📌 この記事のポイント
- 2026年10月に、「月額8.8万円以上」という賃金の条件が撤廃される予定です(いわゆる106万円の壁)
- ただし「週20時間以上」と「会社の規模(51人以上)」の条件は残ります
- 会社の規模の条件は2027年10月から段階的に縮小し、2035年10月になくなります
- 130万円の壁は別の制度で、106万円の壁がなくなっても残ります
- 新しい保険料調整制度は、すべてのパートが使えるわけではありません
「106万円の壁」がなくなっても、壁が全部消えるわけではない 🤔
「年収106万円を超えないように、勤務時間を調整している」
配偶者の扶養に入ってパートで働く方から、よく聞く話です。
この「106万円の壁」の原因となっていた月額8.8万円以上という賃金の条件が、2026年10月に撤廃される予定です。
ここで気をつけたいのが、「106万円の壁がなくなる=社会保険の壁が全部なくなる」ではないということです。
パートの社会保険には、今後も次の4つが関係します。
- ⏰ 週20時間(働く時間の条件)
- 🏢 会社の規模(従業員数の条件)
- 💴 130万円(扶養から外れるかどうかの目安)
- 🧾 保険料調整制度(新しくできる負担軽減のしくみ)
この記事では、これらを1つずつ整理します。制度の説明は厚生労働省・日本年金機構の資料にもとづいて書き、筆者の考えはそれと分かるように分けて書きます。
📋 そもそも「106万円の壁」とは
パートやアルバイトで働く人でも、条件を満たすと勤め先の社会保険(厚生年金と健康保険)に加入します。これを「短時間労働者の社会保険加入」と呼びます。
2026年9月時点の条件は、次のとおりです。
| 条件 | 内容(2026年9月時点) |
|---|---|
| ① 働く時間 | 週の所定労働時間(契約で決まった時間)が20時間以上 |
| ② 賃金 | 所定内賃金が月額8.8万円以上(年収換算で約106万円) |
| ③ 会社の規模 | 従業員数(厚生年金の加入者数)が51人以上 |
| ④ 学生かどうか | 学生ではない(定時制・通信制などは対象になる場合あり) |
| ⑤ 雇用の見込み | 2か月を超えて働く見込みがある |
出典:厚生労働省「社会保険加入の要件|社会保険適用拡大特設サイト」
このうち②の「月額8.8万円」を年収に直すと約106万円。これが「106万円の壁」と呼ばれてきたものです。
📅 2026年10月に何が変わる?
変わるのは②の賃金の条件だけです。厚生労働省は、2025年の年金制度改正法にもとづき、2026年10月に賃金要件を撤廃する予定としています。

撤廃の理由は、最低賃金の上昇です。
2025年度の地域別最低賃金は、すべての都道府県で時給1,016円を超えました。時給1,016円で週20時間働くと、月額は8.8万円を上回ります。
つまり、週20時間以上働けば、ほぼ自動的に賃金の条件を満たす状態になっています。賃金の条件は、実質的に意味が薄れていたわけです。
くわしくは厚生労働省の「短時間労働者の社会保険の加入拡大のポイント」(PDF)にまとめられています。
⏰ これから大事になるのは「週20時間」
賃金の条件がなくなると、判断の中心は「週20時間以上かどうか」になります。
ここで押さえておきたいのが、所定労働時間と実際に働いた時間の違いです。
- 📄 所定労働時間:雇用契約書や就業規則で決まっている時間。加入の判断は原則こちら
- ⌛ 実際に働いた時間:残業を含めた時間。たまたま残業した分は、原則として含まれません
ただし、契約上は週20時間未満でも、実際の労働時間が2か月続けて週20時間以上になり、その後も続く見込みがある場合は、3か月目から加入となります(日本年金機構「年金Q&A(短時間労働者)」)。
「契約は週18時間なのに、毎週22時間働いている」という方は、実は加入対象になっている可能性があります。
🏢 会社の規模の条件は、すぐにはなくならない
2026年10月以降も、会社の規模の条件(51人以上)は残ります。「週20時間なら全員加入」になるのは、まだ先です。
この条件は、次のように10年かけて段階的に縮小・撤廃されます。

※従業員数は、厚生年金の加入者数(フルタイムの人と、週の労働時間がフルタイムの4分の3以上の人の合計)で数えます。条件を満たす前でも、労使が合意すれば任意で加入できます。
全体像は厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」で確認できます。
⚖️ 106万円の壁と130万円の壁は別物
