イラン戦争終結後もインフレは続く?日銀利上げ・原油高・夏枯れ相場に備える資産防衛戦略

イラン戦争終結後のインフレ局面に備える、50代60代向け資産防衛戦略のイメージ

こんにちは、とすです。

中東情勢が落ち着きへと向かい、「これで原油も物価も一段落するだろう」と感じている方は多いかもしれません。ですが、結論から申し上げると、イラン戦争が終結に向かっても、インフレがすぐに収まるとは限りません。むしろ、原油供給の問題、日銀の利上げ、FRB(米連邦準備制度理事会)の高金利維持、そして夏枯れ相場が重なる、少し気を引き締めたい局面に入っています。

今回は、50代・60代の個人投資家の方が、この夏をどう乗り切るかを一緒に考えていきます。大切なのは「株式から逃げること」ではなく、守備力を上げながら、次の下落で買える体制を整えることです。不安を煽るのではなく、現実的な対策を順番に見ていきましょう。

イラン戦争が終結しても、原油供給はすぐには戻らない

戦争や紛争が終わっても、エネルギー価格はすぐに元通りにはなりません。なぜなら、原油を私たちのもとに届けるまでには、いくつもの段階があるからです。

  • 採掘施設(油田から原油を汲み上げる設備)
  • 精製施設(原油をガソリンや灯油に加工する工場)
  • 輸送ルート・タンカー運航(産地から消費地へ運ぶ船と航路)

これらのどこかが損傷していれば、供給が正常化するまでに時間がかかります。さらに見落としがちなのが、原油価格が一時的に下がっても、私たちの生活費にはタイムラグ(遅れ)をもって影響が残るという点です。物流費、電気代、ガソリン代、食品価格は、原油が落ち着いてからも、しばらく高いまま据え置かれることが珍しくありません。

つまり、これからは「原油の急騰」という派手な局面から、「エネルギー価格が高いまま下がりにくい(高止まり)」という、地味だが長引く局面へと変わっていく可能性があるのです。

日本は「コストプッシュ型インフレ」が続きやすい

日本のインフレには、特有の事情があります。それは、景気が強くてモノがどんどん売れるから値上がりする「良いインフレ」ではなく、コスト(原価)が上がるから仕方なく値上げする「コストプッシュ型インフレ」が中心だという点です。

いま日本では、次のような要因が同時に重なっています。

  • 円安による輸入物価の上昇
  • エネルギー価格の高止まり
  • 賃上げによる人件費の増加
  • 物流費・運送コストの上昇

こうした中で、日銀が政策金利を1%程度まで引き上げていくと、住宅ローンの返済額や企業の借入コストにも影響が出始めます。日銀の利上げが家計に与える影響については、【2026年最新】日銀利上げ1.0%時代へ!円安・金利上昇・景気減速に備える個人投資家の最適解でも詳しく整理していますので、あわせてご覧ください。

注意したいのは、需要が強いインフレではないため、家計と企業の両方を圧迫する「悪いインフレ」になりやすいことです。物価が上がるのに景気は伸び悩む――いわゆる軽いスタグフレーション(物価高と景気停滞が同時に起こる状態)のリスクも、頭の片隅に置いておきたいところです。

米国経済は強いが、FRBは利下げしにくい

一方、アメリカの経済は底堅さを保っています。経済が強いということは一見良いことですが、投資家にとっては悩ましい面もあります。景気がしっかりしていると、FRBは利下げを急がず、高金利を維持しようとするからです。場合によっては、追加の利上げを意識する局面すらあり得ます。

AI・半導体ブームや大型IPO(新規株式公開)への期待で、米国株式市場は活気づいています。関連する話題はNASDAQ100はまだ買いか?SpaceX・OpenAI大型IPO期待で注目の新NISA投資信託・ETF比較でも取り上げています。ただし、金利が高いまま続くことは、株価の割高さ(バリュエーション)には逆風です。

そして覚えておきたいのは、強い相場ほど、夏枯れや政治イベントの前に調整(株価の一時的な下落)が起きやすいということ。上がり続けてきた相場ほど、ちょっとしたきっかけで利益確定売りが出やすいのです。

夏枯れ相場に向けて、現金比率は上げるべきか

結論から言えば、現金比率は少し上げてよい局面だと考えます。夏場は取引参加者が減り、わずかな売りでも株価が大きく動きやすい「夏枯れ相場」になりがちだからです。この季節特有の動きについては、夏枯れ相場に備えよ!円安160円・金利上昇時代に一般投資家が取るべき”守備的投資戦略”で具体的にまとめています。

ただし、大事なのは目的です。これは「株を一気に売って逃げる」ためではなく、「下落したときに買える余力(=待機資金)を作る」ための現金です。目安としては、現金・MMF(短期の安全な運用商品)・短期資金を全体の10〜15%程度にしておくと安心感が増します。

現金の増やし方も、無理をする必要はありません。

  • 受け取った配当金を再投資せず、一旦プールする
  • 給与や売却益の一部を待機資金に回す
  • 新規の買いを少し抑える

こうして自然に現金が積み上がる仕組みを作るのがコツです。

債券比率はどう考えるべきか

守りを固めるうえで、債券(国などにお金を貸して利息を受け取る商品)の比率を25〜30%程度まで高めるのも有効です。株式が下落したときのクッション役になってくれます。

