夜10時。証券会社のアプリを開くと、東京証券取引所はとっくに閉まっているのに、こんな数字が並んでいます。
トヨタ ADR +2.5%
三菱UFJ ADR +1.8%
「日本の市場は閉まっているのに、どうして株価が動いているの?」🤔
この「夜の株価」の見え方が、2026年12月から大きく変わります。
米国の主な取引所が、平日1日23時間の取引を始める予定だからです。
日本時間では12月7日(月)午前11時から、昼間でも米国株が売買される見込みです。
この記事では、新NISAで日本株や高配当株を持つ50代・60代の方に向けて、次の3つを整理します。
- 日本時間で何時に、どの市場が動くのか
- ADRやPTSの「夜の株価」の意味がどう変わるのか
- 夜間の取引で気をつけたいルールと、ネット証券各社の対応
※情報は2026年10月5日時点で確認できたものです。とは言いつつ、シニアに夜更かしは厳しいので、昼に動くのは助かりますね😅
📌 まず結論|ADR・PTS・時間外取引は「何を・どこで・いつ」
ADR → 何を取引するか(米国で売買される日本企業などの証券)
PTS → どこで取引するか(取引所以外で日本株を売買する場所)
プレ/アフター/夜間 → いつ取引するか(時間帯)
そして12月からは、「いつ」の部分が平日ほぼ一日中に広がります。
ADRとPTSの仕組みそのものは、ADRとPTSの違いとは?夜間取引の仕組みと翌日の日本株の読み方【保存版】でくわしく解説しています。
この記事では、12月からの変化に絞ってお伝えします。
🗓️ 12月6日から何が始まる?|10月時点の最新状況
米国では、複数の取引所が「1日23時間×週5日」(23/5)の取引を準備しています。
完全な24時間365日ではありません。土日は休みで、毎日1時間の停止時間があります。
✅ 事実|取引所の承認と準備
| 市場・仕組み | 状況(2026年10月5日時点) |
|---|---|
| Nasdaq | 2026年4月10日にSECが承認。12月6日開始予定。9月から事前テストを実施中 |
| NYSE Arca | 2026年5月21日に23時間の計画をSECが承認。12月6日開始予定 |
| Cboe EDGX | 2026年5月29日にSECが承認 |
| MEMX | 2026年9月9日にSECが承認 |
| 清算(NSCC) | 2026年6月末から、平日ほぼ24時間の清算体制が稼働済み |
| 株価情報の配信(SIP) | 12月6日から23時間対応へ拡張予定。各取引所の承認は、この準備が整うことが条件 |
NYSE Arcaは、2025年2月に一度「1日22時間」の計画で承認を受けていました。
その後、夜間の時間帯を加えた23時間の計画に改め、2026年5月にあらためて承認されています。
古い記事で「22時間」と書かれているのは、この前の計画です。
9月17日には、SEC(米国の証券取引委員会)が24時間取引をテーマにした公開の会合を開きました。
その場では、次のような事実も示されています。
夜間の取引が全体に占める割合
(2026年8月・株数ベース)
0.9%
夜間の取引のうち
海外からの注文の割合
37%
つまり今の夜間の米国株は、まだとても取引の少ない時間帯です。
SECは、もし株価情報の配信の準備が遅れた場合に備えて、別の取引所に2027年1月24日から夜間の取引を認める「保険」の措置も出しています。
12月6日は「予定」であって、確定ではないと受け止めておくのが安全です。
⏰ 日本時間に直すとこうなる(冬時間・12月7日から)
米国は11月1日(日)に夏時間が終わり、冬時間に切り替わります。
12月の開始時点は冬時間です。日本時間に直すと、平日の1日はこう並びます。
📊 平日の24時間(日本時間・冬時間)
東京証券取引所
米国株(12月7日から)
※東証は11:30〜12:30が昼休み。米国株の時間帯の名前は取引所により異なります。
| 日本時間 | 米国株の時間帯 | 東証 |
|---|---|---|
| 11:00〜18:00 | 夜間セッション(新設) | 11:00〜15:30は同時に開いている |
| 18:00〜23:30 | 開場前(プレ) | 閉まっている |