ここがいちばん誤解されやすいところです。106万円の壁と130万円の壁は、まったく別の制度です。
| 比べるところ | 106万円の壁 | 130万円の壁 |
|---|---|---|
| 何の話? | 勤め先の社会保険に自分が加入するかどうか | 配偶者の扶養から外れるかどうか |
| 関係する人 | 条件を満たす会社で週20時間以上働く人 | 扶養に入っているすべての人 |
| 外れた後 | 厚生年金・健康保険に加入(保険料は会社と折半) | 会社の保険に入れなければ、国民年金・国民健康保険に自分で加入 |
| 2026年10月以降 | 賃金の条件は撤廃予定(週20時間と会社の規模で判断) | 変わらず残る |
つまり、社会保険の加入条件にあてはまらない人でも、年収が130万円以上になると、原則として配偶者の扶養から外れます。
ちなみに130万円の判定は、2026年4月から少し変わりました。労働条件通知書などの契約内容から見込まれる年収が130万円未満なら、扶養と認められる取り扱いが始まっています(給与収入だけであることなどが条件)。くわしくは日本年金機構のお知らせをご覧ください。
また、人手不足などで一時的に130万円を超えた場合も、会社の証明があれば原則として連続2回まで扶養にとどまれます(厚生労働省「年収の壁への対応」)。
💡 60歳以上の方は「180万円」
健康保険の扶養の基準は、60歳以上の方(または障害のある方)は年収180万円未満です。60代でパートをしている方は、130万円ではなく180万円が目安になります。
自分がどれにあてはまるかは、次の図でざっくり確認できます。

🧮 ケーススタディ:3人のパートさんで考える
3つの例で考えてみます。いずれも50代(40〜64歳)で、配偶者の扶養に入っている方とします。
| ケース | 働き方 | 年収の目安 | 社会保険は? |
|---|---|---|---|
| Aさん | 従業員100人の会社 時給1,100円×週20時間 |
約114万円 | 加入(今すでに対象) |
| Bさん | 従業員100人の会社 時給1,200円×週18時間 |
約112万円 | 加入しない(週20時間未満)。130万円未満なので扶養のまま |
| Cさん | 従業員40人の会社 時給1,100円×週22時間 |
約126万円 | 2027年9月までは加入しない(扶養のまま)。2027年10月から加入対象 |
※年収は「時給×週の時間×52週」で計算した目安です。
Aさんは、月収が約9.5万円で8.8万円を超えているため、2026年10月を待たず、すでに加入対象です。本人の保険料は、協会けんぽ東京支部の2026年度の保険料額表で見ると月1万4,700円程度(厚生年金+健康保険+介護保険など)になります。
Bさんは年収106万円を超えていますが、週20時間未満なので加入しません。「106万円を超えたら加入」ではないことが分かります。ただし、実際の労働時間が週20時間以上の状態が続けば、加入になる可能性があります。
Cさんは、会社の規模の条件で今は対象外です。2027年10月に「36人以上」へ広がると加入対象になります。このとき会社が保険料調整制度を使えば、最初の3年間は負担が軽くなります(後で説明します)。
※保険料は、加入する健康保険(協会けんぽの都道府県支部・健康保険組合)や年齢によって変わります。
⚖️ 社会保険に入るメリット・デメリット
👍 メリット
- 厚生年金が上乗せされ、将来の年金が増える(一生もらえる)
- 病気やけがで休んだとき、傷病手当金(給料の約3分の2)が出る
- 出産手当金、障害厚生年金・遺族厚生年金など、保障が手厚くなる
👎 デメリット
- 保険料の分だけ、当面の手取りが減る
- 配偶者の会社の家族手当がなくなる場合がある
- 手取りを戻すには、働く時間を増やす必要がある
年金がどれくらい増えるか、Aさんで計算してみます。厚生年金の上乗せ分は、おおよそ「標準報酬月額(月給の区分)×5.481÷1,000×加入月数」で計算します。
Aさん(標準報酬月額9.8万円)が1年間加入すると、年金は年約6,400円増えます。10年加入すれば、年約6万4千円です。この増えた分は、生きている限りずっと受け取れます。
「今の保険料」と「将来の年金+もしもの保障」をセットで比べることが大切です。日本年金機構も「パート・アルバイトの皆さまへ、配偶者の扶養の範囲内でお勤めの皆さまへ」で、加入による変化を紹介しています。
📚 年金と老後資金を一緒に考えたい方へ
🧾 新しくできる「保険料調整制度」とは