ただし、ひとつ大切な注意点があります。長期債(満期までの期間が長い債券)に一括投資するのは危険だということです。金利が上昇する局面では、長期債ETF(上場投資信託)の価格は大きく下がりやすいからです。金利が上がると、すでに発行されている低い利息の債券の魅力が下がり、価格が下落するという関係があります。

そこで、債券の中心は短期〜中期に置くのがおすすめです。

  • 個人向け国債・変動10年(金利上昇に合わせて利率が見直される)
  • MMFや定期預金
  • 短期の米国債

そのうえで、長期米国債ETFや超長期債ETFは、将来の利下げ局面を見据えた「サテライト(脇役)」として、少量を分割して買うのが現実的です。債券ETFの具体的な選び方は、米国債ETFは今どう買う?”分散Duration戦略”で守りながら増やす最適ポートフォリオ【2026年版】で詳しく解説しています。

高配当株は売るべきか

「相場が不安だから、高配当株も売ってしまおうか」と迷う方もいるでしょう。ですが、優良な高配当株を慌てて手放す必要はありません。むしろインフレ局面では、値上げできる力(価格転嫁力)や財務の健全性、増配の余地がある企業はしっかりと業績を伸ばせます。

残しておきたい銘柄の条件を整理してみます。

  • 累進配当(減配せず、配当を維持・増額する方針)を掲げている
  • DOE目標(純資産に対する配当の割合の目標)がある
  • 自社株買いに積極的
  • 低PBR(株価が資産価値に対して割安)の改善策を打ち出している
  • 営業キャッシュフロー(本業で稼ぐ現金)が安定している
  • 値上げできる力(価格転嫁力)がある

一方で、次のような銘柄は、この機会に整理を検討してもよいかもしれません。

  • 配当利回りが高いだけで、減配リスクが大きい
  • 借入への依存度が高い
  • 業績が横ばいで成長が見えない
  • 小型で流動性が低い(売りたいときに売りにくい)
  • 原材料高を価格に転嫁できていない

あくまで「全部を残す」のでも「全部を売る」のでもなく、銘柄ごとに質を見極めて、ポートフォリオの守備力を高めるという発想が大切です。

具体的な資産配分のイメージ

ここまでの内容を、ひとつの目安としてまとめてみます。あくまで一例であり、ご自身の年齢やリスク許容度に合わせて調整してください。

資産クラス 目安比率 役割
株式 55〜60% 長期成長、配当収入、インフレ耐性
現金・MMF・短期資金 10〜15% 生活防衛資金、暴落時の買い余力
債券・債券ETF 25〜30% 守り、金利収入、株式下落時の安定化
金・コモディティ関連 5〜10% 地政学リスク・インフレへの備え

ポイントは、株式を主役として残しつつ、現金と債券で土台を厚くし、金などで地政学リスクに備えるというバランスです。攻めと守りの両方を持つことで、相場が荒れても落ち着いて対応できます。

今後3か月の実行プラン

では、この夏に向けて具体的に何をすればよいか、行動レベルに落とし込んでみましょう。

  1. 新規買いを少し抑え、現金を厚くする
  2. 確信の持てない高配当株を整理する
  3. 短期〜中期債を中心に債券を少しずつ積み増す
  4. 長期債は一括ではなく、何回かに分けて買う
  5. 株式は、暴落時・VIX(恐怖指数)上昇時・SQ(先物やオプションの清算日)前後・原油の再上昇時などに、買い場を探す

そして忘れてはいけないのが、インデックス投資と高配当株投資の積立そのものは、止めずに継続するということ。ただし、高値を慌てて追いかけるのは避けます。相場が不安なときこそ淡々と積立を続ける意味については、日銀1%利上げ・円安160円・日経平均6万9000円時代でも、積立投資は続けるべきか?もご参考にしてください。

まとめ ―― 逃げるのではなく、守って待つ

いまの株式市場は、表面上は強く見えます。しかしその裏では、インフレの再燃、金利上昇、原油高、夏枯れ相場といったリスクが静かに重なっています。

こうした局面で投資家がすべきことは、株式から慌てて逃げ出すことではありません。守備力を高め、現金と債券を厚くし、次の下落で買える体制を整えておくことです。攻めの手を完全に止めるのではなく、「いつでも動ける準備をしながら待つ」という姿勢が、結果的に資産を守ります。

とくに50代・60代の方にとって大切なのは、最大の利益を狙うことよりも、退職前後の大きな下落を乗り越えられる設計を持つことです。この考え方は、最大利益より「最悪期を乗り越える力」|シーケンシャルリスクから老後資産を守る方法とも深くつながっています。あわせて読んでいただくと、守りの意味がより腑に落ちるはずです。

焦らず、しかし油断せず。この夏を一緒に乗り切っていきましょう。


※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資は自己責任であり、ご自身の生活費・年齢・リスク許容度に合わせて判断することが大切です。最終的な投資判断は、ご自身の責任において行ってください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました