「日本国債が売られて金利が上がっている、と聞くけれど、これは私たちにとって良いことなのか、悪いことなのか」——2026年の夏、そんな疑問を持つ50代・60代の方が増えています。政府が示した「骨太の方針」の原案をきっかけに、日本国債が売られ、長期金利(10年国債利回り)は約29年ぶりの高水準まで上昇しました。市場では「骨太ショック」という言葉まで生まれています。
一方で、株高が続いた結果、日本の高配当株の配当利回りはじわじわと下がってきました。「これまで高配当株を買い増してきたが、値上がりして利回りが下がった。ここへ来て国債の利回りが3%に近づいている。今から新しく買うなら、高配当株と日本国債、どちらを選べばいいのか」。本記事は、この悩みに正面から答えます。
結論を先にお伝えします。日本国債をポートフォリオ(資産の組み合わせ)に加える合理性は、以前よりはっきりと高まっています。ただし、高配当株をすべて国債へ置き換える必要はありません。株価上昇で利回りが下がった銘柄への「新規の買い増し」を抑え、その資金の一部を国債へ振り向ける——これが退職前後の投資家にとって現実的な答えです。高配当株と日本国債は競合する商品ではなく、ポートフォリオの中で異なる役割を持つ資産だからです。
- この記事の要点(先にまとめ)
- 1. はじめに:骨太の方針で、なぜ国債が売られたのか
- 2. 「骨太ショック」とは何か
- 3. 政府が日銀の利上げをけん制する背景——その主張にも一理ある
- 4. 金利を上げても円安が止まらない理由
- 5. 国債利回り3%が持つ意味
- 6. 高配当株4%と日本国債3%を比較する
- 7. 高配当株より国債を優先してよいケース
- 8. それでも質の高い高配当株を残す理由
- 9. 個人向け国債と通常の国債の違い
- 10. 「安全資産」でも価格は下がる——国債の価格変動リスク
- 11. 一括購入ではなく「債券ラダー」で分散する
- 12. インフレを考えた「実質利回り」も忘れずに
- 13. 退職前後の個人投資家向け・資産配分モデル
- 14. 日銀と政府に求められる金融・財政運営
- まとめ:高配当株か国債かではなく、両方を適切に配置する
- よくある質問(FAQ)
- 免責事項
この記事の要点(先にまとめ)
- 高配当株は、増配・株価上昇・インフレへの価格転嫁を期待する「成長・攻めの資産」
- 日本国債は、生活費・元本の安定・暴落時の買い増し資金を守る「防衛・守りの資産」
- やるべきは「高配当株か国債か」の二者択一ではなく、役割で分けて両方を適切に配置すること
この記事の内容は2026年7月時点の政策・報道・公的資料をもとにしています。金利や利回りは日々変わりますので、実際の数字は必ず最新の情報でご確認ください。
1. はじめに:骨太の方針で、なぜ国債が売られたのか
「骨太の方針」とは、政府がその年の経済政策・財政運営の大きな方向性を示す文書です。正式には「経済財政運営と改革の基本方針」と呼ばれます。ここに書かれる文言(言葉づかい)は、市場関係者が「政府は今後どういう方向に進むのか」を読み取る材料になります。
2026年の原案では、「強い経済」の実現に向けて、日銀(日本銀行)による適切な金融政策運営が重要だと明記されました。市場はこの表現を、「政府が日銀の追加利上げをけん制(ブレーキをかけようと)している」と受け止めました。あわせて、これまで書かれてきた財政健全化(国の借金を抑える方針)に関する表現が弱まったことで、積極財政(政府がお金をたくさん使う方針)への警戒が強まりました。
この結果、次のような連鎖が起きた、と市場では受け止められています。
- 積極財政への懸念 → 国債の発行が増えるのではという警戒
- → 財政規律(借金を抑える姿勢)への不安
- → 日本国債が売られる
- → 長期金利(国債利回り)が上昇する