| 23:30〜翌6:00 | 通常取引 | 閉まっている |
| 6:00〜10:00 | 引け後(アフター) | 9:00から開く |
| 10:00〜11:00 | 停止(清算・システム処理) | 開いている |
週のはじまりは月曜11時、週の終わりは土曜朝10時です。
なお11月1日までの夏時間の期間は、どの時間帯も1時間早くなります。
🔄 「夜の株価」の地図がどう変わるか
ここからが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。
① トヨタのADRが「東証と同じ時間」に動き出す
これまでADRは、東証が閉まったあとの夜に動く「翌朝の温度計」でした。
12月からは、東証が開いている11時〜15時半にも、米国の夜間セッションでADRが売買される見込みです。
取引所の夜間セッションで扱うのは、米国の取引所に上場している株(NMS株と呼ばれます)です。
トヨタ(TM)、ソニーグループ(SONY)、三菱UFJ(MUFG)、ホンダ(HMC)のADRは、ニューヨーク証券取引所に上場しています。
② 任天堂やNTTのADRは対象外
一方、任天堂(NTDOY)やNTT(NTTYY)のADRは、取引所ではなく店頭市場(OTC)で売買されています。
店頭のADRは、今回の取引所の23時間化の対象には入りません。
同じ「ADR」でも、銘柄によって扱いが分かれる点に注意が必要です。
③ 🔍 分析|ADRの「温度計」の役割は変わる
ここからは私の推論です。
東証とADRが同じ時間に動けば、両者の値段はお互いを見ながら決まっていくはずです。
そうなると、昼間のADRの値動きに「翌朝の予想」としての意味は薄れると考えています。
逆に、東証が閉まったあとの夕方〜夜は、これまで以上に米国側の値段がずっと続けて出てくるようになります。
日本の夜間PTSと米国の開場前の取引が、同じ時間帯に並ぶ場面も増えるでしょう。
ただし、先ほど見たとおり、夜間の取引はまだ全体の1%にも届きません。
取引が少ない時間の値段は、少しの注文で大きくぶれます。
「昼間のADRが+3%だから、東証のトヨタも上がるはず」と考えるのは早計です。
⚠️ 夜間セッションの3つのルール
取引所の夜間セッションには、ふだんの取引時間とは違うルールがあります。
① 指値注文だけ
値段を決めずに買う「成行」は使えません。自分で値段を指定する「指値」のみです。楽天証券の案内も「指値のみ」となっています。
② 上下20%の値幅制限
基準の値段から上下20%を超える取引はできない仕組みが、当面設けられます。急な乱高下を防ぐための安全装置です。
③ 株式分割・合併などの日は止まる
株式分割や合併、銘柄コードの変更などがある日は、その銘柄の夜間取引が止まります。
また、取引所の夜間セッションに直接参加できるのは、取引所の会員の証券会社だけです。
私たち個人は、使っている証券会社が対応してはじめて利用できます。
🏢 日本のネット証券の対応(10月5日時点)
| 証券会社 | 対応の予定 | 日本時間(冬時間) |
|---|---|---|
| 楽天証券 | 12月7日(月)11時から23時間取引(10月1日発表)。指値のみ | 11:00〜翌10:00 |
| 松井証券 | 12月6日の取引(日本時間12月7日11時)から23時間へ(7月28日発表)。NISA口座は米国株の売買手数料が無料 | 11:00〜翌10:00 |
| マネックス証券 | 12月6日からの23時間取引を予定(8月7日発表) | 公式発表で確認を |
| SBI証券 | 2026年内の提供予定と報じられています。開始日は各自ご確認ください | 公式発表で確認を |
※各社の公式発表・報道をもとに筆者がまとめたもの。対象銘柄、注文方法、NISA口座での扱いは各社で異なり、今後変わる可能性があります。
証券会社によって、対象の銘柄や時間、NISA口座で使えるかどうかが違います。
12月が近づいたら、使っている証券会社のお知らせを一度確認しておくと安心です。
証券会社そのものの比べ方は、50代・60代のNISA・高配当投資に向く証券会社比較【2026年9月版】にまとめています。
🗾 米国株を持っていない日本株投資家にも関係ある?