社会保険に入ると手取りが減るため、働く時間を減らす「就業調整」をする人がいます。それを防ぐために、2026年10月から保険料調整制度が始まります。
しくみはシンプルです。会社が保険料の一部を多めに負担して、本人の負担を軽くする制度です。ただし、すべてのパートが使えるわけではありません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象の会社 | 主に従業員50人以下で、今後の適用拡大で新たに対象になる会社など(2026年10月以降に任意で加入を始めた会社、2027年10月以降の拡大で対象になった会社など) |
| 対象の人 | ①週の所定労働時間20時間以上 ②月収13万円未満(標準報酬月額12.6万円以下) ③学生ではない |
| 期間 | 3年間(会社が制度を使い始めてから通算) |
| 3年目 | 軽減の割合が半分になる |
| 会社の負担 | 追加で負担した分は、後で納める保険料から全額差し引かれるので、最終的には増えない |
| 年金への影響 | 保険料が軽くなっても、将来の年金額は減らない |
出典:日本年金機構「保険料調整制度とは」
⚠️ 見落としやすい3つの点
・会社が申し出て初めて使える制度です。本人が申し込むものではありません
・51人以上の会社で働く人は、原則として対象外です
・3年間は会社単位で数えます。会社が使い始めた後から加入した人は、軽減期間が3年より短くなります
📊 保険料調整制度の具体例
本来、社会保険料は本人50:会社50で負担します。制度を使うと、月収(標準報酬月額)に応じて次の割合になります。

| 標準報酬月額(月収の目安) | 1〜2年目 本人:会社 |
3年目 本人:会社 |
|---|---|---|
| 8.8万円以下(9.3万円未満) | 25:75 | 37.5:62.5 |
| 9.8万円(9.3万〜10.1万円未満) | 30:70 | 40:60 |
| 10.4万円(10.1万〜10.7万円未満) | 36:64 | 43:57 |
| 11万円(10.7万〜11.4万円未満) | 41:59 | 45.5:54.5 |
| 11.8万円(11.4万〜12.2万円未満) | 45:55 | 47.5:52.5 |
| 12.6万円(12.2万〜13万円未満) | 48:52 | 49:51 |
出典:日本年金機構「従業員50人以下の事業主の皆さまへ」リーフレット
月収が低い人ほど、軽減が大きくなるしくみです。月収13万円以上(標準報酬月額13.4万円以上)は対象外です。
先ほどのCさん(標準報酬月額10.4万円)の場合、1〜2年目の本人負担は本来の約7割(36/50)になります。協会けんぽ東京支部の料率で見ると、月1万5千円台から月1万1千円前後に下がるイメージです。
※保険料の金額そのものは、加入する健康保険(協会けんぽの都道府県支部・健康保険組合)や年齢で変わります。上の金額はあくまで目安です。
👫 50代・60代はどう考える?
✍️ ここからは制度の説明ではなく、筆者(61歳・再雇用で働く会社員)の考えです。
私は、「保険料を取られる=損」とは言い切れないと考えています。
50代の方なら、厚生年金に10年以上加入できる可能性があります。増えた年金は一生続きます。長生きするほど、受け取る総額は大きくなります。
病気やけがで働けなくなったときの傷病手当金も、年齢が上がるほどありがたみが増す保障です。
一方で、夫の定年や再雇用で世帯収入が減る時期と重なると、今の手取りが減る影響は小さくありません。
だから私は、次の4つをセットで考えるのがよいと思っています。
- 💴 今の手取り:保険料でいくら減るか
- 📈 給与の増加:時間を増やせば、手取りを取り戻せるか
- 🏦 厚生年金の増加:何年加入できそうか
- 🛡️ 保障:傷病手当金などの安心
60代の方は、状況が少し違います。60歳を過ぎると国民年金の第3号被保険者(扶養)ではなくなり、健康保険の扶養の基準も180万円になります。そのうえで、厚生年金は70歳まで加入でき、65歳以降は加入中でも毎年年金額に反映されます。
夫の再雇用や年金の受け取り方とあわせて考えると、世帯全体の答えが見えやすくなります。この点は「定年再雇用、本当に得なのは何歳?|在職老齢年金・雇用保険・社会保険で60歳・65歳・70歳の手取りを比較」や、「年金受給のタイミングと資産運用の最適化:60歳繰り上げ受給 vs 70歳繰り下げ受給」でも書いています。
✅ 2026年10月までに確認したい6項目