国債は「売られると価格が下がり、利回りが上がる」という関係にあります。つまり金利上昇は、国債が売られたことの裏返しでもあるのです。実際、2026年7月上旬には10年国債利回りが一時2.8%台後半(約29年ぶりの高水準)まで上昇し、市場では「年内に3%の可能性もある」との見方が出ています。政府は7月に入って原案の表現を一部修正し、金融政策の項目に「物価の安定に資する」といった趣旨を書き加えて、けん制と受け取られた印象をやわらげようとしました。
ここで大切なのは、政府の政策を一方的に批判しないことです。成長のための投資は、うまく使えば日本の潜在成長率(経済が本来伸びられる力)を高める可能性があります。問題は「積極財政そのもの」ではなく、そのお金がどんな効果を生むのか、財源はどうするのか、将来の借金をどう管理するのかを、市場が納得できる形で説明できているかにあります。ここが不透明なとき、市場は不安から国債を売るのです。
2. 「骨太ショック」とは何か
「骨太ショック」とは、骨太の方針の原案が公表されたことをきっかけに、日本国債が売られ、長期金利が急に上がった一連の動きを指す言葉です。約30年ぶりの金利水準というのは、多くの現役世代が経験したことのない領域です。
ただ、金利の上昇そのものは、必ずしも「悪」ではありません。これまで日本は「金利がほとんど付かない時代」が長く続きました。預金しても増えず、安全にお金を置いておく場所がなかったのです。金利が上がるということは、私たち個人にとって「安全にお金を増やす選択肢」が戻ってきたとも言えます。「金利上昇=怖いこと」と身構えるのではなく、「守りの資産で少しずつ利息を得られる時代になった」と冷静にとらえることが第一歩です。この点は、以前に書いた日本国債2.8%時代到来!60代からの”守りの投資”完全ガイドでも詳しく整理しています。
3. 政府が日銀の利上げをけん制する背景——その主張にも一理ある
政府が「利上げを急がないでほしい」と考える背景には、実は合理的な面もあります。物価上昇率(インフレ率)が1%台まで落ち着いてきている場合、日銀があわてて利上げをする必要性は、以前より低下している可能性があるからです。実際、2026年初めの全国の消費者物価指数(生鮮食品を除く指標などで見た物価)は前年比で1%台まで鈍化する場面が見られました。
そもそも日本の物価上昇は、国内の需要が強いからだけではありません。次のような要因が複雑に絡んでいます。
- 円安(輸入品の値段が上がる)
- 原油や資源価格の上昇
- 輸入物価の上昇
- 人件費の上昇
- 物流費の上昇
- 企業の価格転嫁(コスト上昇分を売値に乗せる動き)
つまり、政策金利を上げれば必ず物価上昇や円安が止まる、というわけではないのです。海外の資源高や円安が主な原因なら、国内の金利を上げてもその効果は限られます。
むしろ、利上げを急ぐことには次のようなリスクもあります。
- 住宅ローン金利の上昇(変動金利で借りている家庭の負担増)
- 中小企業の借入負担の増加
- 設備投資の減少
- 個人消費の低迷
- 国の利払い費(国債の利息支払い)の増加
ですから「政府が利上げにブレーキをかけようとしている」という報道を見ても、それが直ちに無責任だと決めつけるのは早計です。慎重論には慎重論なりの理屈があります。日銀の利上げの流れそのものについては、日銀利上げ1.0%時代へ!円安・金利上昇・景気減速に備える個人投資家の最適解もあわせてご覧ください。
4. 金利を上げても円安が止まらない理由
「日銀が利上げすれば円高になるはず」——これはよく聞く見方ですが、実は単純すぎます。為替(円とドルの交換レート)は、日米の政策金利の差だけで決まるものではないからです。次のような要因も、円相場に大きく影響します。
- 米国の金利水準(アメリカの金利が高いとドルが買われやすい)
- 日本の財政への信頼(借金が増えすぎると円の信認が揺らぐ)
- 貿易収支・経常収支(日本が海外との取引で稼げているか)
- 日本企業や投資家による海外投資(お金が海外へ出ていく動き)
- エネルギー輸入に伴うドル需要(原油などの支払いでドルが必要)
- 地政学リスク(戦争・紛争など)
- 日本経済の成長期待
