長期金利3%時代、高配当株の常識が変わる|「利回りが高いだけ」の株を買ってはいけない理由

2026年9月1日、東京債券市場で長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りが、一時3.000%まで上昇しました。3%台に乗せるのは1996年9月以来、約30年ぶりのことです📈

ニュースとしては「30年ぶりの高水準」という見出しが目立ちます。ただ、私たち個人投資家にとって本当に大事なのは、金利の数字そのものではありません。日本の投資環境の「ものさし」が、静かに、しかし決定的に入れ替わったということです。

この記事では、その変化が高配当株投資にどう効いてくるのかを、50代・60代の方に向けてできるだけやさしく整理していきます。結論を先に言えば、こうなります。

高配当株の敵は、株価下落ではなく金利上昇かもしれない。
これからは「利回りが高い株」ではなく、「配当を増やせる会社」を買う時代です。

1. 長期金利3%――日本人の資産運用の「基準」が変わった

まず、いま日本の金利環境がどうなっているのかを、数字で確認しておきましょう。

新発10年物国債利回り
3.000%
2026年9月1日 一時/約30年ぶり

日銀の政策金利
1.0%
2026年6月に0.25%引き上げ後、据え置き

コアCPI(生鮮食品を除く)
+1.8%
2026年7月分/2026年8月21日公表

個人向け国債(変動10年)
1.87%
2026年9月15日発行分の適用利率

大手行の定期預金(1年)
0.5%
三井住友銀行の店頭表示金利(2026年9月1日現在)

数年前まで、この表に並ぶ数字はほとんどが「0.0◯%」でした。それが今は、預金でも0.5%、個人向け国債なら1.87%、長期国債にいたっては3%です。

長期金利は、単なる国債の利回りではありません。住宅ローン、企業の借入金利、不動産の利回り、そして株式の「これくらいは儲かってほしい」という期待水準まで、あらゆる金融商品の値段のもとになる基準値です。

基準が動けば、その上に乗っている全部の値段が動きます。高配当株も、当然その例外ではありません。

金利上昇の局面でセクターごとにどんな明暗が出るかは、3%を目前にした時点で 日本10年債3%目前|高配当株の勝ち組・負け組はこう変わる でも整理しました。今回はそこからもう一歩踏み込んで、「銘柄の選び方そのもの」がどう変わるのかを扱います。

2. 私たちは30年間、「金利のない世界」に慣れすぎた

ここで一度、頭の中を整理しておきたいことがあります。

デフレの時代、現金は実はとても優秀な資産でした。金利はほぼゼロでも、モノの値段が上がらない、あるいは下がっていく。だからタンス預金でも、購買力(買えるモノの量)はほとんど減らなかったのです。

「投資なんてしなくても、預金しておけば安心」という感覚は、決して思考停止ではなく、当時の環境ではそれなりに合理的でした。

ところが、インフレが年2~3%続く世界では、話が正反対になります。

現金100万円は、10年後も帳簿の上では100万円のままです。
けれど物価が毎年2.5%上がると、10年後にその100万円で買えるものは、今の約78万円分まで減ります。
金額は1円も減っていないのに、実質では22万円分が失われている――これがインフレの怖いところです。

日本銀行が2026年7月31日に公表した「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」でも、生鮮食品を除く消費者物価の見通しは2026年度+2.5%、2027年度+2.4%、2028年度+2.0%とされています。つまり、少なくとも数年は2%前後の物価上昇が続く前提で、政策も経済も動いているということです。

だとすれば、私たちが投資で守るべきものも変わります。

インフレ時代に守るべきものは、資産額ではなく購買力。

「元本が減らないこと」を最優先にしていると、気づかないうちに購買力が痩せていく。逆に多少の値動きがあっても、資産そのものが物価に合わせて増えていく仕組みを持っていれば、生活水準は守られます。日銀の利上げと物価の関係については 日銀利上げ1.0%時代へ!円安・金利上昇・景気減速に備える個人投資家の最適解 もあわせてどうぞ。

3. 高配当株の最大のライバルは、他の株ではなく「国債」になる

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。

高配当株を検討するとき、多くの人は「A社とB社、どちらの利回りが高いか」と比べます。しかし金利のある世界では、比較相手がもう一人増えます。国債です。

具体的に見てみましょう。

配当利回り4%の価値は時代で変わる:ゼロ金利時代は上乗せ3.5%、金利3%時代は上乗せ1.0%
国債利回りを差し引いた「上乗せ分」こそが、値動きのリスクを取る見返りです