「私は日本の高配当株しか持っていないから関係ない」と思われるかもしれません。
ただ、間接的な影響はあると私は見ています(ここも推論です)。
- 東証の取引中に、米国株の値段が動くようになります。たとえば昼間に米国の半導体株が大きく動けば、東証の関連株にも同じ時間のうちに影響が及ぶかもしれません。
- 翌朝の「窓開け」の意味が変わる可能性があります。夜のあいだに米国株が動いた分を、朝いちばんにまとめて反映する、という形が少しずつ薄まるかもしれません。
- ドル円も同じです。米国の株や金利が昼間に動けば、為替もそれにつれて動きやすくなります。輸出企業の株価には、昼間の為替の動きがこれまで以上に効いてくるでしょう。
とはいえ、夜間の取引はまだ全体の1%にも届きません。
こうした変化が目に見えて表れるのは、参加者が増えてからだと考えています。
12月にいきなり相場の動き方が変わる、と構える必要はありません。
📝 12月7日までに確認しておきたい5つのこと
とくに4つ目は見落としがちです。
通常の取引時間だけのつもりで出した指値注文が、取引の少ない時間帯に約定してしまう――。
そうしたことが起きないよう、注文画面の「時間外も有効」の設定を一度確かめておくと安心です。
楽天証券の案内でも、時間外取引を有効にした注文の扱いについて注意書きがあります。
🚫 時間外の取引でやってはいけないこと
- 夜中まで株価を見続ける
- ニュースが出るたびに売買する
- 取引の少ない時間帯に、高すぎる指値・安すぎる指値を出す
- PTSやADRの値段だけで、翌日の株価を決めつける
- 時間外の急騰を見て、慌てて飛びつく
「思っていた値段で買えない」ことがある
取引が少ない時間帯は、買値と売値の差(スプレッド)が広がりがちです。
「100.00ドルで買えて100.00ドルで売れる」のではありません。
「買うなら100.50ドル、売るなら99.50ドル」といった状態になります。この差は、そのまま自分のコストです。
夜間セッションは指値だけなので、成行で思わぬ値段になる心配は減ります。
それでも、指値の値段を決めるときは、昼間の通常取引の値段を基準にするのが安全です。
🌾 高配当株投資家に、23時間取引は必要か?
長期の高配当株投資家ほど、23時間市場に無理に付き合う必要はありません。
利益、キャッシュフロー、配当方針、自社株買い。
こうしたものを見て長く持つ投資では、夜間の5%の値動きより、5年後・10年後にその会社がどれだけ利益と配当を生むかのほうがずっと大切です。
ただし、まったく不要というわけでもありません。
決算、減配、不祥事、M&Aといった大きなニュースが出たとき、市場がどう受け止めたかを早めに知る手がかりになります。
使いどころを絞ればよい、ということです。
とくに新NISAで高配当株を積み上げている方は、非課税の枠を使って長く持つことが前提です。
時間外の値動きに反応して売買を繰り返せば、その前提そのものが崩れてしまいます。
23時間取引で世界の株式市場の動き方がどう変わるかは、米国株23時間取引で世界の株式市場はどう変わる?AI一極集中から始まるセクターローテーションで取り上げています。
💬 私はこう考えています
ウォーレン・バフェット氏は、「株を買うときは、翌日から市場が5年間閉まっても困らないものを買う」という趣旨の発言で知られています。
23時間取引のニュースを読みながら、私はこの言葉を何度も思い出しました。
夜の米国株の値動きが気になって、寝る前についスマホを開いてしまう。
そして翌朝、ほとんど元に戻っている値段を見て、何のために起きていたのかと思う。
そんな経験のある方も多いのではないでしょうか。
12月から、米国株は昼間にも動くようになります。
夜更かしをしなくてよくなるのは、私たち世代にはありがたい変化です。
ただ、それは「売買の回数を増やしてよい」という意味ではありません。
昼間に値段が見えるようになる分、仕事中や家事の合間にもアプリを開きたくなる誘惑は、むしろ増えるかもしれません。
私が大切にしたいと考えているのは、次の2つです。
一つは、売買の判断は、通常の取引時間の値段で行うこと。取引の少ない時間の値段は「参考」にとどめます。
もう一つは、大きなニュースが出たときだけ、時間外の値段を見ること。毎日は見ません。
市場が23時間動いても、私たちの生活は24時間あります。
仕事も、家族との時間も、睡眠もあります。
新しい仕組みは「便利な道具」として使い、振り回されないようにしたいと考えています。
❓ よくある質問
Q1. 12月から、米国株は24時間買えるようになりますか?
