率)の比較
では、500万円を20年間持ち続けた場合に払う信託報酬はいくらか。基準価額が変わらないと仮定した、ごく単純な概算です。
| ファンド | 年間 | 20年合計 |
|---|---|---|
| Tracers 日経高配当50 | 約5,400円 | 約10.7万円 |
| アムンディ 累進高配当 | 約9,900円 | 約19.8万円 |
| 楽天 日本版SCHD | 約14,900円 | 約29.7万円 |
差は最大で約19万円。決して小さくはありませんが、「20年で19万円の差なら、銘柄選択の質にそれを払う価値があるか」という問いに変わります。こう並べると、判断しやすくなるのではないでしょうか。
ちなみに実際には基準価額が上がれば信託報酬も増えるので、上昇局面ではこの差はもう少し開きます。逆に言えば、コスト差を正当化できるのは「リターンで上回ったとき」だけということでもあります。
3タイプの立ち位置を1枚の図で
3本の関係を、「今の配当利回りの高さ」と「配当の持続性・企業の質」という2軸で置いてみます。

右に行くほど「今もらえる配当が多い」、上に行くほど「配当が続きやすい・企業の質が高い」。円の大きさは銘柄数です。
こう置いてみると、3本がきれいに別の区画に入ることが分かります。
日経高配当50は右下。利回りは最も高い代わりに、減配リスクを抱える位置です。日本版SCHDは左上。利回りは3本のなかで控えめでも、質と分散で勝負する位置。そして日経累進高配当は右上の「理想ゾーン」に入りますが、よく見ると円がいちばん小さい。30銘柄への集中という代償を払って、その場所に立っています。
左下の区画には、どれも入りません。3本は優劣ではなく、置かれている場所が違うということが見て取れると思います。
3商品を一覧比較
| 項目 | 日経高配当50 | 日経累進高配当 | 日本版SCHD |
|---|---|---|---|
| 代表商品 | Tracers | アムンディ | 楽天 |
| 基本思想 | 高利回り | 非減配+高利回り | 高配当+財務品質 |
| 銘柄数 | 50 | 30 | 75 |
| 配当重視 | ★★★★★ | ★★★★☆ | ★★★★☆ |
| 増配期待 | ★★★☆☆ | ★★★★★ | ★★★★☆ |
| 財務品質 | ★★★☆☆ | ★★★★☆ | ★★★★★ |
| 分散性 | ★★★★☆ | ★★★☆☆ | ★★★★★ |
| 低コスト | ★★★★★ | ★★★★☆ | ★★★☆☆ |
| 値上がり期待 | ★★★★☆ | ★★★★☆ | ★★★★★ |
| 総合 | ★★★★☆ 4.3 | ★★★★☆ 4.4 | ★★★★★ 4.5 |
この表を見ると、日本版SCHDが総合評価ではわずかに上になります。しかし、これは「楽天を買えば正解」という意味ではありません。3商品は目的が違うからです。
「配当利回り」だけなら日経高配当50
現在のキャッシュフローを重視するなら、日経高配当50が非常に分かりやすい選択です。コストも低く、利回りも高い。
特に「すでに十分な金融資産があり、値上がりより配当収入を増やしたい」という投資家には使いやすいでしょう。奇数月に年6回分配されるので、公的年金が入らない月に合わせて受け取れるという実務的なメリットもあります。
「配当を減らしたくない」なら累進高配当
一方、「退職後の生活費として長く配当を受け取りたい」のであれば、とすは日経累進高配当の考え方を高く評価します。
老後投資で怖いのは株価下落だけではありません。配当収入そのものが減ることです。10年以上減配していない企業を最初から選ぶ思想は、退職後の生活を支える資産との相性が良いと考えます。
取り崩しのタイミングと相場の巡り合わせが老後資産に与える影響については、最大利益より「最悪期を乗り越える力」|シーケンシャルリスクから老後資産を守る方法もあわせてどうぞ。
「配当+成長」を狙うなら日本版SCHD
まだ退職まで時間があり、「配当も欲しい。しかし資産額そのものも増やしたい」という場合には、日本版SCHD型が面白くなります。
企業の財務力まで評価するため、高配当株投資の最大の罠である「業績が悪くて株価が下落した結果、高配当になっている会社」をある程度避けられる可能性があります。
SCHDが米国で支持されてきた理由も、高い配当利回りだけではありません。配当、財務品質、増配、値上がり益をバランスよく狙える設計にあります。楽天の日本高配当ファンドは、その考え方を日本株へ持ち込もうとしている商品と見ることができます。
では一つだけ選ぶなら?
とすなら目的別にこう考えます。
| 目的 | 選ぶなら |
|---|---|
| とにかく分配金を重視したい | 日経高配当50 |
| 退職後の安定配当を重視したい | 日経累進高配当 |
| 配当と資産成長を両立したい | 日本版SCHD |
そして総合力だけで1本選ぶなら、日本版SCHD型をわずかに1位とします。
理由は「今年一番上がったから」ではありません。最大の理由は、高配当+財務健全性+分散の3つを同時に考えているからです。
実は3つを組み合わせる方法もある
高配当投資では「最強の商品を一つ探す」必要はありません。むしろ、こう組み合わせる方法もあります。

