2026年6月30日、政府から「骨太の方針2026」の原案が発表されました。
結論からお伝えします。今回の骨太の方針は、これまでの「財政を引きしめる路線」から、「政府が積極的にお金を使って経済を強くする路線」への大きな転換を打ち出した文書です。
2027年度は「責任ある積極財政元年」と位置づけられました。株式市場、とくに政策の恩恵を受けるテーマ株には追い風です。いっぽうで、国債の増発により長期金利には上昇圧力がかかります。
この記事では、38ページの原案を読み込み、個人投資家として「2027年度をどう構えるか」「どのテーマ・銘柄に注目するか」を、わかりやすく解説します。
そもそも「骨太の方針」とは?
骨太の方針とは、政府が毎年6月ごろに決める「経済財政運営と改革の基本方針」の通称です。
翌年度の予算編成の土台になるため、「来年、国のお金がどこに流れるか」を先読みできる資料です。国のお金が流れる分野は、企業の受注が増え、株価のテーマになりやすい。だからこそ、個人投資家が読む価値があるのです。
投資家がおさえるべき5つのポイント
原案の中から、投資に関係の深いポイントを5つに絞りました。
- ① 2027年度(令和9年度)を「責任ある積極財政元年」と明記。予算に上限(シーリング)を設けない『「強く豊かな日本」投資枠』を新設します。
- ② 17の戦略分野・62の製品や技術に、2040年度までに累計370兆円超の官民投資を想定。AI・半導体、防衛、造船、原子力、コンテンツなどが名指しされています。
- ③ 財政の目標が変わりました。「単年度の黒字化」を機械的に追わず、「債務残高対GDP比の安定的な低下」を中心にすえます。国債を出しやすくなるぶん、長期金利には上昇圧力です。
- ④ 賃上げを社会の当たり前に。物価を年1%程度上回る賃金上昇を定着させ、最低賃金は全国平均1,500円を目指します。インフレが続く前提の経済運営です。
- ⑤ 日銀には「2%の物価安定目標の持続的な実現」を期待と明記。デフレに戻さないことが大前提なので、ゆるやかな利上げが続くシナリオと整合的です。
ひとことでまとめると、「名目成長の拡大 × 財政拡張 × ゆるやかな金利上昇」というインフレ型の政策パッケージです。
2027年度の基本投資方針|資産クラス別の構え方
| 資産クラス | スタンス | 理由 |
|---|---|---|
| 日本株(政策テーマ株) | 強気 | 370兆円の投資枠と複数年度予算で、企業の受注が読みやすくなる |
| 日本株(銀行・保険) | 強気 | 金利上昇と「資産運用立国」の拡充が追い風 |
| 長期国債(既発債) | 慎重 | 国債増発と財政目標の後退で、長期金利上昇(債券価格は下落)のリスク |
| 個人向け国債(変動10年) | 活用可 | 政府自身が「個人向け国債の魅力向上」を明記。金利上昇についていける商品 |
| 現金・短期資産 | 一定量を確保 | インフレで目減りはするが、下落時の買い増し余力として大切 |
長期金利が上がる局面では、すでに発行された固定金利の債券は価格が下がります。債券を持つなら、金利上昇に追随できる「個人向け国債(変動10年)」や短めの債券が中心になります。
株式については、今回の計画は2027年度から2040年度までの14年計画です。短期の売買で当てにいくよりも、新NISAの成長投資枠で、政策テーマ株を数年かけて分散して買っていくスタイルが、この方針とかみ合います。
注目7テーマと関連銘柄
骨太の方針に名指しされた分野の中から、投資テーマとして厚みのある7つを選びました。銘柄はテーマの代表例であり、購入をすすめるものではありません。株価・配当利回り・業績は必ずご自身で最新の数値をご確認ください。
① AI・半導体・データセンター
17分野の筆頭です。「フィジカルAI(現実世界で働くAIロボット)」を軸に、全産業でAI活用を加速すると明記されました。政府の機密クラウドの調達方針も2026年中に決まります。
- 東京エレクトロン(8035)/アドバンテスト(6857)/ディスコ(6146)|半導体の製造・検査装置の中核
- さくらインターネット(3778)|国産クラウド。政府調達の受け皿候補
- ソフトバンクグループ(9984)|AIインフラ投資の総合体
② 防衛・造船・宇宙
「5年以内に防衛力を変革」と踏み込みました。装備品の輸出は「官が正面に立つ」とまで書かれています。造船ドックやロケット射場の整備に国費を入れる方針も明記されました。
- 三菱重工業(7011)|防衛・原子力・宇宙。3つのテーマが重なる本命格
- 川崎重工業(7012)/IHI(7013)|防衛・航空エンジン
- 名村造船所(7014)/三井E&S(7003)|造船・港湾荷役機械
③ 電力・GX・原子力
「原子炉の再稼働加速や次世代革新炉の開発・設置」と明記。次世代型太陽電池(ペロブスカイト)や水素も戦略技術に列挙されています。
- 関西電力(9503)/九州電力(9508)|原発比率が高く、再稼働の恩恵が大きい
- 日立製作所(6501)|送電網・原子力・AI活用の複合受益
- 積水化学工業(4204)|ペロブスカイト太陽電池の国産本命
④ 国土強靱化・防災
「令和の国土強靱化対策を断行」とし、防災庁の設置、副首都の整備まで打ち出しました。複数年度の安定した公共発注は、建設会社の収益を読みやすくします。
- 鹿島建設(1812)/大成建設(1801)|大型インフラ・都市再開発
- 応用地質(9755)|地盤調査・防災コンサルの専業
⑤ 金融(金利上昇 × 資産運用立国)
財政拡張は長期金利の上昇圧力となり、銀行の利ざや(貸出金利と預金金利の差)改善につながります。「成長投資を促進するための金融戦略」の策定や、家計の資産形成の後押しも明記されました。
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)/三井住友フィナンシャルグループ(8316)|利ざや改善の王道
- 東京海上ホールディングス(8766)|金利上昇と防災テーマの両取り
- 日本取引所グループ(8697)|市場活性化がそのまま収益になる立場
⑥ 省力化・自動化(人手不足対応)
最低賃金1,500円と賃上げの定着は、企業にとって人件費の増加です。人手を機械やロボットに置きかえる「省力化投資」への補助拡充が明記されており、自動化関連には構造的な追い風です。
- ダイフク(6383)|物流自動化の世界大手。次世代型倉庫・港湾物流も戦略技術に明記
- ファナック(6954)/安川電機(6506)|AIロボットの中核
⑦ コンテンツ・創薬
ゲーム・アニメ・マンガ・音楽が17戦略分野に正式採用されました。創薬では「革新的な新薬のイノベーション評価」を薬価制度で検討するなど、製薬業界に有利な記載があります。
- ソニーグループ(6758)/任天堂(7974)|コンテンツ立国の中核
- 第一三共(4568)/中外製薬(4519)|革新的新薬の評価改善の受益候補
必ず知っておきたいリスク
良い話ばかりではありません。今回の方針には、投資家として警戒すべき点もはっきり存在します。
- 財政への信認リスクが最大の急所。上限のない投資枠と国債増発を市場が「規律の欠如」と受け取れば、長期金利の急騰や円安の加速を招きます。原案自身が「市場の信認確保」を何度も強調しているのは、政府もこれを警戒している証拠です。
- 実行リスク。370兆円はあくまで「想定」です。2026年末からの令和9年度予算編成で中身が固まるまで、期待が先行して剥がれる場面がありえます。
- 原案段階であること。本文書は原案で、税制などに未確定(ペンディング)の箇所が残っています。正式決定版で表現が変わる可能性があります。
- 外部リスク。原案自身が中東情勢と原油の安定調達を当面の大きなリスクと認めています。
- 不利になる業界もある。2027年度の薬価改定、市販薬に似た薬の保険適用見直しなど、同じ文書の中にマイナス材料も含まれています。
政策テーマ株は、発表直後に期待で買われ、その後の予算査定で調整しやすい性質があります。一括投資ではなく、時間を分けて少しずつ買う「時間分散」を心がけてください。
まとめ|「政策の実行を確認しながら、長く付き合う」
- 2027年度は「責任ある積極財政元年」。国のお金が17の戦略分野に流れ始める
- 株式(政策テーマ株・金融株)には追い風、長期の固定金利債券には逆風
- 新NISAを使い、複数テーマに分散しながら数年がかりで買っていくのが基本形
- 最大のリスクは長期金利の急騰。金利のニュースは定期的にチェックを
テーマ株に資金を寄せすぎず、守りの資産と組み合わせることも忘れないでください。攻めと守りの配分づくりには、コア・サテライト戦略の考え方が役立ちます。
あわせて読みたい関連記事
- 円安・長期金利2.9%時代、日本国債は買いか?短期・中期・長期・物価連動国債を初心者向けに徹底解説
- 【2026年】高配当株ETF・投資信託5本すべてに入る“横綱”4銘柄と、どこにも入らない割安高配当株5選
- 【2026年最新】日銀利上げ1.0%時代へ!円安・金利上昇・景気減速に備える個人投資家の最適解
- イラン戦争終結後もインフレは続く?日銀利上げ・原油高・夏枯れ相場に備える資産防衛戦略
※この記事は2026年7月時点の「骨太の方針2026(原案)」および一般に入手可能な情報に基づく解説です。特定の銘柄や投資行動を推奨するものではありません。記載した銘柄の株価・配当・業績は変動しますので、必ず最新の情報をご確認のうえ、投資判断はご自身のリスク許容度に応じてご検討ください。

コメント