ゼロ金利時代は、国債0.5%に対して高配当株4.0%。差は3.5%もありました。株価が上下する不安を引き受けてでも、この3.5%を取りにいく意味は十分にあったわけです。

ところが金利3%時代では、国債3.0%に対して高配当株4.0%。差はわずか1.0%しかありません。

この1%のために、私たちは何を引き受けているでしょうか。

  • 株価が20~30%下がるかもしれないリスク
  • 業績悪化で減配されるかもしれないリスク
  • 最悪の場合、企業そのものが傾くリスク

ここから導かれる結論はシンプルです。

配当利回り4%という数字の価値は、国債利回り0%の時代と3%の時代ではまったく違う。

「利回り4%だから高配当株だ、だから買いだ」――この判断は、ゼロ金利という前提があってはじめて成り立っていました。前提が消えたのに、判断だけを持ち越してはいけません。国債利回りが2.6%だった段階での考え方は 国債利回り2.6%時代の高配当株戦略 にまとめていますが、3%になったことで、この「差の小ささ」はいよいよ無視できない水準になりました。

4. 「配当利回りが高いだけの株」が危険になる理由 ⚠️

もうひとつ、初心者の方がつまずきやすい落とし穴があります。

配当利回りは、株価が下がるだけでも勝手に上がるという点です。

配当利回りの計算式は「1株あたり配当 ÷ 株価」。分子(配当)が同じでも、分母(株価)が小さくなれば、利回りの数字は大きくなります。

同じ会社、同じ配当80円で──

株価 2,000円のとき 利回り 4.0%
業績悪化で株価 1,200円に 利回り 6.7%

利回りは上がった。でも、会社が良くなったわけではありません。

スクリーニングで「利回り6.7%」と表示されると、つい「お買い得だ」と感じてしまいます。けれど実際には、市場が次のように判断した結果として株価が下がっていることが少なくありません。

  • この利益水準では、今の配当は続かないのではないか
  • 来期あたり、減配してくるのではないか
  • そもそも事業が縮んでいるのではないか

市場参加者は、私たちが見ている画面と同じ数字を見ています。それでも株価が上がらないなら、そこには理由があると考えるのが自然です。

高利回り=お買い得、ではありません。
むしろ「なぜこんなに高いのか」を説明できない高利回りは、避けたほうが無難です。

特に金利3%の世界では、この見極めの重要性が跳ね上がります。減配されて配当が半分になれば、利回り6.7%だったはずの株は3.3%。国債より低くなってしまうからです。決算のたびに何を確認すべきかは 高配当株は”増配で買い・減配で売り”では勝てない──決算シーズンに本当に見るべき5つの指標 で詳しく扱っています。

5. これから見るべきなのは「配当利回り+成長」

では、どう選べばいいのか。2つの会社を比べてみましょう。

項目 A社 B社
配当利回り(現在) 5.0% 3.5%
利益成長 0%(横ばい) 年5%
増配 なし 年5%ペース
累進配当 なし あり
DOE なし 導入済み
自社株買い なし 継続実施

今日の時点だけを見れば、A社の勝ちです。100万円を投じれば年5万円と年3.5万円。差は歴然に見えます。

ところが、時間を進めると景色が変わります。

利回り5%据え置きのA社と、利回り3.5%で年5%増配するB社の年間配当額の推移。9年目に逆転する
説明のための試算です。株価変動・税金・減配は考慮していません

B社の年間配当は、9年目にA社を追い抜きます。15年後には年7.3万円。最初に払った100万円に対して7.3%を受け取っている計算です。

この「買ったときの値段に対する配当利回り」を、Yield on Cost(イールド・オン・コスト、取得価格利回り)と呼びます。増配が続く会社を持っていると、自分だけの利回りが年々育っていくのです🌱

受け取った配当の累計で見ても、15年目にはB社がA社を上回ります。しかもB社は利益が伸びているぶん、株価そのものも上がっている可能性が高い。A社にはその期待が乏しく、むしろ減配リスクを抱え続けます。

高配当株投資は、「利回り投資」から「配当成長投資」へ変わる。

いま何%もらえるかより、10年後にいくらもらえるか。50代・60代の方こそ、この視点が効いてきます。60歳で買った株の配当が、75歳のときに1.5倍になっている――それが、インフレに負けない「自分年金」の姿です。

