「働くと年金が減るから、仕事はほどほどに」──そんな常識が、いま大きく変わろうとしています。2026年~2027年の在職老齢年金の改正では、年金がカットされ始める基準が「51万円の壁」から「65万円の壁」へ引き上げられ、働きながら年金を受け取るシニアにとって大きな追い風となりました。本記事では、制度のしくみを初心者にもわかりやすく解説し、年収200万〜600万円の実例シミュレーションを交えながら「結局いくらまで働けるのか?」を具体的にお伝えします。60代からの働き方・資産形成の考え方もあわせて解説します。
はじめに|「働くと年金が減る」はもう古い?
「せっかく再雇用で働いても、年金がカットされるなら損ではないか」──60代の方からよく聞く悩みです。実際これまでは、給与と年金の合計が一定額を超えると老齢厚生年金の一部が止まる仕組みがあり、あえて勤務時間を抑える「働き控え」が起きていました。
ところが2026年・2027年の改正で、この“壁”が大きく上がります。結論から言うと、多くの再雇用世代にとって「働き損」はほぼ解消されると考えてよい内容です。まずは制度の基本からやさしく見ていきましょう。
在職老齢年金とは?初心者向けにやさしく解説
在職老齢年金とは、働きながら厚生年金を受け取る人を対象に、給与と年金の合計額に応じて年金の一部を止める(支給停止する)仕組みです。ポイントは次の3つです。
- 対象は「働きながら年金をもらう人」。会社員として厚生年金に加入しながら受給する人が対象です。
- 減るのは「老齢厚生年金」だけ。給与に近い性格の厚生年金部分のみが調整されます。
- 「老齢基礎年金(国民年金)」は減らない。土台となる基礎年金は、どれだけ働いても全額受け取れます。
つまり「働いたら年金が全部消える」わけではなく、調整されるのは厚生年金の一部だけ。ここを誤解して必要以上に働き控える人が多いのです。仕組みの詳細はこちらの記事も参考になります。
2026年~2027年改正で何が変わる?「51万円の壁→65万円の壁」
今回の改正で最大のポイントが、支給停止が始まる基準額の引き上げです。これまでは給与(月収相当)と年金の合計が月51万円を超えると年金がカットされ始めましたが、改正後はこの基準が月65万円まで引き上げられます。
| 項目 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 支給停止の基準額 | 月51万円 | 月65万円 |
| カット対象 | 老齢厚生年金 | 老齢厚生年金(変わらず) |
| 基礎年金 | 減らない | 減らない |
たった14万円の差に見えますが、これは「給与+厚生年金の合計が月65万円までなら年金は1円も減らない」という意味です。年収にするとかなりの水準まで、減額を気にせず働けるようになります。年金改正全体の流れはこちらで詳しく解説しています。
なぜ政府は改正したのか?背景にある3つの狙い
基準額を引き上げた背景には、政府側の事情があります。主に次の3つです。
- 深刻な人手不足──元気なシニアに、もっと長く働いてほしい。
- シニア就労の促進──「働くと損」という心理的ブレーキを外したい。
- 社会保険料・税収の確保──働き続ける人が増えれば、支え手も増える。
言い換えれば、この改正には「高齢者の労働参加率を引き上げたい」という明確な意図があります。これまで制度が“働き控え”を生んでいたという反省から、壁を上げて「安心して働ける」環境に整え直した、というのが本質です。私たち個人にとっては、収入の選択肢が広がる前向きな変化と捉えてよいでしょう。
【実例】年収別シミュレーション|200万〜600万円で年金はいくら減る?
ここが本記事の主役です。改正後の「月65万円の壁」をもとに、年収別に年金がいくら減るのかをざっくり試算してみましょう。ここでは老齢厚生年金が月10万円前後のモデルを想定しています。
| 年収 | 月給与の目安 | 年金減額(改正後) |
|---|---|---|
| 200万円 | 約16.7万円 | 0円 |
| 300万円 | 約25万円 | 0円 |
| 400万円 | 約33万円 | 0円 |
| 500万円 | 約41万円 | 0円 |
| 600万円 | 約50万円 | ほぼ0円 |
ご覧のとおり、年収500万〜600万円でも、年金の減額はほぼ気にしなくてよい水準になります。月給与50万円+厚生年金10万円でも合計60万円で、65万円の壁の手前。これが「働き損はほぼ解消」と言われる理由です。65歳時点でのリアルな年金額を知りたい方は、こちらの試算記事も参考になります。
どんな人が年金カット対象になる?
では、改正後も年金が減る人はどんな人でしょうか。ポイントは「給与+厚生年金の合計が月65万円を超えるかどうか」です。具体的には次のようなケースです。
- 年収700万円超の高給与で再雇用・現役を続ける人
- 役員や管理職として高い報酬を受け取っている人
- もともとの老齢厚生年金が月15万円など多めの人
たとえば「月給与55万円+厚生年金15万円=合計70万円」の場合、65万円を5万円超えるため、その超過分に応じて厚生年金の一部が止まります。とはいえ、対象になるのはかなりの高収入層に限られます。「自分は対象か?」が気になる方は、給与と年金の月合計が65万円を超えるかを目安にチェックしてみてください。
シニア投資家はどう考えるべきか?収入の3本柱でキャッシュフロー最大化
ここからが、当ブログならではの視点です。改正で「働ける幅」が広がった今こそ、給与・年金・配当という“収入の3本柱”を組み合わせて、老後のキャッシュフローを最大化する発想が効いてきます。
たとえば次のような組み合わせです。
- 再雇用の給与:年300万円
- 公的年金:年220万円
- 高配当株・ETFの配当:年100万円
合計で年620万円。給与だけに頼らず、複数の収入源を持つことで「働けなくなったら終わり」という不安がぐっと和らぎます。投資の名著『敗者のゲーム』が説く長期・分散の発想や、「価値を生む資産を長く持て」というバフェット流の考え方とも相性が良い戦略です。収入源は一つに頼らず、複数持つ──これが60代以降の資産設計の基本になります。
配当という3本目の柱をこれから作りたい方は、まず少額から始められる高配当株投資の入門記事から読んでみるのがおすすめです。
まとめ|60代の資産形成戦略が変わる
2026年~2027年の在職老齢年金改正のポイントを整理します。
- ✅ 支給停止の基準が「51万円の壁」から「65万円の壁」へ引き上げ
- ✅ 年収500万〜600万円でも年金減額はほぼ気にしなくてよい
- ✅ 「働き損」はかなり解消され、安心して働ける環境に
- ✅ 給与+年金+配当の“3本柱”で老後の安心感が大きく高まる
制度が変われば、60代からの働き方・資産形成の最適解も変わります。「働き控え」から「働きながら資産を育てる」へ。改正を前向きに活用して、ご自身に合ったキャッシュフロー設計を考えてみてください。
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※この記事は2026年時点の制度・一般情報に基づく解説です。年金額や支給停止の判定は個人の加入状況により異なり、改正内容も今後変更される場合があります。特定の銘柄や投資行動を推奨するものではありません。正確な年金額は年金事務所等でご確認いただき、投資判断はご自身のリスク許容度に応じてご検討ください。

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