ここで注意したいのは、政府が利上げを強くけん制しながら、同時に財政支出を大きく増やすと、市場が「日本はインフレを抑える気も、借金を抑える気もないのでは」と疑い、円と国債が同時に売られる可能性があるという点です。これは金利差だけでは説明できない動きで、いわゆる「悪い円安」につながりかねません。「日銀が利上げすれば円高」という単純な図式には限界がある、と覚えておきましょう。為替そのものの仕組みは為替介入とは?160円介入の意味と今後の円相場を読むで解説しています。
5. 国債利回り3%が持つ意味
長らく金利ゼロの時代を生きてきた私たちにとって、「国債利回り3%」は大きな節目です。仮に年3%で回るなら、単純計算で24年ほどでお金が2倍になる水準です(複利の目安)。これまで「安全にお金を増やす手段がない」と言われてきた日本で、守りの資産にもリターンが戻ってきたことを意味します。
ただし、注意点があります。ニュースで報じられる「10年国債利回り」と、私たち個人が実際に買える商品の利回りは、必ずしも同じではありません(詳しくは第9章)。また、利回りが上がったからといって「今すぐ全力で買うべき」とも限りません。金利がさらに上がる可能性もあるからです。この点は第10章・第11章で掘り下げます。
6. 高配当株4%と日本国債3%を比較する
仮に「日本国債の利回りが3%、高配当株の配当利回りが4%」だとしましょう。表面的な差はわずか1%ポイントです。しかし、この2つは中身がまったく違います。数字だけを見て単純比較してはいけません。次の表で違いを整理します。
| 比較項目 | 日本国債(利回り3%の例) | 高配当株(利回り4%の例) |
|---|---|---|
| 収益の種類 | 利子(あらかじめ決まっている) | 配当(企業業績で変わる) |
| 元本の安定性 | 高い(満期まで持てば額面償還が原則) | 低い(株価が動く) |
| 価格変動 | 途中売却時は変動あり | 大きい |
| 減配リスク | 基本的になし | あり(業績悪化で減配も) |
| 満期償還 | あり(期限が来ればお金が戻る) | なし |
| 値上がり余地 | ほぼなし(利子が中心) | あり(株価上昇) |
| インフレ耐性 | 弱い(固定利子は目減りしやすい) | 相対的に強い(価格転嫁・増配) |
| 景気後退時の動き | 底堅い(買われやすい) | 下がりやすい |
| 固有リスク | 国の信用(財政) | 企業ごとの業績・経営 |
日本国債は、満期まで保有すれば原則として額面(買ったときの元本にあたる金額)で戻ってきます。一方、高配当株には株価下落や減配の可能性があります。しかし高配当株には、増配・自社株買い・株価上昇・インフレへの価格転嫁という「成長の余地」があります。つまり、利回り1%ポイントの差の裏に、これだけの性質の違いが隠れているのです。10年金利が3%に近づく局面での高配当株の見方は、10年金利3%時代における高配当株投資の「新しい判断基準」でも掘り下げています。
7. 高配当株より国債を優先してよいケース
株高で利回りが下がった今、次のような高配当株は「新規に買い増すより、国債と比べてみる」価値があります。あくまで一般的な考え方の目安です。
- 配当利回りが3%未満まで下がっている
- 配当の成長率(増配のペース)が低い
- 累進配当(原則として減配せず、配当を維持・増加させる方針)を採用していない
- DOE(株主資本配当率。利益ではなく自己資本を基準に配当を決める方針)がない
- 自社株買いが少ない
- 景気の波を受けやすい業種である
- 短期間で株価が大きく上がっている
- PER・PBR(株価の割安・割高を測る指標)が過去平均より割高
こうした銘柄は、値上がりした分だけ「今から買う妙味」が薄れています。ここへ新規資金を追加するくらいなら、利回りが近づいてきた国債に振り向けたほうが、値動きの不安を抑えられる場合があります。
8. それでも質の高い高配当株を残す理由
一方で、次のような条件を備えた企業なら、配当利回りが国債と大きく変わらなくても、長く持ち続ける意味があります。
- 累進配当を採用している
- DOEを採用している
- 継続的に増配してきた実績がある