6. 高配当株を見る「順番」を変える 🔄

やり方を変えるといっても、難しいことをする必要はありません。チェックする順番を入れ替えるだけで、選ばれる銘柄はかなり変わります。

これまでの順番

  1. 配当利回り
  2. 業績
  3. 財務

利回りの高い順に並べて、上から検討する方法です。

これからの順番

  1. 利益が成長しているか
  2. 配当が成長しているか
  3. 累進配当・DOEなどの方針があるか
  4. 自社株買いをしているか
  5. 財務が健全か
  6. 最後に、現在の配当利回り

配当利回りは「入口」ではなく、最後に確認する数字になる。

①~⑤をすべて満たした会社が10社見つかったとき、その中でいちばん利回りの高い会社を選ぶ。これが金利3%時代の順番です。逆に①~⑤が空欄のまま利回りだけ7%という銘柄は、候補にすら入れない。それくらい割り切ってよいと考えています。

7. 累進配当とDOEが重要になる理由

ここで、①~④に出てきた言葉を整理しておきます。どちらも決算資料でよく見かけるようになった用語です。

用語 やさしい説明 投資家にとっての意味
累進配当 原則として減配せず、配当を維持するか増やしていくという会社の方針 「減らさない」と会社が宣言している。配当の下限が見えやすい
DOE
(株主資本配当率)
利益ではなく、会社が積み上げてきた純資産に対して一定割合を配当する考え方 赤字の年でも配当が急減しにくい。配当のブレが小さくなる
配当性向 その年の利益のうち、何%を配当に回したか 高すぎる(80~100%)と、利益が減った瞬間に減配しやすい

従来よく使われてきた「配当性向30%」という基準は、利益が減れば配当も減るという仕組みです。これに対して累進配当やDOEは、利益の上下に配当を振り回させないための工夫だといえます。

そしてインフレ時代には、この違いが効いてきます。

物価が上がる局面では、企業の売上や利益も名目上は増えやすくなります。ただ同時に、人件費・原材料費・借入金利もしっかり上がります。値上げが通らない会社、コストを転嫁できない会社は、売上が伸びても利益が残りません。

そんな環境で毎年きちんと配当を増やせる会社は、それだけで価格決定力があり、コスト上昇を吸収できる強い会社である可能性が高い。増配の実績は、単なる株主還元の記録ではなく、企業の競争力を映す鏡でもあるわけです。

累進配当を掲げる企業をまとめて持つ方法としては指数連動のファンドもあり、日経高配当株50・累進高配当・日本版SCHDを徹底比較 で違いを整理しています。個別株の選定が負担に感じる方は、こちらから入るのも現実的です。

8. 自社株買いも「実質的な株主還元」 💰

株主還元は配当だけではありません。自社株買いも忘れずに見てください。

会社が自社の株を買い戻して消却すると、発行済株式数が減ります。すると、同じ利益でも1株あたり利益(EPS)が増えます。ケーキの大きさが同じでも、切り分ける人数が減れば、一人分は大きくなるのと同じ理屈です🍰

EPSが増えれば、将来の増配余力も増えます。つまり自社株買いは、時間差でやってくる増配のようなものです。

C社 D社
配当利回り 5.0% 3.5%
自社株買い(時価総額比) なし 約2%
総還元利回り 5.0% 約5.5%
翌年以降のEPS 変わらず 株数減で押し上げ

数字だけを並べると、利回り5%のC社が魅力的に見えます。しかし還元の総量ではD社が上回り、さらに来期以降のEPS押し上げ効果まで付いてきます。

この「配当+自社株買い」で株主にどれだけ返したかを示す指標が総還元性向です。利益のうち何%を配当と自社株買いに使ったか、という割合だと考えてください。決算説明資料に「総還元性向50%を目安に」といった記載があれば、還元に前向きな会社だと判断する材料になります。

9. 金利上昇局面で追い風になりやすい業種

金利が上がると得をする業種、損をする業種があります。ただし「この業種なら買い」という単純な話ではない点に注意してください。

業種 追い風になりうる理由 それでも確認したいこと
銀行 貸出金利が上がり、利ざやが広がりやすい 預貸金利ざやの実際の推移/保有債券の含み損/貸倒れの増加
保険 運用利回りの改善、責任準備金の負担軽減 保有資産の中身/新契約の動向
商社 資源価格・インフレに強く、還元姿勢も積極的な企業が多い 資源価格と為替の前提/還元方針の継続性
通信 安定したキャッシュフローで配当の土台が固い 料金競争/設備投資(5G・データセンター)の負担
建設・内需 インフレ下で工事単価を転嫁しやすい 受注残の質/人手不足によるコスト増