完全な24時間ではありません。平日に1日23時間(日本時間の冬時間では月曜11時〜土曜10時、毎日10時〜11時は停止)の予定です。土日は休みです。開始日も、株価情報の配信の準備などが整うことが条件の「予定」です。
Q2. 自分の証券会社でも、昼間に米国株を買えますか?
証券会社が対応していれば買えます。楽天証券と松井証券は日本時間12月7日11時からの対応を発表しています。対象銘柄や注文方法は各社で違うので、公式のお知らせで確認してください。
Q3. 夜間セッションで成行注文は使えますか?
使えません。取引所の夜間セッションは指値注文のみです。あわせて、上下20%の値幅制限が設けられます。
Q4. 任天堂のADRも昼間に動くようになりますか?
任天堂やNTTのADRは店頭市場(OTC)で売買されているため、取引所の23時間化の対象には入りません。トヨタやソニーグループのように、米国の取引所に上場しているADRが対象です。
Q5. ADRが上がれば、東証の株も上がりますか?
必ずしもそうはなりません。参考にはなりますが、為替や需給の違い、取引の少なさによってずれが出ます。12月からは東証と同じ時間にもADRが動くため、「翌朝の予想」としての意味は薄れていくと考えられます。
Q6. 米国株の通常の取引時間は、日本時間で何時ですか?
夏時間(11月1日まで)は22:30〜翌5:00、冬時間(11月2日から)は23:30〜翌6:00です。米国東部時間ではどちらも9:30〜16:00です。
🌙 まとめ|市場が23時間動いても、あなたが23時間動く必要はない
✅ 米国の主な取引所は、12月6日(日本時間12月7日11時)から平日23時間の取引を始める予定
✅ 日本時間では、東証と米国株が同じ時間に動く時間帯(11時〜15時半)が生まれる
✅ 夜間セッションは指値のみ・上下20%の値幅制限つき。今はまだ取引が少ない
✅ 任天堂・NTTのような店頭のADRは対象外
✅ 使えるかどうかは、自分の証券会社の対応しだい
夜の株価は、眺めるものであって、追いかけるものではありません。
昼の株価が増えても、その距離感は同じです。
50代・60代からの資産づくりには、そのくらいがちょうどよいと私は思います。🌙
📚 参考資料・出典
- WilmerHale「23×5 Trading Comes to US Exchanges」(2026年9月29日)(各取引所の承認日、清算体制、夜間の注文ルール)
- Sidley Austin「SEC Roundtable Highlights Key Considerations for 24-Hour Trading」(2026年9月)(夜間取引の割合、SIPの拡張)
- Jones Day「NYSE and Nasdaq Move to 23-Hour Trading Day」(2026年9月)
- Nasdaq「23/5 Trading Information Hub」
- NYSE「Extended Hours Trading」
- 楽天証券「【米国株式23時間取引】日本時間の日中もリアルタイムで売買可能に!」(2026年10月1日)
- 松井証券「米国株の取引時間を23時間に拡大します!」(2026年7月28日)
- マネックス証券「12月6日よりスタート予定!米国株23時間取引で日中での米国株取引が可能に!」(2026年8月7日)
※本記事は2026年10月5日時点で公表されている情報をもとに作成しています。取引時間・開始予定日・制度の内容は、市場インフラの整備状況や規制当局の判断、各証券会社の方針により変更される可能性があります。実際のお取引の前には、必ずご利用の証券会社および各市場の公式情報をご確認ください。本記事は筆者個人の考えをまとめたものであり、特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任においてお願いいたします。


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