- 雇用契約書の「週の所定労働時間」は何時間か
- 実際の労働時間が、週20時間を超える状態が続いていないか
- 勤め先の従業員数(厚生年金の加入者数)は何人か。いつ対象になりそうか
- 勤め先が保険料調整制度を使う予定があるか
- 配偶者の会社の家族手当(配偶者手当)の条件はどうなっているか
- iDeCoに加入している場合、加入者の種別変更の手続きが必要になるか
iDeCoの制度そのものも見直しが進んでいます。「2027年iDeCo改正で何が変わる?掛金上限・70歳拠出・改悪ポイントを徹底解説」もあわせてどうぞ。
なお、所得税・住民税や配偶者控除などの税金の壁は、社会保険とは別のルールです。こちらも分けて確認しておくと安心です。
📝 まとめ――「106万円の壁」から「週20時間の壁」へ
- 📅 2026年10月に、月額8.8万円の賃金の条件が撤廃される予定
- ⏰ これからは「週20時間以上か」が判断の中心になる
- 🏢 ただし会社の規模の条件は残り、2027年10月から2035年10月にかけて段階的に縮小・撤廃
- ⚖️ 130万円の壁は別の制度で、引き続き残る(60歳以上は180万円)
- 🧾 保険料調整制度は、主に50人以下の会社で新たに加入する人向け。会社の申し出が必要
「106万円の壁」は、「週20時間の壁」に変わっていくと考えると分かりやすいでしょう。ただし、会社の規模などの条件もしばらく残ることは覚えておいてください。
制度の変わり目は不安になりがちです。でも、条件を1つずつ確かめれば、自分に合った働き方を選べます。
📚 あわせて読みたい:老後資金・年金・NISA/iDeCo
❓ よくある質問(FAQ)
Q1. 2026年10月から、週20時間働く人は全員社会保険ですか?
いいえ。会社の規模の条件(51人以上)は残ります。学生ではないこと、2か月を超えて働く見込みがあることも必要です。会社の規模の条件は、2027年10月から段階的に縮小し、2035年10月に撤廃されます。
Q2. 106万円の壁がなくなれば、130万円までは扶養のままですか?
社会保険の加入条件にあてはまる場合は、年収130万円未満でも会社の社会保険に加入し、扶養から外れます。加入条件にあてはまらない場合は、年収130万円(60歳以上は180万円)未満なら、原則として扶養のままです。
Q3. 保険料調整制度は全員使えますか?
いいえ。主に従業員50人以下の会社などで、今後の適用拡大により新たに加入する人が対象です。月収13万円未満(標準報酬月額12.6万円以下)などの条件があり、会社が申し出た場合に限り使えます。
Q4. 60歳を過ぎても厚生年金に加入するメリットはありますか?
厚生年金は70歳まで加入でき、加入した分だけ年金が増えます。65歳以降は、加入中でも毎年年金額に反映されます。傷病手当金などの保障も受けられます。
Q5. 残業で一時的に週20時間を超えたら加入ですか?
一時的な残業だけなら、原則として加入にはなりません。ただし、実際の労働時間が2か月続けて週20時間以上となり、その後も続く見込みがある場合は、3か月目から加入となります。
参考資料・出典
- 厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」
- 厚生労働省「短時間労働者の社会保険の加入拡大のポイント」(令和8年1月作成)
- 厚生労働省「社会保険適用拡大特設サイト」
- 厚生労働省「年金制度の仕組みと考え方 第9 被用者保険の適用拡大」
- 厚生労働省「年収の壁への対応」
- 日本年金機構「パート・アルバイトの皆さまへ、配偶者の扶養の範囲内でお勤めの皆さまへ」
- 日本年金機構「保険料調整制度とは」(2026年9月11日更新)
- 日本年金機構「労働契約内容による年間収入での被扶養者の認定の取り扱いについて」
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)「令和8年3月分からの保険料額表(東京支部)」
※本記事は2026年9月時点の公表情報に基づいています。制度の施行時期や詳細は今後変更される可能性があります。実際の加入条件や保険料については、勤務先、日本年金機構、健康保険組合等でご確認ください。記事中の保険料・年金額は協会けんぽ東京支部の料率などを使った概算で、実際の金額とは異なる場合があります。本記事は特定の働き方や金融商品を推奨するものではありません。

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