すると、それぞれに役割分担ができます。
ただし、ここには落とし穴があります。構成銘柄はかなり重複するため、単純に3本持てば完全分散になるわけではありません。JT、銀行、保険、自動車などが複数ファンドに入る可能性があります。
実際、主要な高配当ファンドを並べてみると、どこにも顔を出す”横綱”銘柄が存在します。それを調べたのが【2026年】高配当株ETF・投資信託5本すべてに入る”横綱”4銘柄と、どこにも入らない割安高配当株5選です。3本に分けたつもりが、実は同じ数社に集中していた——ということが起こり得ます。
したがって「3ファンドに分散した」ではなく、最終的にどの企業・業種へ投資しているのかを見ることが重要です。
なお、コア(土台)とサテライト(味付け)で役割を分ける考え方はコアサテライト戦略とは?株式・債券・金・REIT・現金で作る「守りと攻め」のポートフォリオに整理しています。高配当ファンドを何本も持つより、まずこの枠組みで全体を見たほうが迷いません。
「利回り」より重要な数字がある
高配当投資を始めると、どうしても3.8%、4.0%、4.5%といった配当利回りに目が行きます。
しかし退職後20〜30年間保有することを考えると、本当に重要なのは、
現在の利回り × 配当の持続性 × 増配率
です。ここは言葉より数字を見たほうが早いので、100万円を投資した2つのケースで比べてみます。
| Aさん | Bさん | |
|---|---|---|
| 買った時の利回り | 4.5% | 3.5% |
| その後の増配 | なし(横ばい) | 年5%ずつ増配 |
| 1年目の配当 | 4.5万円 | 3.5万円 |
| 5年目の配当 | 4.5万円 | 4.25万円 |
| 10年目の配当 | 4.5万円 | 5.70万円 |
| 20年目の配当 | 4.5万円 | 9.29万円 |
| 20年間の受取合計 | 90.0万円 | 115.7万円 |
年間の受取配当額の推移(100万円投資)
4.5万円
3.5万円
4.5万円
5.70万円
4.5万円
9.29万円
ここで面白いのは、逆転までにかかる時間です。
- 6年目に、年間の受取額でBがAを追い抜く
- 11年目に、それまでの受取合計でもBがAを追い抜く
つまり最初の5年は、利回りの高いAのほうが確実に多くもらえます。増配の力が効いてくるのは、そこから先です。
この事実は、これから何年持つかで答えが変わることを意味します。「あと10年の配当が欲しい」のか、「これから25年受け取り続ける」のかで、選ぶべき商品は変わってくる。利回りの高低ではなく、自分の投資期間で選ぶ——これがとすの結論です。
高配当株投資は、「高い配当を買う投資」ではなく、「将来のキャッシュフローを買う投資」と考えた方が分かりやすいでしょう。
※上記はいずれも税引前・単純計算の試算です。実際には配当課税、増配率の変動、株価変動が加わります。
NISA成長投資枠での使い方
3本ともNISA成長投資枠の対象です。ただし高配当ファンドをNISAで持つときは、いくつか押さえておきたい点があります。
ひとつは、NISAでは分配金も非課税だという点。通常なら約20%引かれる配当・分配金がそのまま受け取れるので、インカム狙いとNISAの相性は良好です。
もうひとつは、分配金を受け取ると、その分だけ非課税の「器」の中でお金が増えなくなるという点。資産を増やす段階なら再投資型、使う段階なら受取型、と割り切って考えるのが分かりやすいでしょう。
シニア世代のNISAの組み立て方はシニア世代が新NISAで始める投資戦略!に、毎月分配型ETFなどNISAで買えない商品の話はHDVが新NISAで買えない?毎月分配型ETFと投資信託の注意点をわかりやすく解説にまとめてあります。
結論|2026年の高配当ファンドは「利回り競争」から「質の競争」へ
今回の比較をまとめます。
日経平均高配当株50|現在の配当利回りと低コストを重視する王道高配当戦略。
日経累進高配当株指数|10年以上減配していない企業を選ぶ「配当の持続性」重視戦略。
日本版SCHD|高配当に加え、財務健全性や企業の質まで評価する「配当+クオリティ」戦略。
とすの総合評価は、
| 🥇 日本版SCHD | ★★★★★ 4.5 |
| 🥈 日経累進高配当 | ★★★★☆ 4.4 |
| 🥉 日経高配当50 | ★★★★☆ 4.3 |
としました。ただし差はわずかです。むしろ重要なのは、何を目的として高配当株を持つのかでしょう。
- すぐに受け取る配当を増やしたいなら → 日経高配当50
- 退職後の安定した配当収入を作りたいなら → 累進高配当
- 配当を受け取りながら資産成長も狙うなら → 日本版SCHD
2026年の日本株では、単純に「配当利回り4%以上」を探すだけの高配当投資から、配当を維持できる会社、増配できる会社、キャッシュを生み続けられる会社を選ぶ投資へ、高配当投資そのものが進化し始めています。
2026年7月には増配銘柄に特化した新ファンドも登場しました。この流れはiFreePlus増配・高配当日本株は買いか?日本版SCHD・日経連続増配株指数と徹底比較【2026年7月新設】で取り上げています。他の高配当ETF・投資信託も含めた全体像は日本の高配当ETF・投資信託おすすめ3選【2026年版】徹底比較をどうぞ。
これから10年、20年持つのであれば、「今いくら配当を出しているか」だけではなく、
「10年後も配当を出し続けられる企業なのか」
という視点を持つことが、最も重要なのかもしれません。
※本記事は2026年8月時点の公開情報をもとに作成しています。基準価額・純資産総額・信託報酬・決算頻度は各ファンドの公表値(2026年8月12日時点)、構成銘柄・予想配当利回り・騰落率は各運用会社の月次レポート等(2026年6月末時点)を参照しています。投資信託の基準価額、構成銘柄、配当利回り、分配金等は変動します。本記事は特定の商品や銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断は最新の目論見書等をご確認のうえ、ご自身の責任で行ってください。

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