とりわけ銀行株は「金利上昇=銀行株買い」と語られがちですが、金利が上がれば銀行が持っている既発債券の価格は下がり、含み損が膨らみます。景気が冷えれば貸し倒れも増えます。プラスとマイナスが同時に来るのが実態です。個別の決算資料で、その会社がどちらに傾いているかを確かめる必要があります。

10. 逆に、逆風になりやすい企業 🚩

一方で、金利上昇が重くのしかかるタイプの企業もあります。

  • 借入金が多い企業――金利が上がった分だけ、利払いが直接利益を削ります
  • 利益率が低い企業――利払い増を吸収する余地がありません
  • ROE(自己資本利益率)が低い企業――投資家の要求リターンが上がる中、見劣りしやすくなります
  • 配当性向が極端に高い企業――利益の100%近くを配当に回していると、少しの減益で減配に直結します
  • フリーキャッシュフローが弱い企業――配当を借入や資産売却でまかなっている状態は長続きしません
  • 減配の履歴が多い企業――過去に減配した会社は、次も同じ判断をする可能性があります
  • 高PERの成長株――将来利益の現在価値が金利上昇で目減りし、株価の重しになります
  • 不動産・REITの一部――借入コスト上昇と、利回り面での国債との競合が同時に効いてきます

特に気をつけたいのが「配当性向が100%近い高配当株」です。利益をすべて配当に回している状態は、一見すると株主思いに見えますが、実際には減配までの余白がないということでもあります。利回りの高さは、その危うさの裏返しかもしれません。

11. 債券が、ふたたび投資対象になった

金利3%時代のもうひとつの意味は、債券が選択肢として復活したということです。

1,000万円を年3%で運用できれば、税引前で年30万円。ゼロ金利の頃は考えられなかった水準です。

高配当株 日本国債
期待できる利回り 3~4%台+値上がり益 約3%(10年債)
値上がり益 期待できる 満期保有なら基本的になし
価格変動 大きい(20~30%の下落もありうる) 比較的小さい
収入が減るリスク 減配・無配の可能性 国が発行する限り、利子は約束される
インフレへの強さ 増配で対応できる余地あり 固定金利だと目減りしやすい

債券の弱点は、インフレに弱いことです。年3%の固定金利で15年持っていても、物価が毎年2.5%上がるなら、実質的な増加はごくわずかになります。だからこそ、債券だけ・株式だけという極端な形にはしないことが大切です。

とはいえ、退職が近い世代・退職直後の世代にとって、値動きの小さい資産を一定量持てるようになった意味は大きいと思います。「株価が下がったから生活費を取り崩せない」という事態を避けるクッションになるからです。

なお、個人が買いやすい個人向け国債(変動10年)は、2026年9月15日発行分の適用利率が年1.87%(税引前)。10年債の3%には届きませんが、半年ごとに金利が見直されるため、これからさらに金利が上がったときについていけるという利点があります。

12. ただし、長期債を一度に買う必要はありません

ここで一つ、注意点を。

金利が3%になったからといって、明日そこで止まるとは限りません。3.3%、3.5%と上がっていく可能性も十分にあります。

債券には「金利が上がると価格が下がる」という性質があります。3%で買った長期債は、金利が3.5%になれば、途中で売るときに値下がりしています(満期まで持てば額面は戻ります)。

ですから、まとまった資金を一度に長期債へ投じるのではなく、時期と満期を分けるのが現実的です。

債券ラダーという考え方 🪜

「ラダー」は、はしごのこと。満期が1年後・3年後・5年後・7年後・10年後……と、はしごの段のように少しずつずれた債券を組み合わせて持つ方法です。

毎年どこかの債券が満期を迎えるので、そのお金をそのときの金利で再投資できます。金利が上がれば高い利率で乗り換えられ、下がっても長い債券が支えてくれる。「どの時点で買うのが正解か」を当てにいかなくて済むのが最大の利点です。

数回に分けて買う。満期をずらす。この2つだけで、金利予想を外したときのダメージはかなり和らぎます。

13. インフレ時代のポートフォリオはどうなるか

デフレ時代の資産構成は、極端に言えば「現金+少しの株」で済んでいました。現金が実質的に目減りしなかったからです。

インフレと金利のある時代では、もう少し役割分担が必要になります。

資産 配分の一例 期待する役割
日本株(高配当・配当成長) 30% 配当収入と、その成長
外国株 25% 成長の取り込みと通貨分散
日本債券 20% 値動きを抑える/確定した利子
外国債券 10% 金利差と通貨の分散
金(ゴールド) 5% 有事とインフレへの保険
現金 10% 生活防衛と、下落時の買付余力

ただし、これは万人に当てはまる正解ではありません。年齢、収入、退職までの年数、いつからお金を使い始めるか、そして値下がりにどこまで耐えられるか。それによって適切な形はまったく変わります。

50代でまだ収入があり、10年以上使わない資金なら株式の比率を高めてよいでしょうし、65歳で来年から取り崩すのなら、債券と現金を厚くするほうが安心です。シニア世代が新NISAで始める投資戦略 や、特定口座からNISAへ移す銘柄・残す銘柄の判断表 も、配分を考えるときの材料にしてください。

なお、配当は新NISAの成長投資枠で受け取れば非課税になります。約20%の税金がかからない分、配当成長の効果はより大きく効いてきます。配当を増やしてくれる会社ほど、NISAで持つ価値が高いという関係も覚えておいてください。

14. 60代以降、「配当だけで暮らす」計画の落とし穴

最後に、この記事でいちばんお伝えしたいことを書きます。

「年間200万円の配当があれば、年金と合わせて暮らしていける」――こうした計算をされている方は多いと思います。実際、それは十分に現実的な設計です。

ただし、ひとつだけ見落とされがちな前提があります。生活費のほうも、毎年上がっていくということです。

物価が毎年2.5%上がる場合、いまの200万円分の生活を続けるには──

5年後 約226万円
10年後 約256万円
20年後 約328万円

配当が200万円のまま増えなければ、10年後には実質2割以上の減収と同じことになります。

65歳で退職して、95歳まで生きる。30年です。その間ずっと同じ金額の配当では、生活水準は静かに下がり続けます。減配されていなくても、実質的には目減りしているのです。

だから必要なのは、金額の大きな配当ではありません。配当額そのものが育っていくポートフォリオです。年3~5%の増配が続けば、物価上昇に追いつき、追い越していけます。これが、インフレ時代の「自分年金」に求められる条件です。

公的年金の受け取り方とあわせて設計したい方は、2026年~2027年の在職老齢年金改正で何が変わる? もご覧ください。

まとめ:高配当株をやめる必要はありません

ここまで金利上昇のリスク面を多く書いてきましたが、結論は「高配当株から降りるべき」ではありません。

むしろ逆です。金利のある時代になったからこそ、高配当株の「選別」が意味を持つようになったのだと考えています。

ゼロ金利の時代は、正直なところ、利回りが高ければ何でもそれなりに報われました。比較対象が無かったからです。しかし国債が3%を出すようになった今、市場は高配当株に対してこう問いかけてきます。「国債より上を狙う理由を、説明してください」と。

その問いに答えられる会社の条件は、はっきりしています。

これから生き残る高配当株の条件

  • 利益が伸びている
  • 配当が伸びている
  • 累進配当を掲げている
  • DOEなど、配当のブレを抑える方針がある
  • 自社株買いを継続している
  • キャッシュフローが強い
  • 財務が健全で、借入に依存していない

これらを備えた会社は、金利が3%になろうと3.5%になろうと、配当を増やしながら株主に報い続けられます。逆に、利回りの高さだけが取り柄の会社は、国債という強力なライバルの前で存在意義を失っていきます。

デフレ時代の投資判断を、そのままインフレ時代へ持ち込んではいけない。長期金利3%という数字は、そのことを私たちに教えてくれています。

「配当利回り5%の会社」を探すより、「10年後にも配当を増やしている会社」を探すこと。
それが、金利3%時代の高配当株投資です。

銘柄選びの具体的な進め方は 高配当株ETF・投資信託5本すべてに入る”横綱”4銘柄、インフレ環境の全体像は インフレは続く?日銀利上げ・原油高に備える資産防衛戦略 でも扱っています。あわせてどうぞ📚


【本記事の数値について】新発10年物国債利回りは2026年9月1日の東京債券市場の値、日銀の政策金利は2026年6月の金融政策決定会合以降の水準、消費者物価指数は総務省が2026年8月21日に公表した2026年7月分、物価見通しは日本銀行「経済・物価情勢の展望」(2026年7月31日公表)、個人向け国債の利率は財務省公表の2026年9月15日発行分、定期預金金利は三井住友銀行の2026年9月1日現在の店頭表示金利によります。記事中のA社・B社などの試算は、説明のための仮定であり、実在の企業を指すものではありません。

【ご注意】本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の商品・銘柄の売買を推奨するものではありません。金利・株価・配当は今後変動する可能性があり、将来の成果を保証するものではありません。投資に関する最終的な判断は、ご自身の責任において行ってください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました