働き続けるシニア必読!知らないと損する制度変更ポイントと、今からできる老後マネー対策
「働くと年金が減るって本当?」
「遺族年金が5年で終わるって聞いたけど大丈夫?」
2025〜2027年にかけて議論・実施される年金制度の改正は、とくに50〜60代の家計に大きな影響を与える可能性があります。背景にあるのは、少子高齢化と社会保険財政の変化です。政府は「長く働きながら年金を受け取る社会」へと、制度を作り変えようとしています。
この記事では、2026年5月時点の厚生労働省・社会保障審議会年金部会の資料をもとに、2027年前後に予定されている年金改正の主な論点と、60代から始めたい資産戦略を、専門用語をできるだけかみくだいて解説します。
※本記事の内容は2026年5月時点の検討状況です。最終的な制度内容は今後変わる可能性があります。
改正ポイント①:在職老齢年金の見直し ― 働きながら年金をもらう人へ
60代に最も影響が大きいのが「在職老齢年金」の見直しです。
在職老齢年金とは、65歳以上で働いている人が、一定以上の給料を受け取ると年金の一部が止まってしまう制度のこと。仕組みはとてもシンプルで、次の式で計算されます。
(年金月額 + 総報酬月額相当額 − 基準額)÷ 2 = 止められる年金の額
「総報酬月額相当額」とは、毎月の給料と賞与(ボーナス)を月割りにした金額のことです。たとえば次のようなケースを考えてみましょう。
- 年金月額:15万円
- 給料の月額:30万円
- 合計:45万円
現在の基準額(50万円程度)の中におさまっていれば、年金が大きく減ることはありません。ただし、ここに賞与が乗ったり、役職手当がついたりすると、すぐに基準を超えて年金が止まってしまうケースもあります。
2026〜2027年にかけては、この基準額を引き上げる、あるいは制度そのものを縮小・撤廃する方向で議論が進んでいます。背景には「働くと損をする」という現役シニアの不満があります。実際、勤務日数を減らす、収入を調整する、役職を断る、といった行動を取る人も少なくありません。
人手不足対策の観点からも、「高齢者にもっと働いてもらいたい」というのが国の本音です。そのため、支給停止の基準額を大きく引き上げる案が、現時点では有力視されています。
60代への影響:再雇用組には大きな追い風
もし基準額が引き上げられれば、再雇用で月25〜35万円程度の給料を受け取り、年金は月15万円前後という方は、年金の減額がほぼ起きなくなる可能性があります。「働けば働くほど手取りが増える」という、ごくシンプルな構造に近づくわけです。
改正ポイント②:遺族年金の見直し ― 配偶者を亡くした後の生活設計
次に話題になっているのが、遺族年金(=配偶者が亡くなった後に受け取れる年金)の見直しです。
SNSなどで「遺族年金が5年で終わってしまう」という情報が広がりました。正確には、すべての人が5年で打ち切られるわけではなく、「一部のケースで有期化(=一定期間だけ支給する仕組み)」が検討されている、というのが現時点での議論です。
現在は、夫を亡くした妻が、遺族厚生年金を一生涯受け取れるケースが多くあります。しかし今後は、男女差の解消や共働き世帯の増加、女性の就業率の上昇を背景に、次のような方向で見直しが進む見込みです。
- 子どもがいない
- 比較的若い世代(おおむね60歳未満など)
- 一定の就労能力がある
このような場合には、「5年間など期間を区切った給付」に切り替える案が議論されています。一方で、高齢の配偶者や子どものいる世帯は、これまでどおり手厚く支える方向です。なお、2026年5月時点では細かいルールはまだ確定していません。
60代が考えるべきポイント:「片働き家計」のリスクに備える
大切なのは、「配偶者が亡くなったあとも、生活が成り立つ家計」を準備しておくことです。
具体的には、つぎのような「夫婦どちらかが亡くなっても残る収入源」を意識的に作っておきましょう。
- 株式の配当収入(高配当株・高配当ETF)
- 個人年金保険からの年金
- 新NISA口座で積み立てた資産の取り崩し
- 個人向け国債・債券ETFの利息収入
改正ポイント③:社会保険の適用拡大 ― パート・短時間勤務者の家計影響
3つ目の重要テーマが、いわゆる「106万円の壁」「130万円の壁」の見直しです。
「年収の壁」とは、一定の収入を超えると社会保険に加入することになり、その結果、手取りが一時的に減ってしまう現象のことです。これまでは、企業規模や労働時間などの条件で、加入するかどうかが決まっていました。
今後は、次のような方向で見直しが進められる予定です。
- 企業規模要件(従業員数など)の撤廃
- 短時間労働者への適用範囲の拡大
- 「年収の壁」自体のなだらか化(106万円・130万円の段差を緩める)
具体例:月収10万円のパート勤務の場合
たとえば、月収10万円(年収120万円)でパート勤務をしている方の場合。これまで「扶養の範囲内」とされてきたケースでも、今後は社会保険への加入対象になる可能性があります。
仮に厚生年金と健康保険に加入すると、保険料の負担は次のようなイメージです。
- 月の保険料:1万5千円前後
- 年間の負担:18万円前後
短期的には、確かに手取りは減ってしまいます。一方で、長期的に見ると次のようなメリットも生まれます。
- 将来受け取る厚生年金が増える
- 病気やケガで休んだときの「傷病手当金」がもらえる
- 万一の障害状態に備える「障害年金」の保障が強化される
つまり、「短期的には負担増、長期的には保障強化」という構造です。働き方を考えるときは、目先の手取りだけでなく、将来の年金額や保障もあわせて見るようにしましょう。
改正ポイント④:国民年金・厚生年金の納付期間延長と私的年金の拡充
現在、国民年金保険料を納める期間は20歳から60歳までの40年間ですが、今後はこれを45年(20歳〜65歳)に延長する案も議論されています。
背景には、平均寿命が伸びていることと、年金財政を維持する必要があることがあります。もし延長が実現すれば、現役世代の保険料負担はその分増えることになりますが、その代わりに将来の年金額も底上げされる方向となります。
iDeCoの拡充と「繰下げ受給」の活用
その一方で注目されているのが、iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金。自分で積み立てる私的年金制度)の拡充です。最近の改正で、加入できる年齢の上限が引き上げられ、60代でも活用しやすくなっています。
さらに、老齢年金には「繰下げ受給」という仕組みもあります。これは、年金の受け取りを65歳より遅らせることで、毎月もらう金額を増やす制度です。増額のルールはとてもシンプルです。
- 1か月遅らせるごとに:0.7%増額
- 最大75歳まで遅らせると:84%増額
たとえば、65歳から月15万円もらう予定だった年金を70歳まで繰下げると、月の金額は約21万3千円まで増える計算です。ただし、繰下げ中は年金収入が入ってこないので、ご自身の健康状態や就労状況、家計の余裕を踏まえて判断する必要があります。
60代からの資産戦略:改正に負けない3つの行動指針
① 年金+給与+配当の“三本柱”を作る
これからの時代は、「公的年金だけ」に頼る家計はリスクが大きくなります。おすすめは、次の3つの収入源を組み合わせることです。
- 公的年金(老齢厚生年金・老齢基礎年金)
- 就労収入(再雇用やパート、フリーランス)
- 配当・利息などの不労所得
とくに配当収入は、在職老齢年金の計算対象に含まれないのが大きなポイントです。給料と違い、いくら受け取っても年金が止まることはありません。
② 新NISAとiDeCoを併用する
2024年から始まった新NISAは、60代でも十分に活用できます。たとえば、無理のない積立額として、次のような組み合わせが考えられます。
- 新NISA成長投資枠:月5万円
- iDeCo:月2万3千円
投資の中身としては、全世界株式インデックス(オルカン)、日米の高配当ETF、債券ETFなどを組み合わせると、リスクをならしながら長期で育てることができます。ただし、価格は日々動くため、生活防衛資金(生活費の半年〜1年分)は必ず現金で確保しておきましょう。
③ 債券・現金比率を高める
60代は「攻め」だけでなく「守り」の意識も重要です。今後は次のようなリスクが続くことも想定しておきましょう。
- 物価上昇(インフレ)
- 金利の変動
- 社会保険料・税金の負担増
そのため、株式中心の資産だけでなく、つぎのような“守りの資産”もバランスよく持っておくことが大切です。
- 個人向け国債(変動10年が代表的)
- 債券ETF(日本円建ての社債ETFなど)
- 定期預金・MRFなどの現金性資産
まとめ:今日から始められる1アクション
2027年前後の年金改正は、働き方・受給額・社会保険料の負担・老後の資産設計まで、私たちの生活に幅広く影響します。ただ、必要以上に不安になる必要はありません。大切なのは、「制度を知り、早めに準備しておくこと」だけです。
今日からできる1アクションとして、まずは「ねんきんネット」にログインして、ご自身の年金見込み額を確認してみることをおすすめします。日本年金機構の公式サイトから、マイナンバーカードやユーザID(ねんきん定期便に記載)で登録できます。
自分の年金がいくらになりそうかが分かれば、つぎのような行動がぐっと具体的になります。
- 何歳まで働くか(再雇用・繰下げ受給の検討)
- NISA・iDeCoでいくら積み立てるか
- 配当でいくらの不労所得を目指すか
これからの時代は、「年金を待つだけの老後」ではなく、「自分でも老後の収入を育てていく時代」と言えるでしょう。制度の変化を“ピンチ”ではなく“きっかけ”と捉え、ご自身に合った資産戦略を一緒に組み立てていきましょう。
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※本記事は2026年5月時点の厚生労働省・社会保障審議会年金部会の公開資料等に基づく一般的な解説であり、特定の制度内容や投資行動を保証・推奨するものではありません。最新情報および個別の取り扱いについては、日本年金機構や年金事務所、各金融機関、専門家にご確認のうえ、ご自身の判断と責任において行ってください。

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