- 営業キャッシュフロー(本業で稼ぐ現金)が安定している
- 自社株買いに積極的
- 価格転嫁力がある(コスト上昇を売値に反映できる)
- 財務が健全
- 長期的に利益が伸びている
こうした企業は、インフレに合わせて配当を増やし、受け取る配当額そのものが年々育っていく可能性があります。国債の利子は固定ですが、質の高い高配当株の配当は「育つ」のです。だからこそ、結論は「高配当株を全面的に減らす」ではなく、「低利回り・低成長の銘柄を整理し、質の高い高配当株と国債へ二極化する」となります。良い高配当株の見分け方は、高配当株は”増配で買い・減配で売り”では勝てない──本当に見るべき5つの指標で具体的に解説しています。
9. 個人向け国債と通常の国債の違い
ここが多くの方の勘違いポイントです。ニュースで報じられる「10年国債利回り」(例:2.8%台)と、私たち個人が窓口で買える「個人向け国債」の適用金利は、同じではありません。実際、2026年7月募集の個人向け国債・変動10年の初回適用利率は年1.80%程度(税引後で約1.4%台)で、報道される市場の利回りより低めです。混同しないよう、主な選択肢を整理します。
| 商品 | 特徴 | 途中換金・価格変動 |
|---|---|---|
| 個人向け国債・変動10年 | 半年ごとに金利が見直される。金利上昇の恩恵を受けやすい | 元本割れなし(発行1年後から中途換金可、直近2回分の利子相当が差し引かれる) |
| 個人向け国債・固定5年 | 5年間金利が固定 | 元本割れなし(同上) |
| 個人向け国債・固定3年 | 3年間金利が固定 | 元本割れなし(同上) |
| 通常の利付国債(新窓販など) | 市場で売買される国債 | 途中売却は市場価格。損益が出る |
| 日本国債ETF | 証券取引所で売買できる債券の詰め合わせ | 価格が日々変動。損益が出る |
| 国内債券の投資信託 | 債券をまとめて運用する商品 | 基準価額が変動。損益が出る |
退職前後の「生活防衛資金」(暮らしを支える最後の砦のお金)には、個人向け国債・変動10年が向いています。元本割れを避けながら、金利上昇の恩恵も受けやすいからです。一方、通常の利付国債や国債ETFは、市場価格が動くため、途中で売ると損失が出ることがあります。「国債」と一口に言っても中身は大きく違う、と押さえてください。個人向け国債・米国債ETF・生債券の使い分けは、金利上昇時代の債券運用戦略|個人向け国債・米国債ETF・生債券をどう使い分けるかで詳しく比較しています。
10. 「安全資産」でも価格は下がる——国債の価格変動リスク
国債は「安全資産」と呼ばれます。しかしこれは「満期まで持てば額面で戻る」という意味であって、「価格が絶対に下がらない」という意味ではありません。満期前に売る場合は、価格が変動します。
債券には、次の関係があります。
- 金利が上がる → すでに発行された債券(既発債)の価格は下がる
- 金利が下がる → 既発債の価格は上がる
特に、20年国債や30年国債のように残存期間(満期までの年数)が長い債券ほど、金利が動いたときの価格変動が大きくなります。「利回りが高いから安全」と考えて長期国債に一括で大きく投資するのは、金利がさらに上がった場合に評価損(含み損)を抱えるリスクがあります。長期債への一括投資は慎重に、が鉄則です。
11. 一括購入ではなく「債券ラダー」で分散する
金利がこの先さらに上がる可能性がある局面では、一度に長期国債をまとめて買うのは、タイミングを外すリスクがあります。そこで有効なのが「債券ラダー」という考え方です。ラダー(ladder)とは「はしご」のこと。満期の異なる債券を、はしごの段のように少しずつ並べて持つ戦略です。
たとえば、購入資金を分けて、次のように満期をずらします。
- 1年後に満期を迎える分
- 3年後に満期を迎える分
- 5年後に満期を迎える分
- 7年後に満期を迎える分
- 10年後に満期を迎える分
こうしておくと、毎年のように満期を迎えるお金が出てきます。その資金を、そのときの金利で新しい債券に再投資していくのです。金利が上がっていけば、より高い利回りで買い直せます。逆に金利が下がっても、すでに持っている長めの債券が利息を稼いでくれます。「いつ買うのが正解か」を当てにいかず、時間で分散する——これが債券ラダーの狙いです。ポートフォリオ全体で守りと攻めを組む考え方は、コアサテライト戦略とは?株式・債券・金・REIT・現金で作る「守りと攻め」のポートフォリオも参考になります。
12. インフレを考えた「実質利回り」も忘れずに
国債利回りが3%でも、そのまま3%が手元に残るわけではありません。利子には約20%の税金がかかるため、税引後の利回りは約2.4%程度になります(3%×約0.8)。さらに、仮にインフレ率(物価上昇率)が2%なら、実質的な購買力の増加はごくわずか(2.4%−2%=0.4%程度)にとどまります。
ここから分かるのは、日本国債は「資産を大きく増やすための商品」ではないということです。国債の役割は、次のように整理できます。
- 生活費を守る
- 株価が暴落しても、売却を迫られずに済む
- 暴落時の買い増し資金を確保しておく
- ポートフォリオ全体の値動きを小さくする
裏を返せば、長期的なインフレ対策としては、株式(とくに質の高い高配当株)を一定割合残しておくことが必要です。国債だけに寄せてしまうと、物価上昇にお金の価値が負けていく恐れがあります。守りと攻め、両方を持つ意味がここにあります。
13. 退職前後の個人投資家向け・資産配分モデル
ここまでの考え方を、具体的な配分に落とし込みます。あくまで「これから投資する新規資金」を100としたときの一例です。すでに株式を十分持っている、退職が近い方を想定しています。
| 資産 | 配分の目安 | 役割 |
|---|---|---|
| 個人向け国債・変動10年 | 30% | 元本を守りつつ金利上昇に対応 |
| 3〜5年程度の国債・定期預金・短期債 | 20% | 近い将来使うお金の置き場所 |
| 7〜10年程度の国債・債券商品 | 15% | やや高めの利回りを確保 |
| 質の高い日本高配当株 | 25% | 増配・インフレ対応の成長部分 |
| 現金 | 10% | 急な出費・暴落時の待機資金 |
この配分は、あくまで一つの型です。年齢、退職の時期、年金額、毎月の生活費、住宅ローンの有無、すでに持っている資産、リスク許容度によって、当然調整が必要です。株式をまだあまり持っていない方は高配当株の比率を上げる、逆にすでに株式に偏っている方は債券を厚くする、といった具合です。
債券部分の中身も、期間で分散すると安心です。目安としては、次のようなイメージです。
- 短期・変動金利:50〜60%
- 中期:25〜30%
- 長期:10〜20%
長期債の比率を抑えめにしているのは、第10章で触れたとおり、金利上昇局面では長期債ほど価格変動が大きいためです。世代別の考え方は、シニアの資産寿命を延ばす長期投資|配当・債券・新NISAで作る安定ポートフォリオもあわせてご覧ください。なお、高配当株を新NISA(少額投資非課税制度)の枠で持てば、配当や値上がり益にかかる税金を抑えられる点も、退職前後の資産形成では見逃せません。
14. 日銀と政府に求められる金融・財政運営
最後に、少し大きな視点にも触れておきます。ここは筆者の見解を含みます。日銀に求められるのは、次のどちらでもないと考えます。
- 「円安だから」と機械的に利上げすること
- 「政府に配慮して」利上げを封印すること
大切なのは、次のような指標をていねいに確認しながら、小幅かつ段階的に金融政策を正常化し、市場との対話を丁寧に進めることです。
- 基調的な物価上昇率/賃金上昇率/実質賃金
- 個人消費/企業の価格転嫁/期待インフレ率
- 為替/国債市場の安定性
- 中小企業の資金繰り/住宅ローンへの影響
政府の側にも、成長投資の中身・効果・財源・将来の財政運営を明確に示し、市場の信認(信頼)を保つ責任があります。市場が納得できる説明があれば、積極財政は必ずしも「悪い金利上昇」につながりません。私たち個人投資家にできるのは、こうした政策の行方を冷静に見ながら、どちらに転んでも困らないよう、守りと攻めのバランスを整えておくことです。
まとめ:高配当株か国債かではなく、両方を適切に配置する
- 国債を組み入れる合理性は高まった:国債利回りが3%に近づく今、守りの資産にもリターンが戻ってきました。とくに株式を十分持ち、退職が近い方は、今後の新規資金を国債や短期債へ振り向ける価値が高まっています。
- 高配当株を全部売る必要はない:累進配当・DOE・増配・自社株買い・価格転嫁力を持つ企業は、インフレ対応と長期の収入増加を担う資産として残す価値があります。
- やるべきは「二極化」:利回りが下がった低成長の銘柄への新規買い増しは抑え、その資金を国債へ。質の高い高配当株はしっかり残す、という整理です。
- 国債にも価格変動はある:「安全資産=価格が下がらない」ではありません。長期債の一括購入は避け、債券ラダーで時間分散を。
- 役割で考える:生活費と暴落時の資金は国債で守り、長期的な増配と資産成長は質の高い高配当株で狙う。この役割分担が、退職前後の最適解に近づく道です。
「骨太ショック」で金利が動く局面は、不安に感じられるかもしれません。しかし見方を変えれば、守りの資産に利息が付く時代が戻ってきたということでもあります。あわてて一方に寄せるのではなく、高配当株と日本国債、それぞれの役割を理解して、あなたのライフプランに合った配分を少しずつ整えていきましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. 高配当株を全部売って、国債に乗り換えたほうがいいですか?
いいえ、その必要はありません。累進配当やDOE、増配実績など「質」を備えた高配当株は、インフレに合わせて配当が育つ成長資産です。見直すべきは、利回りが下がった低成長の銘柄への「新規の買い増し」です。
Q2. ニュースの「10年国債利回り」で個人向け国債が買えるのですか?
いいえ。報道される市場の利回りと、個人向け国債の適用金利は別物です。個人向け国債・変動10年は、市場金利をもとに一定のルールで決まるため、ニュースの数字より低くなるのが一般的です。募集ごとの適用利率は財務省や金融機関の最新情報でご確認ください。
Q3. 国債は「安全資産」なのに、価格が下がることがあるのですか?
満期まで保有すれば原則として額面で戻りますが、途中で売る場合は市場価格が変動します。金利が上がると既発債の価格は下がります。とくに残存期間の長い国債やETFは値動きが大きい点に注意しましょう。個人向け国債は中途換金しても元本割れしない設計です。
Q4. まとまった資金があります。今すぐ長期国債を一括で買うべきですか?
金利がさらに上がる可能性もあるため、一括購入は慎重に。満期をずらして少しずつ買う「債券ラダー」で時間分散すると、タイミングを外すリスクを抑えられます。
Q5. 退職が近いのですが、株式はもう減らすべきですか?
インフレに負けないために、株式(とくに質の高い高配当株)を一定割合残すことをおすすめします。生活費や暴落時の備えは国債・現金で守り、成長部分は株式で担う、という役割分担が現実的です。配分は年齢・年金・生活費・リスク許容度に合わせて調整してください。
免責事項
本記事は2026年7月時点の公表情報・報道・公的資料をもとにした一般的な情報提供・解説を目的としたものであり、特定の金融商品(国債、ETF、投資信託、個別株式など)の購入・売却を推奨するものではありません。骨太の方針については、正式決定前の原案と正式決定後の内容が異なる場合があります。政策金利、国債利回り、個人向け国債の適用利率、物価上昇率、為替などの数値は日々変動し、記事中の数字は執筆時点の目安です。実際の投資判断にあたっては、財務省・日本銀行・金融機関などの最新の一次情報を必ずご確認のうえ、ご自身の責任とリスク許容度に応じてご検討ください。本記事の情報を用いて行う一切の行為について、筆者および当サイトは責任を負いかねます。

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